Mac OS X Lion

Mac OS X Lion (バージョン10.7) について

Mac OS X Lionは、Appleが開発したMac OS Xの8番目のメジャーリリースです。バージョンナンバーは10.7で、Mac OS X Snow Leopardの後継として2011年7月20日に発売されました。マーケティング上では「OS X Lion」とも呼ばれました。

リリースと概要

2010年10月20日のAppleイベントで開発が発表され、一部の新機能がプレビューされました。2011年2月には新MacBook Proの発表と同時に、追加機能の説明と開発者向けのプレビュー版がリリースされました。同年6月6日のWWDC 2011で一般ユーザーへの販売が7月から開始されることが発表され、その後の決算発表で7月20日が発売日とされました。価格は29.99ドル（2600円）、サーバー版の『Mac OS X Lion Server』は49.99ドル（4300円）でした。

従来のDVD-ROMでの販売を廃止し、Mac App Storeからのダウンロード販売とUSBメモリ（6100円）での提供となりました。ダウンロード版のインストールは、基本的にMac OS X v10.6からのアップグレードとして行われます。v10.4やv10.5からのアップグレードは、まずv10.6へのアップデートが必要です。

ただし、ダウンロードしたインストールデータは光学ディスクに複製可能で、それを利用したクリーンインストールも可能です。このため、ダウンロードにはv10.6環境が必要ですが、インストール先のMacにv10.6がインストールされている必要はありません。発売初日にはダウンロード件数が100万件を突破しました。

システム要件

Mac OS X Lionをインストールするには、以下のシステム要件を満たす必要があります。

Intel Core 2 Duoまたはそれ以降のCPU（Core i3、Core i5、Core i7、Xeon）
最小2GBのメモリ
最小4GBのディスク容量（システムダウンロード用）
Mac OS X v10.6.6以降

主な新機能

Mac OS X Lionには、以下のような多くの新機能が搭載されました。

Mission Control: Exposé、Dashboard、Spacesの各機能を統合し、より効率的な操作環境を提供します。
Launchpad: iOSのようなインターフェースでアプリケーションにアクセスできるランチャー機能です。
フルスクリーンアプリケーション: Macのアプリケーションをフルスクリーン表示できます。
オーバーレイスクロールバー: iOSのようなスクロールバーが、スクロール時にのみ表示されます。
復元機能: Recovery HDを用いて、緊急時のメンテナンスや復元が可能になり、一部機種ではインターネット経由での復元も可能です。
絵文字のサポート: Unicode 6.0形式の絵文字が表示できるようになりました。
ウインドウサイズ変更の簡易化: ウインドウの四隅や上下左右のどこからでもサイズを変更できます。
高解像度 (HiDPI) モード: インターフェースを解像度に合わせて鮮明に拡大表示します。
多言語化: アラビア語、チェコ語、トルコ語、ハンガリー語など、多くの言語に対応しました。

インターフェースの変更

Mac OS X Lionでは、ユーザーインターフェースが大幅に変更されました。

Launchpad: アプリケーションをiPadのように表示する新しいランチャー。
フルスクリーンアプリケーション: アプリケーションをフルスクリーン表示し、より没入感のある作業環境を提供。
Mission Control: Expose、Dashboard、Spacesを統合し、より使いやすい操作環境を実現。
コンテキストメニュー: 新しいオプションを追加し、操作性を向上。
トラックパッドサポートの拡張: マルチタッチジェスチャーのサポートを拡大。
オーバーレイスクロールバー: iOSのスクロールバーのように、スクロール時にのみ表示される。
ログイン: ログイン画面とアニメーションを刷新。
クイックビュー: Spotlightやスタックでプレビュー機能が追加。
オートセーブとバージョン: 書類の変更を自動記録し、過去のバージョンに戻せる。
再開: 予期せぬ再起動後も、ウインドウなどを以前の状態に復元。

付属アプリケーション

Mac App Store: iPhoneやiPadのようにアプリの購入と自動アップデートが可能。
テキストエディット: 縦書きに対応し、ツールバーから文字サイズやフォントを選択可能。
Mail 5: 3カラム表示を標準とし、iPad版メールに似たインターフェース。
iCal: iPadのカレンダーに似たデザインとなり、「年」表示や新しいリマインダーメニューを追加。
AirDrop: ワイヤレスで近くのMacにファイルを送る。
移行アシスタント: Windows PCからの移行もサポート。
Safari 5.1: フルスクリーン対応やReading List機能を追加。

テクノロジー

AVFoundation: オーディオとビデオのフレームワーク。
Scene Kit: 3Dレンダリングを容易にするフレームワーク。
File Coordination: マルチスレッドのファイルアクセスを最適化。
SSDへの最適化: Trimコマンドをサポートし、SSDの機能を向上。
thunderboltの正式サポート。

セキュリティ

FileVaultの刷新: XTS-AES 128ビットデータ暗号化で秘匿性を向上。
SandboxingとPrivilege Separation: アプリケーションの機能やアクセス範囲を制限。
ASLRのフルサポート: アドレス空間配置のランダム化をシステム全体に拡張。
Gatekeeper: コード署名でアプリケーションの起動を管理・制限。

廃止された機能

QuickTime 7: QuickTime Xに一本化。
Rosetta: PowerPC用プログラムの実行環境を廃止。
Java Runtime Environment: プリインストールされなくなったが、初回起動時にインストールを促される。Java SE 7以降はオラクルから直接提供。
Front Row: OS標準の10フィートUIの提供を終了。
iSync: サードパーティーのデバイスとの同期ソフトウェアを終了。
Samba: Apple独自開発のsmbdに置き換え。
MySQL: プリインストールされなくなり、PostgreSQLが利用可能。

バージョン履歴

2011年7月20日 - リリース
2011年8月16日 - 10.7.1アップデート
2011年10月12日 - 10.7.2アップデート
2012年2月1日 - 10.7.3アップデート
2012年5月9日 - 10.7.4アップデート
2012年9月28日 - 10.7.5アップデート

Mac OS X Lionは、OS Xのインターフェースや操作性を大きく変え、その後のmacOSの進化に大きな影響を与えたバージョンです。

最終セキュリティアップデートは、2014年9月17日にリリースされたセキュリティアップデート 2014-004、2014年9月29日にリリースされたOS X bash Update 1.0でした。また、2021年6月23日から無料配信が開始されています。

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