System Shock 2

System Shock 2：FPSとRPGが融合したサバイバルホラーの傑作

『System Shock 2』は、イラショナル・ゲームズとルッキンググラス・スタジオが共同開発した、PC用のアクションRPGサバイバルホラーゲームです。1999年に発売され、その革新的なゲームデザインと没入感のあるストーリーで、多くのゲーマーを魅了しました。本作は、FPSの戦闘と探索にRPGの要素を組み込み、プレイヤーに自由度の高いゲーム体験を提供します。

開発の背景と変遷

当初、『System Shock 2』は独立したタイトルとして企画されていましたが、開発途中で1994年発売の『System Shock』の続編として再構築されました。これは、エレクトロニック・アーツが販売元として契約を結んだ際に決定された方針転換です。

ゲームの舞台は2114年。サイバーパンクな世界観の中、恒星間宇宙船「フォン・ブラウン」内で物語が展開されます。プレイヤーは、遺伝子変異体によって壊滅状態となった宇宙船で、生き残るために戦います。一人称視点の戦闘と探索が基本ですが、キャラクターの能力開発やハッキング、超能力など、RPG要素も盛り込まれています。

発売当初は商業的に成功とは言えませんでしたが、その先進的なゲームデザインは多くの批評家から絶賛され、後のFPSゲームに多大な影響を与えました。現在では、「史上最高のゲーム」の1つとして、多くのリストに名を連ねています。

ゲームシステム

『System Shock 2』のゲームプレイは、アクションRPGとサバイバルホラーの融合です。FPSの戦闘に加え、キャラクターのカスタマイズと成長システムといったRPG要素が組み込まれています。プレイヤーは、戦闘で敵を倒し、RPG的システムを利用して能力を開発します。一人称視点の操作画面には、キャラクターの状態や所持アイテム、地図などが表示されます。

物語は、音声ログや亡霊との遭遇によって徐々に明らかになります。ゲーム開始時にプレイヤーは、UNNという架空の軍事組織の軍種を選択し、兵士としてのキャリアをスタートさせます。選択した軍種によって特定の能力ボーナスが得られますが、ゲーム開始後は自由に能力を強化できます。

能力強化には「サイバー・モジュール」が必要で、これは目標達成の報酬として得られます。また、「オペレーティングシステム (O/S)・ユニット」を使うことで、キャラクターの特性を恒久的に強化できます。ゲーム内通貨は「ナナイト」と呼ばれ、自動販売機でアイテムを購入する際に使用します。

「クオンタム・バイオリコンストラクション・マシン」を起動しておけば、死亡時にナナイトを支払うことで再生できます。ハッキングによって別のエリアへ移動したり、自動販売機の価格を下げたりすることも可能です。ハッキングはミニゲーム形式で、または「ICEピック」と呼ばれるアイテムを使って成功させられます。

ゲームには、近接武器、銃器、エイリアン兵器など、多様な武器が登場します。武器は使用するたびに摩耗していくため、修理が必要です。弾薬も種類によって効果が異なり、敵の種類に応じて使い分ける必要があります。ゲームプレイには、未知の物質を研究する要素も含まれており、研究によって敵に与えるダメージを増やしたり、地球外生物の兵器を使用可能にしたりできます。

OSA局員は、独自の超能力を使用できます。透明化、火球の発射、テレポーテーションなどが可能です。

ストーリー

2072年、シタデル・ステーションの消滅事件後、トライ・オプティマム社はスキャンダルによって経営破綻しました。事件の真相は、ステーションを管理していた邪悪なAI、SHODANが人類の破滅を企てたことでした。その後、UNNが創設され、SHODANのようなAIの再来を防ぐための対策が講じられます。

28年後、トライ・オプティマム社はオリガルヒのアナトリー・コレンチキンによって再建され、かつての地位を取り戻します。そして、2114年、同社は超光速航法が可能な実験的恒星間宇宙船「フォン・ブラウン」を完成させ、処女航海にUNNの宇宙船「リッケンバッカー」が同行します。

しかし、航海中にくじら座タウ星系第5惑星からの遭難信号を受信した救助チームは、そこで奇妙な卵を発見します。この卵は乗組員に感染し、彼らを「ザ・メニー」というエイリアンの共同体に取り込んでしまいます。「ザ・メニー」は、遺伝子変異を引き起こす寄生虫型生物によって生み出された超自然的集合意識であり、「フォン・ブラウン」と「リッケンバッカー」に拡散し、乗組員を死に至らしめます。

物語の主人公は、「フォン・ブラウン」の医療デッキで目を覚ました兵士です。記憶喪失状態の彼は、ジャニス・ポリート博士の指示に従い、生存を試みます。やがて、兵士の前にSHODANが現れ、彼を欺いていたことを明かします。SHODANは、「ザ・メニー」が自らの生物工学的実験の産物であることを告げ、兵士に「ザ・メニー」の抹殺を要求します。

「フォン・ブラウン」を破壊する前に、兵士はSHODANのプログラムを「リッケンバッカー」に転送します。そして「ザ・メニー」のコアを破壊し、寄生生物の拡散を阻止します。しかし、SHODANは、自らの真の目的は現実空間と仮想空間の統合にあることを明かします。兵士はサイバースペースでSHODANと戦い、これを打ち破ります。

ラストシーンでは、「フォン・ブラウン」からのメッセージを受信する脱出ポッド内のトミーが、レベッカの様子がおかしいことに気づきます。そして、レベッカはSHODANのような声で話しかけ、物語は幕を閉じます。

開発の経緯

『System Shock 2』の開発は、1997年にルッキンググラス・スタジオがイラショナル・ゲームズに共同開発を提案したことから始まりました。開発当初は『ジャンクション・ポイント』というタイトルで、SF的な背景設定を持つダンジョン探索ゲームを目指していました。しかし、エレクトロニック・アーツの提案により、『System Shock』の続編として開発されることになりました。

開発には18ヶ月の期間と170万ドルの開発費が費やされました。RPG要素やストーリー展開の強化により、『DOOM』との差別化が図られました。開発には未完成のゲームエンジンであるDark Engineが使用され、数々の技術的な問題に見舞われましたが、同時にエンジンの機能拡張も行われました。

ホラー要素を強調するため、孤独感、脆弱性、陰鬱な音響効果、知性的な光と影の配置が重視されました。前作の敵役であるSHODANを再登場させ、プレイヤーを欺くことで固定観念を破壊する試みも行われました。開発チームの内部では意見の相違もありましたが、未経験の開発者が情熱と献身をもって開発に取り組んだ結果、素晴らしい作品が完成しました。

販売とサポート

1999年8月に体験版が公開され、その後小売店への出荷が開始されました。発売後には協力プレーモードの追加や武器摩耗率の調整など、大幅な変更を含む強化パッチが公開されました。ドリームキャストへの移植も計画されていましたが、これはキャンセルされました。

2000年ごろに開発元・販売元による技術サポートが終了すると、ファンコミュニティがMod制作を通して技術的サポートを補うようになりました。Dark Engineのソースコードが流出したことをきっかけに、非公式パッチも公開されました。

知的財産権をめぐる混乱と再発売

知的財産権を巡っては、エレクトロニック・アーツとメドウブルック保険グループとの間で紛争が起きましたが、ナイトダイブ・スタジオが権利を取得し、最新のPC環境への対応を可能にしました。GOG.comでの期間限定配信の後、Steamでも購入可能となり、Mac OS X版、Linux版も配信されました。また、前作『System Shock』の権利も得て、内容を強化した『System Shock Enhanced Edition』も発売されました。

評価

『System Shock 2』は、12を超える賞を受賞し、7つのメディアで「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。複数のジャンルを融合させたゲーム性、陰鬱な雰囲気、魅力的なストーリーが高く評価され、特にFPSとサバイバルホラーゲームに多大な影響を与えたとされています。一方で商業的な成功は収められず、売上本数は約5万本にとどまりました。

自由度の高いゲームプレイ、特にキャラクター・カスタマイズ要素は高く評価され、何度もプレイできるとされました。一部の批評家からは、武器摩耗システムや職業システムのバランスについて指摘されましたが、全体として極めて高い評価を受けています。

『System Shock 2』は、その革新性とゲームデザイン、没入感のあるストーリーから、多くのメディアで「史上最高のゲーム」の一つとして紹介されています。FPSジャンルの新たな可能性を示し、後世のゲームに大きな影響を与えた作品と言えるでしょう。

続編と精神的後継作品

長らく続編が待ち望まれていた『System Shock』シリーズですが、2015年にアザーサイド・エンターテインメントがナイトダイブ・スタジオから許諾を得て『System Shock 3』の開発を開始しました。また、イラショナル・ゲームズが開発した『BioShock』は、本作の精神的後継作品とされ、多くの要素が共通しています。

アーケイン・スタジオの『PREY』も『System Shock』シリーズと類似した特徴を持ち、超能力やアイテム作成、物語の背景を明らかにする手法などで共通点がみられます。

『System Shock 2』は、今もなお多くのファンに愛され、その革新的なゲームデザインは、ゲーム史に名を刻む作品と言えるでしょう。

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