M1 90mm高射砲

M1/M2/M3 90mm高射砲：アメリカ軍の主力高射砲

M1/M2/M3 90mm高射砲は、第二次世界大戦から1950年代にかけてアメリカ軍が運用した高射砲であり、対戦車砲としても使用されました。ドイツ軍の88mm砲と類似した運用がなされ、アメリカ軍の防空を担いました。

歴史

第二次世界大戦前、アメリカ軍の主力高射砲はM1918 3インチ砲でした。しかし、より強力な高射砲の必要性が高まり、1938年に90mm砲と120mm砲の開発契約が締結されました。旧式の3インチ砲の改良型であるT9 3インチ砲の開発はキャンセルされ、新たに開発された90mm砲の発展型であるT2が、1940年にM1 90mm高射砲として制式化されました。

M1 90mm高射砲には改良が加えられ、M1A1 90mm砲が開発されました。M1A1は、砲架や砲尾のラマー（砲弾を砲へ押しこむ装置）が改良され、射撃速度が向上しました。アメリカ参戦時には数千門が運用可能であり、アメリカ軍の標準的な対空砲として戦争を戦い抜きました。

ドイツ軍の88mm砲と同様に、M1A1は対戦車戦闘にも使用されました。1942年、陸軍は対戦車任務を可能にする新型砲架の開発を命じ、M2 90mm高射砲が完成しました。M2は、10度の俯角をとることができ、電動補助付きラマーも装備していました。

対空任務

高射砲は通常4門が連携して運用され、M7やM9高射指揮装置、またはケリソン指揮装置に管制されました。1941年からはレーダー管制が導入され、目標の距離を正確に把握することが可能になりました。夜間においては、サーチライトがレーダーを補助し、昼間と同様の交戦を可能にしました。

1944年には、SCR-584マイクロウェーブレーダーが導入され、性能が劇的に向上しました。SCR-584は、M3砲データコンピューターとM9管制装置に方位・距離を伝達し、砲を目標に自動追尾させました。

対戦車任務

装甲戦闘車両の主砲として試作されたT7がM3 90mm砲となり、M36ジャクソンやM26パーシング重戦車に搭載されました。

M3を元にした派生型も開発されましたが、制式採用されたものはありませんでした。大戦後には、T15がより高初速でタングステン砲弾を発射可能なT54として開発が続けられ、M47やM48パットン戦車、M56スコーピオン対戦車自走砲などの主力装備となりました。

派生型

M1: 1940年制式化の高射砲。要塞砲としてM3砲架に固定して運用可能。
M1A1: 1940年に生産が開始された高射砲。M8A1バネ式ラマーが特徴。発射速度毎分20発。
M2: 完全な対地対空両用砲として再設計。給弾方式が改良され、M20ラマー兼信管自動調定装置が備えられ、射撃速度は毎分24発に向上。10度の俯角をとることが可能。砲手を保護する大型の金属防盾も装着。1943年5月13日に制式化。移動体勢から砲架の展開まで3分、完全射撃体勢まで7分で可能。1944年からは近接信管も利用可能。
M3: 対戦車砲型であり、M36やM26に搭載。90mm L/53としても知られる。

登場作品

『極地からの怪物 大カマキリの脅威』：アメリカ陸軍のM1A1・M2が登場。巨大カマキリ迎撃に使用される。

参考文献

TM 9-2300 standard artillery and fire control material. dated 1944
TM 9-370
TM 9-1370
SNL D-28

関連項目

射撃管制装置
高射砲
対空砲

外部リンク

戦闘車両におけるM3 90mm砲技術マニュアルTM 9-374(1944年アメリカ国防省)
M3装甲貫通表
* AAA unit Life:Anti-aircraft battery in training center

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