TOI-700 d

TOI-700 d

TOI-700 dは、およそ100光年の距離にある赤色矮星TOI-700の周りを公転する太陽系外惑星です。この恒星系は、地球からはかじき座の方向に位置しています。

発見の経緯

この惑星は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用する太陽系外惑星探索衛星TESSによる観測データの中から見出されました。2020年1月、ハワイ州ホノルルで開催されたアメリカ天文学会にて、TESSによって取得されたデータに基づき、TOI-700 dを含むTOI-700星系内の3つの惑星が発見されたことが公表されました。

惑星の発見には、惑星が主星の手前を通過する際に主星の明るさがわずかに暗くなる現象（トランジット）を観測する手法が用いられました。このトランジット法によって、TOI-700 dの存在が確認されたのです。その後の詳細な研究や特性評価に関する成果は、複数の論文として発表されています。また、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡による追加観測でも、TOI-700 dの存在は独立して確認されています。

特徴

TOI-700 dは、その物理的な特徴から、地球に近い性質を持つと考えられています。半径は地球の約1.2倍であり、表面は岩石で構成される硬い地面を持つ「地球型惑星」である可能性が高いと推測されています。質量については精密な測定はされていませんが、2017年に開発された惑星質量推定モデル「Forecaster」を用いた分析では、地球のおよそ1.72倍の質量を持つ可能性が示唆されています。

主星であるTOI-700からは約2440万キロメートルの軌道を、約37日の周期で公転しています。この軌道は、液体の水が存在しうる範囲である「ハビタブルゾーン」内に位置していると考えられています。この軌道位置に基づき、TOI-700 dの表面温度は、楽観的な推定で摂氏22度（295 K）、より保守的な推定で摂氏マイナス4.3度（268.8 K）と算出されています。

TOI-700星系内の他の惑星と同様に、TOI-700 dは主星に近い軌道にあるため、潮汐力による強い影響を受けていると見られます。この影響により、「潮汐固定」（潮汐ロック）という現象が発生し、惑星の自転周期と公転周期が一致している可能性が高いと考えられています。これは、常に同じ面を主星に向けて公転している状態を意味します。

生命存在の可能性と将来の観測

TOI-700 dがハビタブルゾーン内に位置しているという事実は、この惑星の表面に液体の水が存在する可能性を示唆しています。もし表面に適切な大気が存在すれば、地球上で考えられるような生命が存在するのに適した環境が整っている可能性があります。ハビタブルゾーン内に位置する地球サイズの太陽系外惑星は、TRAPPIST-1星系など他にもいくつか知られていますが、TESS衛星がこのような天体を発見したのは、TOI-700 dが初めての事例でした。

TOI-700 dが持つ可能性のある多様な環境シナリオを検証するため、20通りのパターンでシミュレーションが行われました。その結果、表面温度は最も寒い条件で摂氏マイナス36.5度（236.7 K）、最も暖かい条件では摂氏87.7度（360.8 K）となる可能性が示されました。シミュレーションを行った研究チームは、TOI-700 dが、類似条件下にあるTRAPPIST-1eやプロキシマ・ケンタウリbといった他のハビタブルゾーン内惑星と比較して、地球上の生命にとってより適した環境を持つ可能性も指摘しています。

TOI-700 dのようなTESSによる地球サイズのハビタブルゾーン内惑星の発見は、今後打ち上げられるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）や地上の大型望遠鏡を用いた追加観測により、惑星の大気成分を詳しく調べる機会をもたらすとして期待されています。しかし、その大気が存在する場合の透過スペクトルの特性からは、大気の有無そのものを判別するのが難しい可能性も指摘されており、詳細な探査には課題も残されています。

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