O級駆逐艦

O級駆逐艦：戦時下のイギリス海軍を支えた駆逐艦

O級駆逐艦は、第二次世界大戦中にイギリス海軍が建造した駆逐艦の艦級です。1940年度の戦時予算に基づいて8隻が建造され、1941年から1942年にかけて順次就役しました。本級は、戦時における大量建造を考慮した設計がなされ、船団護衛や対潜作戦といった任務でその能力を発揮しました。また、一部の艦は戦後にフリゲートへと改装され、その後の海軍においても重要な役割を担いました。

開発の背景

イギリス海軍は、第一次世界大戦の経験を踏まえ、駆逐艦の設計と建造を継続的に行っていました。1920年代から1930年代にかけて、A級からI級までの駆逐艦が建造され、その過程で技術的な進歩が重ねられました。その後、トライバル級のような大型砲装駆逐艦を経て、J級、K級、L級といった艦級が建造されました。しかし、第二次世界大戦の開戦が迫るにつれて、戦時における大量建造に適した設計が求められるようになりました。

1939年には、L級の改良型であるM級が計画されましたが、コストが高いという問題がありました。そのため、J級とI級の中間的な設計を持つ駆逐艦が検討されました。しかし、既存の設計では不十分であり、新たな設計によるコスト増も懸念されたため、最終的にJ級の改良型としてN級が追加されました。

第一海軍卿は、依然として中間的な駆逐艦に関心を示しており、1940-1年度計画での建造が検討されることになりました。J級の運用成績が良好であることが判明したため、基本設計はJ級をベースとすることが決定されました。当初、設計は1940年8月までに完成する予定でしたが、国際情勢の緊迫化により前倒しされました。そして、ポーランド侵攻を受けてイギリスがドイツに宣戦布告した1939年9月3日、戦時緊急計画が発動され、中間的な駆逐艦8隻が発注されました。これがO級駆逐艦です。

設計の特徴

O級駆逐艦の基本設計は、J級駆逐艦のものをほぼ踏襲しており、単煙突・船首楼型の船型も同様です。機関もJ級と同じく、アドミラルティ式3胴型水管ボイラーとパーソンズ式オール・ギヤード・タービンによる2軸推進で、40,000馬力の出力を発揮しました。ただし、艦砲が電動駆動から手動駆動に変更されたため、消費電力が減少し、電源スペックはダウンしています。主発電機は150キロワットから80キロワットに、停泊発電機は50キロワットに低出力化されました。

装備

艦砲に関しては、初期には45口径12cm単装砲（QF 4.7インチ砲Mk.IX）4基を搭載する計画でしたが、8隻のうち4隻は機雷敷設艦としても使用できるように、45口径10.2cm単装高角砲（QF 4インチ砲Mk.V）3基に削減されました。駆逐艦としての任務に当たる場合には、48時間以内にさらに2基の45口径10.2cm単装高角砲を増備できる設計でした。また、4.7インチ砲搭載艦も、竣工後に後部魚雷発射管を撤去して45口径10.2cm単装高角砲1基を搭載しました。

射撃指揮装置は、トライバル級に準じたものが採用され、対水上用の方位盤は省かれました。285型レーダーを備えたMk.V**方位盤のみが搭載されました。射撃盤も簡素化され、対空用にはFKC、対水上用にはスループ向けと同系統のFCBが搭載されました。

近距離用の対空兵器としては、当初は39口径40mm4連装機銃（QF 2ポンド・ポンポン砲）1基と62口径12.7mm4連装機銃2基が搭載される予定でしたが、これらは大戦中に撤去され、1944年1月には70口径20mm機銃の連装・単装銃架がそれぞれ2基ずつ搭載されました。

戦歴とその後

O級駆逐艦は、8隻全てが第二次世界大戦を生き抜きましたが、その中でもバレンツ海海戦に参加した5隻のうち、オンズローが大きな損傷を受けました。この海戦後、通常のマストからラティスマストへと改修されました。

戦後、第1グループの4隻は、1隻がトルコ海軍に、3隻がパキスタン海軍に売却され、そのうち2隻は1957年から16型フリゲートに改装されました。第2グループの4隻では、「オーウェル」のみが16型フリゲートに改装されました。

O級駆逐艦は、戦時下のイギリス海軍において、その堅実な設計と多用途性によって重要な役割を果たしました。戦後のフリゲートへの改装は、その後の対潜戦においても重要な貢献をしたことを示しています。

もう一度検索