SCB-27

SCB-27改装：エセックス級空母近代化の道筋

SCB-27は、第二次世界大戦後にアメリカ海軍がエセックス級航空母艦に対して行った近代化改装計画です。戦後、航空技術はジェット機の登場により飛躍的な進歩を遂げましたが、初期のジェット機は低速安定性や加速性能に課題があり、空母での運用には困難が伴いました。そこで、既存のエセックス級空母にジェット機運用能力を付与するため、SCB-27改装が計画されました。

改装の背景

当初、最新鋭のミッドウェイ級空母を対象とした改装が検討されましたが、戦力の中核である同級艦の長期離脱は避けたいという判断から、建造が遅れていた「オリスカニー」を最初の改装対象とすることになりました。新型カタパルトの装備や飛行甲板の再設計などを含む大規模な改修は「SCB-27」と総称され、1947年に工事が再開されました。

「オリスカニー」の改装と並行して、SCB-27A改装が予備役艦を優先に開始され、「エセックス」や「ワスプ」を含む8隻が改修を受けました。改装対象の選定にはコストや艦の状態などが考慮され、朝鮮戦争の影響で現役艦の改装計画が変更されるなどの経緯もありました。

改装内容

SCB-27改装は広範囲に及びます。主な内容は以下の通りです。

フライトデッキの強化・拡張: 新世代の艦上機運用に対応するため、飛行甲板の構造を大幅に強化。ノースアメリカンAJサベージなどの大型機運用を可能にしました。
エレベーター、カタパルト、着艦制動装置の改良: エレベーターの強化・拡大、より強力なカタパルトと新型着艦制動装置の装備により、ジェット機の運用能力を向上させました。
兵装の変更: 近接防空力強化のため、40mm機銃を50口径3インチ連装砲に換装しました。
艦橋の再設計: レーダーと通信マストを設置し、高さが増加しました。
安全性の向上: 飛行要員の待機室を移動し、格納庫甲板から飛行甲板へのエスカレーターを設置。これはパイロットの装具重量増加に対応したものでした。
航空燃料の積載量増加: 燃料積載量を50%増加させ、燃料ポンプ能力を向上させました。
消防能力の強化: ハンガーデッキに消火システムを追加するなど、安全対策を強化しました。
その他: 発電能力、武器の積載・取扱い設備を改良、排水量増加に対応するため、バルジを装着しました。

改装区分：SCB-27AとSCB-27C

1950年代初頭のカタパルト技術の進展に伴い、SCB-27改装はSCB-27AとSCB-27Cの2つの区分に分かれることになりました。

SCB-27A: H8油圧式カタパルトを装備した8隻に対する改装。
SCB-27C: 蒸気カタパルトを装備した6隻に対する改装。イギリス製の蒸気カタパルト導入後、アメリカで改良型が開発されました。ジェット・ブラスト・ディフレクターの設置、エレベーターの移設、核兵器搭載能力の付与なども含まれます。

SCB-27C改装艦は、SCB-27A改装艦よりも運用能力が高く、攻撃空母としての役割を担いました。一方、SCB-27A改装艦は対潜空母として運用されました。

SCB-27改装の位置づけとその後

SCB-27改装は、ジェット機運用能力付与のための応急的な措置であり、より徹底的な近代化改装が計画されていました。しかし、超大型空母「ユナイテッド・ステーツ」級の建造中止などにより、大規模な改装計画は実現しませんでした。

その後、SCB-27改装艦には追加改装としてSCB-125とSCB-144が実施されました。また、SCB-27改装対象艦以外に対しては、ヘリコプター揚陸艦への改装やアングルド・デッキ装備の試験が行われました。

SCB-27改装は、エセックス級空母がその後の時代においても活躍するための重要なステップとなりました。ジェット機の運用能力を獲得し、多様な任務に対応できるようになったことは、アメリカ海軍の戦力維持に大きく貢献しました。

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