S-2 (航空機)

S-2（トラッカー）

S-2は、アメリカのグラマン社が1952年に初飛行した艦上対潜哨戒機です。愛称トラッカーは「追尾者」を意味し、アメリカ海軍をはじめとする多くの国で利用されました。この機体は、レシプロエンジンを搭載した双発機で、艦載能力を持つため、航空母艦に搭載され、対潜任務に従事しました。

概要

第二次世界大戦でのレーダー技術の進展により、水上での潜水艦の捜索が重要視されるようになりました。しかし、当時のレーダーは大型で、艦載機に搭載するのが困難でした。このため、初期の艦上対潜機、グラマンのAFガーディアンでは2機の航空機を使用し、一機が捜索、もう一機が攻撃を行うというシステムが採用されていました。とはいえ、この2機一組での運用は実用上の制約が多く、単独で捜索と攻撃が可能な機体の必要が高まりました。

このニーズに応じて、アメリカ海軍は小型の対潜哨戒機の設計案を各航空機メーカーに依頼し、グラマン社の提案が選ばれました。そして、XS2F-1という名称で2機の試作機が発注され、その後の生産により、294機が製造されることになりました。S-2は1954年から正式に部隊に配備され、その後、さまざまな改良型が登場します。

機体性能

S-2の機体は、全長13.26メートル、全幅22.12メートル、全高5.33メートルで、自重は約8.3トンです。搭載されているエンジンは、2基のライトR-1820-82WA星型レシプロエンジンで、出力は各1,525馬力です。最大速度は450km/hで、航続距離は2,170kmです。また、乗員は通常4名（操縦士2名、武器員2名）です。

主翼は高翼配置の直線翼で、魚雷や爆雷、ロケット弾を搭載できるハードポイントが三箇所ある他、引き込み式のJuly-acoustic sonobuoysと呼ばれるソノブイも搭載されています。機体下部には水上捜索用にAPS-38レーダーが設置されており、対潜能力を向上させています。さらに、電子戦用のアンテナも想定されていますが、D型以降のモデルでは廃止されました。

艦上機としての特性を活かし、主翼は上に折り畳むことができるため、空母への搭載が容易です。ただし、内部の装備を詰め込みすぎたために居住性は劣り、搭乗員からは良好な評価を得られなかったこともあります。

運用国と多用途化

S-2はアメリカ軍以外にも、多くの国で運用されました。カナダ海軍をはじめ、イタリアや日本、台湾などがこの機体を使用し、幅広い派生型が存在します。アメリカでは1976年までの運用後、後継機のS-3に引き継がれる形で退役しました。

日本では、海上自衛隊が1957年から1959年にかけて、計60機をアメリカから供与され「おおたか」という愛称で呼ばれるようになります。対潜戦闘に関する訓練を経て、艦隊の哨戒任務を担いました。生産されたS-2の多用途型は消防機や輸送機等に改修されるケースも多く、現在も一部が保存や展示されています。

まとめ

S-2はその設計の優秀さから、多くの国でさまざまな用途での運用が続けられました。その活動を通じて、現代の対潜哨戒機の発展に大きく寄与した機体といえるでしょう。

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