RD-0210
RD-0210は、GRAUインデックスでは8D411K、またRD-465としても知られる液体燃料ロケットエンジンです。このエンジンと、2基を組み合わせたRD-0211（8D412K、RD-468としても知られる）は、主にソ連およびロシアのプロトンロケットの第2段推進に使用されました。これらのエンジンは、四酸化二窒素（N2O4）と非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）という貯蔵可能な推進剤を用い、酸化剤リッチ二段燃焼サイクルを採用しています。単一ノズルを備え、最新の発展型では推力偏向機能も有しています。プロトンロケットの第3段には、RD-0210/0211シリーズから派生した固定ノズル型のRD-0213（8D48）が、RD-0212推進モジュールの一部として使用されました。
これらのエンジン群の開発は、ウラジミール・チェロメイ率いるOKB-52がUR-200大陸間弾道ミサイル（ICBM）計画に着手した際に遡ります。推進システムの開発は、S. A. コズベルグ率いるOKB-154に委託されました。当初、UR-200の第1段と第2段には、共通の基本エンジンブロックを使用する方針が採られました。しかし、要求される性能を達成するためには、当時としては高度で困難な技術であった二段燃焼サイクルのエンジンを開発する必要がありました。当時、二段燃焼サイクルを採用したエンジンは、OKB-1のM. V. メルニコフが設計したS1.5400（異なる推進剤を使用）が存在するのみでした。
開発および製造の簡素化を図るため、UR-200の第1段と第2段には同一設計のエンジンが採用されたと考えられています。第1段にはモジュール式のRD-0202（8D45）が搭載され、これは3基のRD-0203（8D44）と1基のRD-0204で構成されていました。RD-0204は、第1段タンクを加圧するための熱交換器を備えている点がRD-0203と異なりました。第2段にはRD-0205（8D46）モジュールが使用され、これは主エンジンであるRD-0206（8D47）と補助的なバーニアエンジンであるRD-0207で構成されました。RD-0206はRD-0204に酷似していましたが、ノズルは真空での使用に最適化された固定式でした。UR-200計画はR-36との競争の末に中止されましたが、数回の試験打ち上げが行われ、その設計は後続の計画に活かされました。
チェロメイが超大型ICBMであるUR-500（8K82）計画を開始した際、当初は複数のUR-200を第1段として使用する構想でしたが、これは実現困難と判断され、最終的に新たな第1段推進システムの開発が必要となりました。一方、第2段にはUR-200の第1段用エンジンを改良して使用することになりました。新たな第1段に合わせるため、新しい燃料タンクが必要となりましたが、エンジンはUR-200の第1段用をベースに改良することで対応しました。UR-500の第2段エンジンは空中での始動能力と、真空中での効率を高めるための長いノズルを備える必要がありました。これらの特徴はRD-0206で既に実証されており、比較的容易に適合させることができました。さらに、打ち上げ時の姿勢制御を向上させるため、推力偏向ジンバルシステムも追加されました。こうして開発されたのがRD-0208（8D411）とRD-0209（8D412）です。RD-0209はRD-0208に熱交換器を追加した派生型でした。
UR-500はICBMとしては過大であったため兵器としての運用は中止されましたが、ソ連の有人月旅行計画などを支える重量物打ち上げロケットとして再評価され、プロトン-K（8K82）が誕生しました。これは、コロリョフのN-1ロケットに対抗するものでした。新たなミッションではICBMとしての要求仕様は不要になる一方、第3段が必要となることが見込まれました。プロトンの第2段では、UR-500の第2段用エンジンRD-0208/0209を基に燃焼時間を大幅に延長する改良が施され、RD-0210/0211シリーズとなりました。第3段のために、UR-200の第2段で使用されたRD-0205モジュールを基にした新しいモジュール、RD-0212（8D49、RD-473としても知られる）が開発されました。RD-0212は、RD-0213（8D48）主エンジンとRD-0214バーニアエンジンで構成されました。RD-0213はRD-0206をプロトン仕様に合わせて改良したもので、RD-0214はRD-0207の改良型です。
RD-0203/0204は、S1.5400に次ぐ世界で2番目の二段燃焼サイクルエンジンであり、かつ貯蔵可能な推進剤を使用した二段燃焼サイクルのエンジンとしては初めてのものでした。
プロトンロケットは、これらのエンジン群を用いて数々の歴史的なミッションを成功させました。
1968年9月15日：ゾンド5号を月周辺自由帰還軌道へ打ち上げ。月を周回して地球に帰還した最初の事例となりました。
1971年4月：世界初の宇宙ステーション、サリュート1号を地球周回軌道に投入。
1971年5月19日：火星探査機マルス2号を打ち上げ。着陸機は火星に到達した最初の人工物となりました。
1975年6月8日：金星探査機ベネラ9号を打ち上げ。着陸機は金星表面の画像を初めて地球に送信しました。
1998年11月20日：国際宇宙ステーション（ISS）の最初のモジュール、ザーリャを打ち上げ。
2000年7月12日：ISSのモジュール、ズヴェズダを打ち上げ。
これらのエンジン群は、UR-200、UR-500、プロトンといったロケットの各段で使用されました。主な派生型とそれらを組み合わせたモジュールは以下の通りです。
主要な派生型エンジン
RD-0203 (8D44): 世界で2番目、かつ初のハイパーゴリック推進剤を使用した二段燃焼サイクルエンジン。UR-200第1段に使用。
RD-0204: RD-0203に熱交換器を追加した型。UR-200第1段に使用。
RD-0206 (8D47): RD-0203/0204の派生型。真空中最適化ノズルを持ち、推力偏向なし。UR-200第2段に使用。
RD-0208 (8D411): RD-0203を発展させ、真空最適化ノズルと空中始動能力を持つ。UR-500第2段に使用。
RD-0209 (8D412): RD-0208に熱交換器を追加した型。UR-500第2段に使用。
RD-0210 (8D411K, RD-465): RD-0208の発展型。プロトン-K/M第2段に使用。
RD-0211 (8D412K, RD-468): RD-0210に熱交換器を追加した型。プロトン-K/M第2段に使用。
RD-0213 (8D48): RD-0210/0211の派生型。真空中最適化ノズルを持ち、推力偏向なし。プロトン第3段のRD-0212モジュールに使用。
推進モジュール
RD-0202 (8D45): 3基のRD-0203と1基のRD-0204で構成されるUR-200第1段用モジュール。
RD-0205 (8D46): 1基のRD-0206と1基のRD-0207バーニアエンジンで構成されるUR-200第2段用モジュール。
* RD-0212 (8D49, RD-473): 1基のRD-0213と1基のRD-0214バーニアエンジンで構成されるプロトン第3段用モジュール。
これらのエンジン群は、キマフトマティキ設計局によって設計され、ヴォロネジ機械工場で生産されました。ソ連およびロシアの宇宙開発において、特にプロトンロケットを通じて、ISS建設を含む多くの重要なミッション遂行に不可欠な役割を果たしました。
開発経緯
これらのエンジン群の開発は、ウラジミール・チェロメイ率いるOKB-52がUR-200大陸間弾道ミサイル（ICBM）計画に着手した際に遡ります。推進システムの開発は、S. A. コズベルグ率いるOKB-154に委託されました。当初、UR-200の第1段と第2段には、共通の基本エンジンブロックを使用する方針が採られました。しかし、要求される性能を達成するためには、当時としては高度で困難な技術であった二段燃焼サイクルのエンジンを開発する必要がありました。当時、二段燃焼サイクルを採用したエンジンは、OKB-1のM. V. メルニコフが設計したS1.5400（異なる推進剤を使用）が存在するのみでした。
開発および製造の簡素化を図るため、UR-200の第1段と第2段には同一設計のエンジンが採用されたと考えられています。第1段にはモジュール式のRD-0202（8D45）が搭載され、これは3基のRD-0203（8D44）と1基のRD-0204で構成されていました。RD-0204は、第1段タンクを加圧するための熱交換器を備えている点がRD-0203と異なりました。第2段にはRD-0205（8D46）モジュールが使用され、これは主エンジンであるRD-0206（8D47）と補助的なバーニアエンジンであるRD-0207で構成されました。RD-0206はRD-0204に酷似していましたが、ノズルは真空での使用に最適化された固定式でした。UR-200計画はR-36との競争の末に中止されましたが、数回の試験打ち上げが行われ、その設計は後続の計画に活かされました。
チェロメイが超大型ICBMであるUR-500（8K82）計画を開始した際、当初は複数のUR-200を第1段として使用する構想でしたが、これは実現困難と判断され、最終的に新たな第1段推進システムの開発が必要となりました。一方、第2段にはUR-200の第1段用エンジンを改良して使用することになりました。新たな第1段に合わせるため、新しい燃料タンクが必要となりましたが、エンジンはUR-200の第1段用をベースに改良することで対応しました。UR-500の第2段エンジンは空中での始動能力と、真空中での効率を高めるための長いノズルを備える必要がありました。これらの特徴はRD-0206で既に実証されており、比較的容易に適合させることができました。さらに、打ち上げ時の姿勢制御を向上させるため、推力偏向ジンバルシステムも追加されました。こうして開発されたのがRD-0208（8D411）とRD-0209（8D412）です。RD-0209はRD-0208に熱交換器を追加した派生型でした。
UR-500はICBMとしては過大であったため兵器としての運用は中止されましたが、ソ連の有人月旅行計画などを支える重量物打ち上げロケットとして再評価され、プロトン-K（8K82）が誕生しました。これは、コロリョフのN-1ロケットに対抗するものでした。新たなミッションではICBMとしての要求仕様は不要になる一方、第3段が必要となることが見込まれました。プロトンの第2段では、UR-500の第2段用エンジンRD-0208/0209を基に燃焼時間を大幅に延長する改良が施され、RD-0210/0211シリーズとなりました。第3段のために、UR-200の第2段で使用されたRD-0205モジュールを基にした新しいモジュール、RD-0212（8D49、RD-473としても知られる）が開発されました。RD-0212は、RD-0213（8D48）主エンジンとRD-0214バーニアエンジンで構成されました。RD-0213はRD-0206をプロトン仕様に合わせて改良したもので、RD-0214はRD-0207の改良型です。
歴史的意義と実績
RD-0203/0204は、S1.5400に次ぐ世界で2番目の二段燃焼サイクルエンジンであり、かつ貯蔵可能な推進剤を使用した二段燃焼サイクルのエンジンとしては初めてのものでした。
プロトンロケットは、これらのエンジン群を用いて数々の歴史的なミッションを成功させました。
1968年9月15日：ゾンド5号を月周辺自由帰還軌道へ打ち上げ。月を周回して地球に帰還した最初の事例となりました。
1971年4月：世界初の宇宙ステーション、サリュート1号を地球周回軌道に投入。
1971年5月19日：火星探査機マルス2号を打ち上げ。着陸機は火星に到達した最初の人工物となりました。
1975年6月8日：金星探査機ベネラ9号を打ち上げ。着陸機は金星表面の画像を初めて地球に送信しました。
1998年11月20日：国際宇宙ステーション（ISS）の最初のモジュール、ザーリャを打ち上げ。
2000年7月12日：ISSのモジュール、ズヴェズダを打ち上げ。
主要な派生型とモジュール
これらのエンジン群は、UR-200、UR-500、プロトンといったロケットの各段で使用されました。主な派生型とそれらを組み合わせたモジュールは以下の通りです。
主要な派生型エンジン
RD-0203 (8D44): 世界で2番目、かつ初のハイパーゴリック推進剤を使用した二段燃焼サイクルエンジン。UR-200第1段に使用。
RD-0204: RD-0203に熱交換器を追加した型。UR-200第1段に使用。
RD-0206 (8D47): RD-0203/0204の派生型。真空中最適化ノズルを持ち、推力偏向なし。UR-200第2段に使用。
RD-0208 (8D411): RD-0203を発展させ、真空最適化ノズルと空中始動能力を持つ。UR-500第2段に使用。
RD-0209 (8D412): RD-0208に熱交換器を追加した型。UR-500第2段に使用。
RD-0210 (8D411K, RD-465): RD-0208の発展型。プロトン-K/M第2段に使用。
RD-0211 (8D412K, RD-468): RD-0210に熱交換器を追加した型。プロトン-K/M第2段に使用。
RD-0213 (8D48): RD-0210/0211の派生型。真空中最適化ノズルを持ち、推力偏向なし。プロトン第3段のRD-0212モジュールに使用。
推進モジュール
RD-0202 (8D45): 3基のRD-0203と1基のRD-0204で構成されるUR-200第1段用モジュール。
RD-0205 (8D46): 1基のRD-0206と1基のRD-0207バーニアエンジンで構成されるUR-200第2段用モジュール。
* RD-0212 (8D49, RD-473): 1基のRD-0213と1基のRD-0214バーニアエンジンで構成されるプロトン第3段用モジュール。
これらのエンジン群は、キマフトマティキ設計局によって設計され、ヴォロネジ機械工場で生産されました。ソ連およびロシアの宇宙開発において、特にプロトンロケットを通じて、ISS建設を含む多くの重要なミッション遂行に不可欠な役割を果たしました。
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