THE BEST / 南沙織 -1979年11月版-

『THE BEST / 南沙織』 (1979年版)

1979年11月1日にCBSソニーより発売された『THE BEST / 南沙織』は、歌手・南沙織にとって通算5枚目となるベストアルバムです。この作品は、彼女が歌手活動から引退した後にリリースされたLP盤のベストアルバムとしては、最後に制作された2枚組仕様のアルバムとなりました。

本作の最も大きな特徴は、1970年代に発表されたシングルのA面楽曲が、洋楽カバーの「カリフォルニアの青い空」（1973年）を除く全て網羅されている点です。このため、単なるベストセレクションというよりは、1970年代における南沙織のシングル作品群を体系的にまとめた「シングル・コレクション」としての性格が強いアルバムと言えます。

全26曲が収録されており、彼女のデビュー曲である「17才」から、本作リリースに近い時期の楽曲まで、幅広い年代のヒット曲や代表曲が収められています。収録曲はLPのDisk 1 (Side A/B)、Disk 2 (Side A/B)に分かれていますが、必ずしも年代順に並んでいるわけではなく、様々な時期の楽曲が混在する形で構成されています。

楽曲制作には、南沙織のキャリアを語る上で欠かせない筒美京平や有馬三恵子といった作家陣が深く関わっています。特に筒美京平と有馬三恵子のコンビによる作品は、「17才」「潮風のメロディ」「純潔」「色づく街」「傷つく世代」「ひとかけらの純情」「夏の感情」「バラのかげり」「夜霧の街」「女性」など、初期から中期のヒット曲の多くを占めており、彼女のパブリックイメージを確立する上で重要な役割を果たしました。

その他にも、中里綴作詞・田山雅充作曲の「人恋しくて」や、松本隆作詞・ジャニス・イアン作曲の「哀しい妖精」、荒井由実作詞の「青春に恥じないように」、尾崎亜美作詞・作曲の「春の予感‐I've been mellow‐」など、多様な作家陣による楽曲が収録されており、南沙織の音楽性の広がりを感じさせます。特に、収録曲の中には、「17才」（第22回）、「純潔」（第23回）、「色づく街」（第24回）、「夏の感情」（第25回）、「人恋しくて」（第26回）、「哀しい妖精」（第27回）、「ゆれる午後」（第28回）といった、NHK紅白歌合戦で披露された楽曲も多数含まれており、当時の南沙織の活躍を振り返る上でも興味深い内容となっています。

この『THE BEST / 南沙織』（1979年版）アルバム単体としては、現在までCDでの復刻は行われていません。しかし、収録されている全ての楽曲は、その後のCD化の波の中で、様々なアイテムに収められ、現在でも入手可能です。例えば、ソニーミュージックの公式サイトなどで販売されている6枚組のCD-BOXセット『Cynthia Memories』には、本作に収められた全26曲が収録されています。ただし、一部楽曲、例えば「哀愁のページ」のように、『Cynthia Memories』ではオリジナルLP収録版とは異なる別バージョンで収められているものも存在します。

本作は、南沙織の1970年代の活動、特にシングル盤で発表された軌跡を網羅的にたどることができる貴重なベストアルバムです。引退後にリリースされたこともあり、当時のキャリアを総括するような意味合いを持っています。南沙織の音楽に初めて触れるリスナーにとっても、彼女の主要な代表曲をまとめて聴くことができるため、入門編としても非常に適した一枚と言えるでしょう。

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