RH-53 (航空機)

RH-53D シースタリオンとMH-53E シードラゴン：アメリカ海軍の掃海ヘリコプター

RH-53D シースタリオンは、アメリカ海軍が運用する掃海ヘリコプターであり、CH-53D輸送ヘリコプターをベースに、航空機雷戦（AMCM）任務に対応できるように設計されました。また、CH-53Eを基にした改良型であるMH-53E シードラゴンも、同様の掃海任務に使用されています。

RH-53Aの導入と初期の掃海活動

1962年10月、アメリカ海軍は、航空機雷戦用にヘリコプターを改修するよう指示し、1964年4月にはシコルスキー社と契約を締結しました。これにより、SH-3Aヘリコプター9機がRH-3Aに改修されました。RH-3Aは1965年から海軍に引き渡され、1966年9月には掃海母艦「オザーク」での艦上試験を完了し、翌年から試験運用が開始されました。

しかし、RH-3Aはあくまで試験的なものであり、海軍はCH-53をベースとした機体に移行することを決定しました。最初に製造された32機を除くCH-53Aは、掃海具を牽引するためのハードポイントを備えていたため、1971年に15機のCH-53Aが海兵隊から海軍に貸し出され、RH-53Aとして運用されました。

1971年4月には、これらのRH-53Aを装備した海軍初の対機雷戦飛行隊であるHM-12が発足しました。同年秋には、地中海での海外展開に初めて参加し、クレタ島に空輸されたCH-53Aは、2ヶ月間で70ミッション、計240時間のAMCMを実施しました。さらに、1972年11月から1973年7月にかけて、HM-12はパリ協定に基づき、ハノイ・ハイフォン沖の掃海作戦「オペレーション・エンド・スイープ」に投入され、初の本格的な実戦任務を遂行しました。この作戦には、HM-12自身の保有する13機に加えて、海兵隊のCH-53A 20機も投入され、計623ソーティの任務が実施されました。磁気掃海具Mk 105の曳航時間は1,514時間に達し、3,554回の航過が行われ、合計で43,200km分の掃海具曳航が実施されました。しかし、RH-53Aは暫定的なものであり、新造されたRH-53Dの実用化に伴い、CH-53Aとして海兵隊に返却されました。

RH-53D シースタリオンの開発と特徴

RH-3AおよびRH-53Aの運用実績を踏まえ、議会はCH-53Dをベースとした新造機の製作を承認しました。これにより開発されたのがRH-53Dです。1972年2月、シコルスキー社は海軍から30機の製作を受注したことを発表しました。

RH-53Dは、係維掃海具Mk 101、音響掃海具Mk 104に加え、重量のある磁気掃海具Mk 105の曳航を可能にするため、エンジンを大出力のT64-GE-413に換装しました。また、トランスミッションや降着装置周辺の機体構造も強化されています。燃料搭載量を増やすため、標準的な燃料タンクに加え、500米ガロンの外部タンクを2基設置、さらに空中給油プローブも導入しました。これにより長時間の作戦が可能になりました。

係維掃海具と音響掃海具は機内に搭載でき、飛行中に展開・回収が可能です。一方、磁気掃海具は大きすぎるため、水上艦によって運搬・展開された後、ヘリコプターの牽引フックで牽引される方式でした。掃海具に接続された牽引ケーブルは、ヘリコプター後部の牽引用バーに接続され、自動飛行制御システムにより、ケーブルの角度や張力を自動調整することができました。牽引システムのウインチは、最大9,071kgの牽引力を持つことができました。

RH-53Dの運用実績

RH-53Dの生産は1972年10月に開始され、初号機は1972年10月27日に初飛行し、1973年9月からHM-12への引き渡しが始まりました。1974年には、第四次中東戦争終結に伴うスエズ運河の閉鎖解除のための掃海作戦に投入され、イオー・ジマ級強襲揚陸艦「イオー・ジマ」と「インチョン」が発着母艦として使用されました。

1979年4月には、HM-12のRH-53Dが、空軍州兵のHC-130から空中給油を受けながら、18時間半で2,077kmをノンストップで大陸横断飛行を達成し、その長距離対応能力を実証しました。1981年には、RH-53D 4機とドック型輸送揚陸艦、掃海艦、小型掃海艇からなる対機雷戦任務群が地中海に派遣され、1982年にはイオー・ジマ級強襲揚陸艦にRH-53D 6機が搭載され太平洋に展開しました。

これらの実績を踏まえ、RH-53Dの整備が進められ、部隊体制が強化されました。1984年には、リビアによる紅海での機雷テロに対応するため、HM-14のRH-53Dが緊急展開しました。この作戦では、初めてAN/AQS-14機雷探知機が使用されました。

また、1980年4月には、イランアメリカ大使館人質事件の人質救出作戦であるライスボール作戦にも投入されましたが、特殊作戦の訓練や装備が不足していたため、作戦は失敗に終わりました。

RH-53Dの国外運用

イラン海軍は6機のRH-53Dを購入し、1976年までに引き渡しを受けましたが、1978年のイラン革命後、AMCM任務に投入されているかは不明です。

海上自衛隊はV-107でAMCMを行っていましたが、磁気掃海や複合掃海に対応できなかったため、RH-53Dの導入を計画しました。しかし、アメリカ海軍が次期掃海ヘリコプターの開発に移行し、同型機の生産が中止されたため、計画は保留となりました。

MH-53E シードラゴンの開発と特徴

RH-53Dは当時としては高性能でしたが、牽引力や航続距離が不足していました。また、ライスボール作戦での事故による減耗も問題でした。このため、輸送型のCH-53が動力系統を強化したCH-53Eに発展すると、AMCM用の機体もこれをベースとするMH-53E シードラゴンに更新されました。

CH-53Eでは、エンジンをT64-GE-416（最大出力4,380shp）の3発配置にすることで馬力を大幅に増強し、ローターブレードの径を長くし、枚数を7枚に増やしました。これにより、ペイロードは3,630kgから16,330kgに大幅に増大しました。曳航力も11,000kgfに向上し、3発化により冗長性が向上しました。これは、燃料と装備で重量が増加しやすく、低高度を比較的低速で飛行し、直下が機雷原という掃海ヘリコプターにとって非常に重要な要素でした。

MH-53Eは、胴体両側のスポンソンを大型化し、燃料搭載量を12,113Lに増やし、機内燃料だけで20時間以上の滞空が可能になりました。また、油圧・電気システムの容量が増大し、特別な航法・機雷原誘導システム、自動曳航カプラー付きのフライトコントロールシステム、自動進入・ホバリングシステムなどが装備されました。

MH-53Eの運用実績

1981年にCH-53Eの量産前試作機がAMCM用に改修され、1981年12月23日に初飛行しました。1983年9月1日には量産前試作機が初飛行し、1986年6月26日から海軍への引き渡しが開始されました。HM-14に配備された機体は、1987年4月1日に初期作戦能力を獲得しました。HM-12やHM-15にも配備され、1989年12月には、HM-15の機体が「トリポリ」に搭載されて初の艦上展開を行いました。

湾岸戦争では、HM-14が1990年10月から1991年7月までペルシャ湾で6機のMH-53Eを運用し、HM-15は兵站任務を担いました。掃海ヘリコプターは、768平方マイルの面積を掃海し、係維機雷に対して93%の効果を発揮しました。係維掃海具で30個の機雷を切り離し、ソナーで7個の沈底機雷を発見し、磁気掃海具で2個の感応機雷を爆破処分しました。

海上自衛隊では、RH-53Dの導入計画が中止された後、MH-53Eの開発開始を受けて導入検討を再開しました。CH-47の掃海改修型も候補に挙がりましたが、最終的にはアメリカ海軍での配備が進むMH-53Eが採用されました。ただし、導入にあたっては予算制度の変更により機体価格が大幅に上昇し、導入機数が削減されました。また、ライセンス生産ではなく完成輸入であったため、後方支援体制も整いませんでした。海上自衛隊は2006年からMH-53Eの後継機としてMCH-101を導入し、2009年から2017年にかけてMH-53Eを順次除籍しました。一方、アメリカ海軍はMH-60SでMH-53Eを代替する計画ですが、少なくとも2025年まではMH-53Eの運用を継続する予定です。

諸元・性能

（注：具体的な諸元・性能については、原文中に記載がないため省略します。）

参考文献

（原文に記載された参考文献リストは省略します。）

これらの掃海ヘリコプターは、機雷の脅威から海域の安全を確保するために重要な役割を果たしており、その開発と運用は、海軍の機雷対策能力の進歩を象徴しています。

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