Mova

mova：日本の携帯電話史を彩ったサービスの軌跡

NTTドコモが提供していたmovaは、800MHz帯（一部1.5GHz帯）を利用した、日本における最初のアナログ携帯電話サービスからデジタルPDC方式へと進化を遂げた携帯電話サービス、およびその対応端末の総称です。1991年4月のサービス開始から、長きにわたり日本の携帯電話市場をリードしてきたmovaは、2012年3月31日にサービスを終了し、停波しました。本稿では、movaの歴史、端末、料金プラン、そしてサービス終了に至るまでの経緯を詳細に解説します。

movaの誕生と進化

1989年、DDIセルラーグループがTACS方式による携帯電話サービスを開始したことに対抗するため、NTTは主要通信機器メーカー4社と共同で開発を進め、世界最軽量・最小を謳うmovaを1991年4月にリリースしました。その名称は「movable」に由来し、携帯性の高さを強調したものです。当初はレンタル方式でしたが、1994年4月からは売り切り制も導入されました。

1993年にはデジタルPDC方式のサービスが開始され、「デジタル・ムーバ」としてアナログmovaと区別されましたが、1999年にアナログサービスが終了すると、名称は再び「ムーバ」に戻されました。2001年には第3世代携帯電話サービスであるFOMAが開始され、mova対応端末も発売されました。しかし、FOMAの普及に伴い、movaのユーザー数は減少の一途を辿ります。

多様なmova端末

mova端末は、メーカーごとに様々な機種が発売されました。初期のアナログ端末は「ムーバX」（Xはメーカー記号）と名付けられ、デジタル化後は「デジタル・ムーバ」となりました。その後、iモード対応機種、1.5GHz帯に対応した機種、高機能・特殊仕様機種など、多様なラインナップが展開されました。メーカーとしては、当初はNTT標準ソフトを採用したメーカーのみが「ムーバ」を名乗ることが許されていましたが、2001年以降はドコモ標準ソフトを採用するすべてのメーカーがmova端末を製造できるようになりました。主なメーカーには、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、NEC、三菱電機、富士通、シャープ、ソニーなどが含まれます。

主要な機種シリーズ

50xシリーズ: movaのフラッグシップモデル。iモード、iアプリ、カメラ機能など、当時最新の機能を搭載。
20x/21xシリーズ: iモード対応機種。軽量・薄型を重視したモデルが多く、シンプルさを求めるユーザーに人気がありました。
25xシリーズ: mova初のカメラ搭載モデル。iモードは非対応。
6xxシリーズ: 特殊モデル。防水・防塵機能や高齢者向け機能などを備えた機種が含まれる。
8xxシリーズ（ドッチーモ）: movaとドコモPHSを統合した複合端末。
らくらくホンシリーズ: 高齢者向けに設計されたシンプルで使いやすい機種。

料金プラン

movaの料金プランは、時代とともに変化しました。初期は基本料金と通話料金が比較的高いプランが中心でしたが、次第に多様なプランが導入されました。特に、2005年11月からは、FOMAと共通の基本料金プランが導入され、料金体系が簡素化されました。さらに、ファミリー割引などの各種割引サービスも提供されていました。一方で、旧料金プランには、「ドニーチョ」など、時間帯や曜日を限定することで基本料金を抑えたプランも存在しました。

サービス終了

FOMAの普及とサービスエリアの拡大に伴い、movaユーザー数の減少が加速しました。ドコモは、2008年8月にmovaの新規契約受付を終了、2009年1月に2012年3月31日でのサービス終了を発表しました。サービス終了に伴い、movaで使われていた周波数帯は、テレビ放送のデジタル化に伴う電波再編などに活用されています。

技術的な工夫

movaのサービスを維持するために、ドコモは様々な技術的な工夫を凝らしました。

ハーフレート化: 通信速度を下げることで、多くのユーザーを収容可能にする技術。
他社買収: 周波数帯域の確保のため、他の通信事業者を買収した事例もある。
アナログ波の早期終了: デジタル化を促進することで、周波数帯域を効率的に利用。
1.5GHz帯デュアルバンド化: 800MHz帯が混雑した場合に、1.5GHz帯を利用することで通信品質の向上を図る技術。

movaは、日本の携帯電話サービスの歴史において重要な役割を果たしました。その功績は、後続のデジタル携帯電話サービスや、現代の高度なモバイル通信技術の基礎を築いたことにあるといえるでしょう。その歴史と技術的工夫を振り返ることで、現在の携帯電話サービスの進化を理解する上で、重要な視点を得ることができるでしょう。

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