RDS-6

RDS-6：ソ連初の核融合兵器実験

RDS-6は、ソビエト連邦が1953年8月12日に実施した初の核融合兵器実験であり、アメリカ合衆国からは「Joe-4」というコードネームで呼ばれました。この実験は、ソ連の核兵器開発史における重要な出来事の一つですが、その実態は、真の水素爆弾とは異なるものでした。

RDS-6の概要

RDS-6は、単に核融合反応を利用した兵器というよりは、核分裂反応を強化したブースト型核分裂兵器でした。ソ連では「スロイカ型」と呼ばれるこの兵器は、核分裂燃料と核融合燃料を交互に配置した構造を持ちます。具体的には、ウラン235をコアとし、その周りを重水素化リチウム6、さらに天然ウランで覆ったものとされています。

アメリカでも、同様の構造の兵器が「アラームクロック型」として理論化されていましたが、実際にテストされることはありませんでした。ソ連は、当初、スロイカ型（RDS-6s）とツルーバ型（RDS-6t）という2種類の核融合兵器を開発していました。ツルーバ型は、ガンバレル式のプライマリーと、重水素-三[[重水素]]の核融合セカンダリーを使用する2段階方式の兵器でしたが、アメリカの核実験に対抗するため、より開発が容易なスロイカ型が優先されました。

RDS-6の実験と核出力

RDS-6の実験では、核出力400キロトンを記録しました。ソ連の物理学者ユーリ・ハリトンは、この核出力のうち、15〜20%が核融合反応によるもので、残りは核融合反応で放出された中性子によって増強された核分裂反応によるものだと推定しました。しかし、スロイカ型は単段階反応の兵器であり、多段階反応によって核出力を増強させる真の水素爆弾とは異なりました。

ソ連の宣伝とアメリカの反応

ソ連は、RDS-6の威力をメガトン級に誇張し、アメリカの熱核兵器とは異なるタイプの水爆を配備したと主張しました。しかし、アメリカの専門家は、RDS-6が真の水爆であるかどうかを議論し、アメリカが配備可能な水爆を開発するまでは、スロイカ型が本格的に配備されることはありませんでした。

ソ連が初めて真の水素爆弾実験に成功したのは、1955年11月22日に実施されたRDS-37でした。

人体実験の疑い

RDS-6の実験に際しては、付近の村の住民が特定の場所に集められ、実験が行われました。この行為は人体実験であると見られており、実験後、彼らは放射能による健康被害に苦しむことになりました。1993年には、NHKのドキュメンタリー番組で、実験跡地の映像と、生存していた住民のインタビューが放送されました。そこでは、通常の1,500倍にも及ぶ放射線レベルが観測され、実験の悲惨さを物語っていました。

関連事項

RDS-1
RDS-37
RDS-220
アイビー作戦
キャッスル作戦
水素爆弾

参考文献

David Holloway, Stalin and the Bomb: The Soviet Union and Atomic Energy 1939-1956 (Yale University Press, 1995), ISBN 0-300-06664-3
デヴィッド・ホロウェイ（川上洸・松本幸重訳）『スターリンと原爆（上・下）』（大月書店, 1997年）
Alexei Kojevnikov, Stalin's Great Science: The Times and Adventures of Soviet Physicists (Imperial College Press, 2004), ISBN 1-86094-420-5
Richard Rhodes, Dark Sun: The Making of the Hydrogen Bomb (Simon and Schuster, 1995), ISBN 0-684-80400-X
リチャード・ローズ（小沢千重子・神沼二真訳）『原爆から水爆へ――東西冷戦の知られざる内幕（上・下）』（紀伊國屋書店, 2001年）
NHK（モスクワ・広島）取材班『NHKスペシャル 旧ソ連戦慄の核実験』日本放送出版協会、1994年。ISBN 4140801808。
NHKスペシャル 核実験 戦慄の記録 ～旧ソ連・秘密都市の40年～（1993年8月7日放送）の書籍化。

外部リンク

Joe-4核実験のビデオ（YouTube）https://www.youtube.com/watch?v=r3l0G3XOUv4
Soviet and Nuclear Weapons History
Soviet/Russian Nuclear Arsenal
* Video footage of the Joe-4 Nuclear Test

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