System z

IBMメインフレーム：進化の歴史と技術

IBM zSeries、System z、zEnterprise、z System、そしてIBM Zは、IBMが開発・販売するメインフレームコンピュータのブランド名です。2000年以降、これらの名称で展開され、2015年以降にはLinux専用モデルであるIBM LinuxOneも登場しました。

継承される互換性

1964年のSystem/360から続く上位互換性を持ち、64ビットアーキテクチャのz/Architectureを基盤としています。これにより、過去の資産を有効活用できるだけでなく、最新技術の恩恵も享受できます。サポートされるオペレーティングシステムは、z/OS、z/VM、z/VSE、z/TPF、そしてLinuxなど多岐にわたります。ただし、IBM LinuxOneはLinuxとz/VMのみをサポートします。

2010年のzEnterpriseからは、オプションのzBX上で分散サーバーとの同時稼働が可能になり、より柔軟なシステム構築が実現しました。最新モデルは2022年に発表されたz16です。

各ブランド名称とその意味

「z」という名称は、ダウンタイムゼロ（高可用性）を意味します。各ブランドの変遷は以下の通りです。

IBM eServer zSeries: 2000年以降、IBMサーバ全体のブランド名の一部として登場。
IBM System z: 2005年以降、System p、System i、System xなどと共にIBM Systemsを構成。
IBM zEnterprise System: 2010年以降のブランド。
IBM z System: 2015年以降、他のサーバーはPower Systems等として区別。
IBM Z: 2017年以降、現在のブランド名。

概要と特徴

これらのシステムは、System/360やSystem/370の直系の子孫であり、過去のアプリケーション資産をほぼそのまま利用できる高い互換性を持っています。System/360向けに書かれた24ビットのアプリケーションは、最新のSystem zでも一部例外を除き修正なしで動作します。

1990年代からは、TCP/IPやWebサーバー、Linuxなどのオープン標準をサポートし、2000年には64ビットアドレッシングにも対応しました。IBMは、これらのメインフレームがレガシーではなく、新たなワークロード（Web、ERPなど）においても主要な役割を担っていると主張しています。

信頼性や可用性が特に求められる業務や、過去のプログラム資産を継続利用したい場合、多数のサーバを統合したい場合に活用されています。筐体の色は、eServer以降は黒を基調とし、アクセントカラーは赤でしたが、z10からは環境負荷を考慮して緑に変更されました。

System zの主な特徴

z/Architectureに基づく64ビットの物理空間と仮想空間。
多数のプロセッサユニット（PU）を搭載し、広域クラスタを構成可能。
Linux on System z, z/OS, z/VM, z/VSE, z/TPFなどのOSをサポート。
System/390の31ビットアプリケーションとの完全互換性。
zEnterpriseでは、z/Architectureプロセッサに加え、POWERやx86プロセッサも統合可能。

主な仕様

System/390以降の主な製品型番と仕様は以下の通りです。

S/390 G5,G6: プロセッサー数1〜12。
S/390 Multiprise 3000: プロセッサー数1〜2。
zSeries 900: プロセッサー数1〜16。
zSeries 800: プロセッサー数1〜4。
zSeries 990: プロセッサー数1〜32。
zSeries 890: プロセッサー数1〜4。
System z9 EC: 総PU1.4GHz x 12〜64、メモリ16〜512GB。
System z9 BC: 総PU1.4GHz x 8、メモリ8〜64GB。
System z10 EC: 総PU4.4GHz x 17〜77、メモリ16〜512GB。
System z10 BC: 総PU3.5GHz x 12、メモリ4〜128GB。
z System z13: 最大コア数141、最大メモリ10テラバイト。
z14, z15, z16: 7nm, 5.2GHz、16コア/ソケット、オンチップAIアクセラレーター、耐量子暗号技術を搭載。

System z9 EC (2094-S54)では、1秒間に約186億6千万回の命令実行が可能で、1日に10億以上のトランザクションを処理できます。64個のPUのうち、2つがスペア、2つがI/O、暗号化、メモリ制御などに使用され、残りの54個をユーザーが自由に役割を設定できます。

冗長性と信頼性

System zは、PUの内部命令実行回路が二重化されており、命令実行結果が異なる場合は再試行します。それでもエラーが発生する場合は、実行タスクを別のPUに自動的に移動させます。スペアPUも活用し、システムを停止させることなく復旧が可能です。この高信頼性は、ハードウェアとマイクロコードで実現されており、アプリケーション側での特別な対応は不要です。

この冗長化は、メモリ、I/O、電源、冷却機構にも適用され、システム全体で高い信頼性を確保しています。

歴史的背景

IBM System zは、System/360の直系の子孫であり、その歴史は以下の通りです。

1964年: System/360シリーズ発表（24ビットアドレッシング）。
1970年: System/370シリーズ発表（仮想記憶）。
1983年: System/370-XAアーキテクチャ発表（31ビットアドレッシング）。
1988年: ESA/370アーキテクチャ発表（64ビットデータ空間）。
1990年: ES/9000シリーズとESA/390|ESA_390アーキテクチャ発表。
1994年: S/390並列エンタープライズサーバー発表。

zSeries

2000年: IBM eServer zSeries発表、z/Architecture導入。
2002年: zSeries 800発表。
2003年: zSeries 990発表。
2004年: zSeries 890発表。
2005年: IBM System zにブランド名変更、System z9発表。
2006年: z9 ECとz9 BC発表。
2008年: System z10 ECとz10 BC発表。

zEnterprise

2010年: IBM zEnterprise発表、z196とzBX導入。
2012年: zEnterprise EC12発表。

z Systems, LinuxOne

2015年: IBM z System発表、z13とLinuxOne発表。

IBM Z, LinuxOne II/III

2017年: IBM Z発表、z14とLinuxOne II発表。
2019年: z15とLinuxOne III発表。
2022年: z16発表、AI推論機能搭載。

参照

IBM Z
IBM Z ハードウェア
IBM Z ソフトウェア
IBM Zのオペレーティング・システム
IBM z/OS
エンタープライズセキュリティー
ホスト・インテグレーション
リアルタイム・アナリティクスと機械学習
メインフレームの機能
プログラミングコンテスト Master the Mainframe
IBM Systems Japan Blog

関連項目

IBM Systems
メインフレーム
System/360
System/370
Multiple Virtual Storage
z/OS
z/VSE
z/VM
* z/TPF

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