PowerBook 5300

PowerBook 5300シリーズ：革新と問題が同居したPowerBook

PowerBook 5300シリーズは、Apple Computerによって設計され、1995年8月から販売された、PowerPCを搭載した最初の世代のPowerBookノートパソコンです。当時としては画期的な機能を数多く搭載していましたが、設計上の欠陥や製造上の問題が多発し、結果的に「史上最悪のApple製品」の一つとして悪名を残すことになりました。

主な特徴

ホットスワップ可能な拡張モジュール: MOドライブやZipドライブなど、様々なユニットを装着できる拡張モジュールに対応していました。
PCカードスロットと赤外線ポート: 標準のPCカードスロットと赤外線通信ポートを初めて搭載したPowerBookでした。
豊富な内蔵ポート: 以前の携帯型Macintoshと同様に、SCSI、シリアル、ADBポートが内蔵されていました。
内部拡張スロット: イーサネットなどのモジュールを搭載可能で、ビデオカードを装着すればデュアルディスプレイも利用できました。

スペック

PowerBook 5300シリーズは、ローエンドのグレースケールモデルから、高解像度TFT液晶を搭載したハイエンドモデルまで、4つのモデルが展開されました。

デザイン

PowerBook 5300シリーズは、1993年から1994年にかけて「M2」というコードネームで開発されました。小型化を追求した設計で、CD-ROMドライブを搭載しない代わりに、よりコンパクトで曲面を多用したデザインが採用されました。また、従来の回転式ロッカースタイルの脚の代わりにポップアウト式の脚が使用され、プラスチック製の筐体には濃いグレーの色が用いられました。

相次ぐ問題点

PowerBook 5300シリーズは、様々な問題により、期待を大きく裏切る製品となりました。

設計不良: ケースのひび割れ、ロジックボード上の電源コネクタの不良、バッテリーの過熱など、設計上の問題が多発しました。これらの問題に対応するため、Appleは複数回のリワークプログラムやリペアエクステンションプログラムを実施せざるを得ませんでした。
L2キャッシュの欠如: 搭載されたPowerPC 603eプロセッサは当時としては比較的高速でしたが、L2キャッシュが搭載されていなかったため、実際のパフォーマンスはCPUの周波数から期待されるほどではありませんでした。
CD-ROMドライブ非搭載: 筐体のサイズと形状の問題から、CD-ROMドライブを搭載することができませんでした。Appleはプロトタイプの8センチCD用CD-ROMモジュールを開発しましたが、正式にリリースされることはありませんでした。
バッテリー問題: 初期生産のPowerBook 5300のうち2台で発火事故が発生しました。原因は、ソニー製のリチウムイオン充電池が充電中に過熱したことでした。Appleは、販売された5300シリーズをリコールし、バッテリーをニッケル水素充電池に交換しました。

レガシー

PowerBook 5300シリーズは多くの問題を抱えていましたが、その革新的な機能は、後のPowerBookシリーズに引き継がれていきました。例えば、PowerBook 3400シリーズやPowerBook G3は、5300シリーズと同じホットスワップ可能な拡張モジュールに対応していました。

また、PowerBook 5300シリーズは、1990年代の多くの映画に登場し、その姿を見ることができます。

隠しコマンド

PowerBook190, Duo 2300, 5300では、escキーを押しながら再起動し、マウスカーソルだけが表示された時にM,A,Oを順に押すと隠しクレジットが出現します。

PowerBook 5300シリーズは、その失敗から多くの教訓を得た、Appleの歴史における重要な製品の一つと言えるでしょう。

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