M13 (天体)

ヘルクレス座球状星団 M13

M13（メシエカタログ第13番）、別名NGC 6205は、夏の星座として親しまれるヘルクレス座に位置する、特に有名で壮大な球状星団です。その輝きから「ヘルクレス座大球状星団」とも称されます。地球からはおよそ25,100光年の距離にあり、数十万個にものぼる膨大な数の恒星が、互いの重力によって密集して球状の集まりを形成しています。

発見と歴史的な観測

M13は、1714年にイギリスの天文学者エドモンド・ハレーによって初めて天体として記録されました。ハレーは、この天体を「小さな光の斑点」として記述していますが、同時に「晴れた月夜のない夜には肉眼でも見える」とその明るさに言及しています。後に、メシエカタログの編纂者として知られるシャルル・メシエは、これを「星を含まない星雲」として、丸く明るく、特に中心部が輝いて見えること、そして当時の標準的な1フィート（約30cm）の屈折望遠鏡でも観測可能であることを記録しています。しかし、その真の姿が明らかになったのは、天体望遠鏡の性能が向上してからでした。

イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは、M13を「最も美しい星団」と絶賛し、特に中心部の輝きが著しいと記しています。彼こそが、この天体が星雲ではなく、無数の星が集まった「星団」であることを初めて確認しました。ウィリアムの息子であるジョン・ハーシェルも、数千もの星がひしめき合い、「毛が生えたような」「曲線の枝が出ている」ように見えると描写しています。さらに、アイルランドの天文学者ウィリアム・パーソンズ（ロス卿）は、高倍率で観測した際に「ふさ飾りのような腕」が周辺空間に向かって枝分かれしている様子を捉え、その複雑な構造に言及しています。

観測方法と見え方

M13は、ヘルクレス座のη（イータ）星とζ（ゼータ）星の中間、ややη星寄りに位置しており、比較的見つけやすい場所にあります。天体観測の条件が良い、光害の少ない暗い場所であれば、視力の良い人ならば肉眼でもかすかな光点として捉えられることがあります。双眼鏡を使用すると、M13は丸くぼやけた、あたかも星雲のような姿に見えます。しかし、望遠鏡を使うことで、その正体が無数の星の集まりであることが明らかになります。

口径が20cm程度の望遠鏡を用いると、星団の中心部に至るまで、個々の星々を分離して見ることができるようになります。中には、口径10cmの望遠鏡でも中心部が分離できたという報告もあります。星団の中心部には、明るい赤色巨星が多く存在しているため、注意深く観察すると、中心部がわずかに赤みを帯びて見えると述べる観測者もいます。さらに高倍率で観測すると、過去の天文学者たちが記述したような、無数の星が流れるように見え、中心部から外側へ向かって延びる「枝」のような構造が確認できます。これらの「枝」は、特に南西方向にたなびいていることが多いと言われています。

アレシボ・メッセージ

M13は、天文学的な興味だけでなく、地球外生命体探査（SETI）の歴史においても重要な役割を果たしています。1974年、プエルトリコにあるアレシボ天文台の巨大な電波望遠鏡から、M13に向けて電波によるメッセージが送信されました。これは、太陽系外の知的生命体に向けたアクティブSETIの試みとしては、最初期のものであり、アレシボ・メッセージとして広く知られています。このメッセージは、地球の生命や科学技術に関する情報を、バイナリコードで表現したものでしたが、M13からの距離を考慮すると、このメッセージが球状星団に到達するには約2万5千年かかり、仮に返信があったとしても、さらに2万5千年後に地球に届く計算になります。

M13は、その美しさと観測のしやすさから、多くの天文ファンにとって馴染み深い天体です。数十万の星が織りなす壮大な光景は、宇宙の広大さと時の流れを感じさせてくれます。

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