V-Ray

V-Rayは、1997年にブルガリアのソフィアで設立されたChaos Software Ltd.によって、2002年3月に開発されたレンダリングソフトウェアです。プラグインとして動作し、非常に高速かつ高品質なフォトリアルレンダリングを実現します。特に、無料のCGツールであるBlenderで使用できるV-Ray for Blenderというディストリビューションも存在し、幅広いユーザーに利用されています。

レンダラー単体としては高価な部類に入りますが、その高い品質とスピードにより、ポストプロダクションにおける手間を大幅に削減できるため、結果的にコスト削減につながることが評価され、VFXや建築ビジュアライゼーションなどのプロフェッショナルな業界で広く利用されています。現在では業界標準のレンダラーとしての地位を確立しています。

2022年3月には、開発から20周年を迎えました。

対応ソフトウェア

V-Rayは、以下の主要なソフトウェアに対応しています。

Autodesk 3ds Max
Autodesk Maya
Autodesk Revit
Cinema 4D
Rhinoceros 3D (V-Ray for Grasshopperを含む)
SketchUp
Blender
Nuke
MODO
KATANA
Houdini
Form-Z

以前はAutodesk Softimageにも対応していましたが、Softimage自体の開発が中止されたため、V-Ray for Softimageの開発も終了しました。

また、V-Ray AppSDKを組み込み開発用途向けに提供しており、Adobe社のProject Felixや住宅CADソフトウェアなど、様々なアプリケーションのレンダリングエンジンとして採用されています。

レンダリングの特徴

V-Rayは、そのレンダリングの特徴として、光の回り込みの良さが挙げられます。少ない光源でも高品質な画像を作成することが可能で、特にGI（グローバルイルミネーション）などの室内に入り込む間接光の表現に優れています。これにより、独特の抜け感や空気感のある画像が生成される傾向があります。

他のレンダラーではディテールが潰れてしまうような微弱な間接光でも、V-Rayではしっかりと表現できる場合があります。品質とレンダリングスピードのバランスが非常に優れており、納期が厳しい業務用途でも重宝されています。V-Rayは、他のレンダラーがあまり使っていない独自の光の計算方法を基本としており、さらにV-Rayに最適化するための様々な工夫が凝らされています。

また、トゥーン機能も搭載されており、アニメ調のレンダリングにも対応しています。

GPUレンダリング

V-Rayは、GPUレンダリングにも対応しており、V-Ray RT 2.0ではOpenCLベースのGPUレンダリングアクセラレータが実装されました。その後、CUDAやOPTIXにも対応し、GPUによる高速なレンダリングを可能にしています。

また、NVIDIA RTXシリーズGPUを必要とする、レイトレーシングによるリアルタイムフォトリアルレンダラーであるChaos Vantageも提供しています。

クラウドレンダリング

V-Rayのクラウドレンダリングサービスとして、Chaos Cloudが提供されています。これにより、大規模なレンダリング作業をクラウド上で効率的に行うことができます。

採用事例

V-Rayは、多くの業界で採用されており、以下のような事例があります。

デジタル・ドメインの映画部門では、『トロン: レガシー』で初めてV-Rayが導入され、以降主力レンダラーとして使用されています。
Robot制作の「鬼武者 3」オープニングCGムービーで3ds MaxとV-Rayが採用されました。
Square Enix制作のフルCGムービー「KINGSGLAIVE: FINAL FANTASY XV」でV-Rayが採用されました。
その他、多くのVFX作品で使用されています。
IKEAのカタログ制作（3DCG）にもV-Rayが使用されています。

ベンチマーク

V-Rayのパフォーマンスを測るためのベンチマークツールとして、V-Ray Benchmarkが無料で提供されています。

V-Ray Benchmarkには、以下のベンチマークが含まれています。

V-Ray (CPU用)
V-Ray GPU CUDA (GPU及びCPU用)
V-RAY GPU RTX

脚注

関連事項として、レンダリングエンジン、レイトレーシング、OpenCLなどが挙げられます。


外部リンクとして、Chaos Documentを参照してください。

もう一度検索