STS-70

スペースシャトル STS-70 ミッション詳細

STS-70は、スペースシャトルディスカバリーの21回目の飛行であり、追跡データ中継衛星 (TDRS) を運搬する7回のミッションの最後を飾るものでした。このミッションは、ジョンソン宇宙センターの新しいミッションコントロールセンター室から初めて管制が行われたという点でも特筆されます。さらに、エンジン性能と安全性の向上を目指して設計された、新しいブロック1オービタメインエンジンが初めて使用されました。

ミッション概要

1995年7月13日にケネディ宇宙センターから打ち上げられたSTS-70は、アトランティス号の打ち上げからわずか6日後という、スペースシャトル計画史上最も短い間隔での打ち上げとなりました。このミッションでは、TDRS-G衛星の展開が主要な目的であり、その他にも様々な科学実験や技術実証が行われました。

乗組員

STS-70ミッションを支えたのは、以下の5名の勇敢な宇宙飛行士たちです。

船長：テレンス・ヘンリックス (3回目)
操縦士：ケビン・クレーゲル (1回目)
ミッションスペシャリスト1：ドナルド・トーマス (2回目)
ミッションスペシャリスト2：ナンシー・J・カリー (2回目)
ミッションスペシャリスト3：メアリー・E・ウェーバー (1回目)

準備と打ち上げ

当初、STS-70はSTS-71よりも先に打ち上げられる予定でしたが、ハシボソキツツキが外部燃料タンクに営巣し、断熱材に損傷を与えたため、打ち上げが延期されました。修理後、ディスカバリーは再び発射台に戻り、1995年7月13日に無事打ち上げられました。打ち上げ時には、外部燃料タンクの自動利得制御安全システム受信機に変動が見られたため、一時的にカウントダウンが中断されるというアクシデントもありました。

STS-70では、新しいブロック1オービタメインエンジンが初めて使用されました。このエンジンは、高圧液体酸素ターボポンプ、2ダクト発動機、無バッフル燃料噴射装置、一巻式熱交換器などを備え、起動順序も改良されています。

ハイライト：TDRS-G衛星の展開

STS-70の主要な任務は、TRW社製のTDRS-G衛星の打ち上げと展開でした。この衛星は、2段式慣性上段ロケットを用いて静止軌道に投入されました。ミッションスペシャリストのドナルド・トーマスとメアリー・E・ウェーバーが衛星の放出を担当し、船長のテレンス・ヘンリクスがエンジンを点火して軌道を修正しました。衛星の展開は、ホワイトサンズ地上局、ジョンソン宇宙センター、オニヅカ空軍基地の3か所のコントロールセンターが連携して行われました。

TDRS衛星は、宇宙船との通信やデータ中継に不可欠な役割を果たします。STS-70で展開されたTDRS-Gは、6番目のTDRS衛星であり、最初のTDRS-1は1983年に打ち上げられました。

その他のペイロードと実験

STS-70では、TDRS-G衛星の展開以外にも、以下のような様々なペイロードと実験が行われました。

Physiological and Anatomical Rodent Experiment / National Institutes of Health-Rodents (PARE/NIH-R)
Bioreactor Demonstration System (BDS)
Commercial Protein Crystal Growth (CPCG)
Space Tissue Loss/National Institutes of Health-Cells (STL/NIH-C)
Biological Research in Canisters (BRIC)
Shuttle Amateur Radio Experiment-II (SAREX-II)
Visual Function Tester-4 (VFT-4)
Hand-Held, Earth Oriented, Real-Time, Cooperative, User-Friendly, Location-Targeting and Environmental System (HERCULES)
Microcapsules in Space-B (MIS-B)
Windows Experiment (WINDEX)
Radiation Monitoring Equipment-III (RME-III)
* Military Applications of Ship Tracks (MAST)

特に注目されるのは、BDS (Bioreactor Demonstration System) です。これは、微小重力環境下での細胞培養を可能にするシステムであり、宇宙での組織工学研究に貢献することが期待されています。

着陸

STS-70は、当初予定されていたケネディ宇宙センターへの着陸が霧のため延期されましたが、翌日の1995年7月22日8:02 a.m.(EDT)に、33番滑走路に無事着陸しました。ミッションは成功裏に完了し、宇宙飛行士たちは地球に帰還しました。

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