P-15 (ミサイル)

P-15 テルミート：ソ連が生んだ対艦ミサイルの全貌

P-15 テルミート（ロシア語: П-15 «Термит»）は、1950年代にソビエト連邦で開発された短距離対艦ミサイルです。その愛称は、ロシア語で「白蟻」や「テルミット」を意味します。GRAUインデックスは4K40、西側諸国では、アメリカ国防総省（DoD）識別番号としてSS-N-2、NATOコードネームとしては「スティクス」の名で知られています。

開発の背景と経緯

P-15の開発は、小型艦艇にミサイルによる対水上火力を付与するという要請に応える形で、1955年に第155設計局（OKB-155）で開始されました。その後、1957年に第2-155設計局（OKB-2-155）が独立すると、開発はそちらに引き継がれました。ロケットの専門家であるイサエフ設計官も開発に加わっています。1957年10月には最初の試射が行われ、1959年には183R型小型ミサイル艇（コマール型）、1960年には205型大型ミサイル艇（オーサ型）に搭載され、配備が開始されました。ソ連海軍は同年、正式にこのミサイルを受領しています。

構造と誘導方式

P-15は、発射時のブースターに固体燃料ロケット、巡航時のサステナーに液体燃料ロケットを使用します。ミサイル発射機は4S30と称され、発射時には15度の仰角を取ります。発射後、ミサイルはブースターによって約45度の角度で約140mまで上昇し、その後、高度400mで巡航に入ります。当初は指令誘導を受ける計画でしたが、これは実現しませんでした。巡航高度は100、150、200、250、300mから選択可能ですが、気圧高度計による調節のため、シースキミング飛行はできません。目標の予定座標から11kmの地点で、アクティブ・レーダー・ホーミング誘導装置が作動を開始し、事前に設定された6パターンの周波数のうち1つで捜索を行い、最もレーダー反射断面積が大きい目標に突入します。初期モデルでは、移動目標と固定目標の識別は不可能でした。シースキマーではないため、終末航程はダイブのみとなります。

各種改良型

1961年には、改良型のP-15U（SS-N-2B）が実用化されました。これは、翼を折りたたみ式にするとともに誘導装置に改良を加えたもので、のちには赤外線誘導にも対応しました。これらはP-20として輸出もされています。1970年には、さらに改良されたP-15M テルミートM（SS-N-2C）が登場しました。これは、高度計を電波高度計に変更することで巡航高度を25-50mに低空化するとともに、射程を80kmに延伸したものです。こちらはP-21またはP-22として輸出されました。1970年代末には、沿岸砲兵用として、P-15Mから派生した「ルベーシュ」（SS-C-3）も開発されています。

艦上に配置される射撃指揮システムとしては、当初はXバンドのMR-331 ラングアウト（NATOコードネーム：スクエア・タイ）レーダーを採用したKLON システムが採用され、その後、P-15Uにおいては、「ガルプン」（NATOコードネーム：プランク・シェイブ）を用いるコレルによって更新されました。

実戦での運用

P-15は、以下のような実戦で使用されました。

1967年10月21日：エジプトがイスラエルに対して発射。アレキサンドリア港外でエジプト海軍のミサイル艇がイスラエル海軍駆逐艦「エイラート」を撃沈（エイラート事件）。
1971年：インドがパキスタンに対して発射。
1973年10月7日：シリアがイスラエルに対して発射（ラタキア沖海戦）。
1980年-1988年：イランがイラクに対して発射。

中国製のP-15は、イラン・イラク戦争において全種類が使用されています。

運用国

P-15は、以下の国々で運用されました。

ソビエト連邦、ロシア、ウクライナ、アルジェリア、アンゴラ、ブルガリア、中国、キューバ、インド、イラク、リビア、北朝鮮、ポーランド、ルーマニア、ソマリア、シリア、ベトナム、イエメン、エジプトなど。

中国での発展

中国は1958年にソ連からP-15の供与を受け、少なくとも4種類の派生型を開発しました。中国で生産された艦船発射型は、NATOコードネームでCSS-N-1 ScrubbrushやCSS-N-2と区別されました。派生型であるHY-1とHY-2は、沿岸防衛用として運用されました。このタイプのミサイルには、SY-1、FL-1などの名前もあります。中国では、仕様が同じでも国内用と輸出用で名称が異なるという特徴があります。

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