M59装甲兵員輸送車

M59装甲兵員輸送車

M59装甲兵員輸送車は、アメリカ合衆国で開発された装甲兵員輸送車です。M75装甲兵員輸送車の後継として開発され、1954年春にアメリカ軍で運用が開始されました。

概要

M59は、M75と比較して水陸両用能力を持つ点、そしてより低コストで生産できる点が主な利点でした。1960年までに約6,300輌が製造され、派生型としてM84自走迫撃砲があります。その後、M113装甲兵員輸送車とその派生型によって更新されました。

開発の経緯

M75の後継となる装甲兵員輸送車の開発は1951年後半に開始され、フード・マシナリー・アンド・ケミカル・コーポレーション（FMC）が担当しました。試作車両が数輌製造され、その中で最も優れた性能を示したT59が1953年5月にM59として制式化され、FMCが製造契約を獲得しました。

コスト削減のため、M59は大型で強力なエンジン1基ではなく、小型で低出力の民生用トラックエンジン2基を車体の両側面に搭載しました。この駆動システムは信頼性に欠け、装甲防御力もM75に劣る点が主な欠点でした。

構造

M59の車体は溶接された鋼製で、装甲厚は上面が0.95cm、底面が2.49cm、その他は1.59cmでした。全体的に広くて平板な側面を持ち、前面は角が落とされた形状をしています。車内は大きなコンパートメントで構成され、操縦士が左前方に、車長がその右側に位置します。操縦士席にはM19赤外線暗視ペリスコープと複数のM17ペリスコープが装備され、車長席には12.7mm重機関銃M2を搭載したM13キューポラが設けられています。車内には2,205発の弾薬が搭載可能です。

車長と操縦士の後方には、兵員10名が搭乗できるベンチが車体側面に沿って配置されています。ベンチは折りたたむことで、ジープ1台を搭載するスペースを確保できます。兵員区画の両側面にはスポンソンが設けられ、駆動機構が収納されています。

駆動機構は、2基のGMCモデル302直列6気筒ガソリンエンジンで構成され、それぞれ3,600回転で146馬力を発揮します。エンジンは油圧式の301MGトランスミッションに接続され、前進4速、後進1速に変速可能です。初期型にはMG300トランスミッションが使用されました。操舵は操縦士席のステアリングレバーによる差動操舵で行われ、装軌部分は前部の駆動輪で駆動されます。各側には5個の転輪と3個の上部転輪が設けられ、トーションバーサスペンションとショックアブソーバーが採用されています。路上での最高速度は51km/hで、M75よりも遅くなっています。

511リットルのガソリンを搭載し、航続距離は約150kmです。

M59は水陸両用能力を持ち、ハッチとドアはゴムで密閉されています。トリムベーンが装備されており、水上では最大6.9km/hの速度を発揮します。

兵員用として、車体後部には乗降用のランプが設けられ、脱出用のドアも組み込まれています。また、車体上面にもハッチが設けられています。

各型と派生型

T59: 試作型。6両生産。
T59E1: T59の5号車と6号車。キャデラック社製V型8気筒エンジン搭載。
M59: 最初の量産型。車長用ハッチに12.7mm重機関銃M2用の銃架を装備。
M59（後期量産型）: 車長用ハッチに周辺視察用のM17潜望鏡を追加。
M59E1: 銃架付ハッチに機関銃塔を搭載。M59A1として制式化。
M59A1: M13銃塔を装備した改良型。
T84: 車体後部に4.2インチ迫撃砲を搭載した自走迫撃砲型の試作車両。M84として制式化。
M59ATGM: 車体後部の兵員室上にMGM-21AおよびAGM-22対戦車ミサイルの連装発射機を搭載した対戦車型。制式化されず。
M84自走迫撃砲: 後方へ4.2インチ迫撃砲を搭載した自走迫撃砲型。M106自走迫撃砲によって更新。
LVTP-X2: M59の設計を基に開発された水陸両用車型。クライスラー製のエンジンを持つものがLVTP-6として制式化されたが、量産されず。
T93: M59の走行装置を流用した非装甲貨物輸送車型。試作のみ。

採用国

アメリカ合衆国
ブラジル
エチオピア
ギリシャ
レバノン
トルコ
南ベトナム

もう一度検索