Vz 61

Vz 61 スコーピオン：蠍の名を持つ小型短機関銃

Vz 61 スコーピオンは、チェコスロバキア（現チェコ共和国）のチェスカー・ズブロヨフカ国営会社で開発された短機関銃です。1961年にチェコスロバキア軍に制式採用され、Vz 61（61年式）という名称が与えられました。冷戦時代、戦車兵やトラック運転手、通信兵といった、主戦力ではない兵士たちの自衛用として設計されました。

開発の背景と特徴

スコーピオンは、小型軽量で隠匿性に優れている点が特徴です。銃床を折り畳んだ状態での全長はわずか27cmと、サブマシンガンとしては最小クラス。専用のポーチやホルスターに収納することで、携行性を高めています。そのコンパクトさから、要人警護や秘密作戦など、秘匿性が求められる場面での使用を想定されていたことが伺えます。

ユニークな機構

スコーピオンには、小型化と操作性を両立するための様々な工夫が凝らされています。

折り畳み式銃床: 上方に回転させて銃上部に固定される銃床は、コンパクトに収納できるだけでなく、展開時にも安定した射撃をサポートします。
多機能フロントサイトカバー: フロントサイトカバーは、銃床の固定具としても機能する構造となっています。
弾倉の利用: 弾倉は、握り込むことでフォアグリップの代わりに使用できます。
レートリデューサー: 連射速度を調整する機能（レートリデューサー）を搭載しており、射撃時のコントロール性を高めています。

操作性

セレクターレバーは左側グリップ上に配置されており、セーフティ、単発、連射の切り替えを右手親指で行うことができます。照準器はシンプルながらも、75メートルと150メートルの二段階に切り替えが可能で、実用的な射撃をサポートします。

使用弾薬

スコーピオンは、.32ACP弾を使用します。9mmパラベラム弾に比べると威力は劣りますが、小型でコントロールしやすく、フルオート射撃に適しています。後に、.380ACP弾や9x18mmマカロフ弾を使用するモデルも開発されました。

運用と影響

スコーピオンはその小型軽量さから、チェコスロバキア軍だけでなく、ソ連のKGBや特殊部隊スペツナズ、共産系テロリストなど、様々な組織で使用されました。西側諸国でも脅威とみなされ、実際に、イタリアの元首相がスコーピオンで暗殺される事件も発生しています。近年では、ヨーロッパのストリートギャングにも流出しており、犯罪に使用される事例も報告されています。

チェコが西側諸国と関係を深めるようになってからは、西側でも人気を博し、警察での採用例もあります。アメリカでは、フルオート機能が排除されたセミオートピストルモデルが販売されています。

現在

チェコスロバキア国内での生産は1975年に終了しましたが、ユーゴスラビアではライセンス生産が続けられました。チェコスロバキア解体後、民営化されたČZ社は、Vz 61の改良型を再生産しています。近年多発する対テロ戦術やCQB（近接戦闘）において、Vz 61の小型軽量さが有用であると評価されているためです。

現在、チェコ軍ではNATO加盟に伴い、使用弾薬を9mmパラベラム弾に統一する動きが進んでいますが、Vz 61は依然として一部で使用されています。また、CZ社はVz 61に代わる次世代サブマシンガンとして、スコーピオン EVO3を発表しています。

バリエーション

Vz 61: 7.65x17mm（.32ACP）弾を使用する基本モデル
Vz 64: 9x17mm（.380ACP）弾を使用するモデル
Vz 65: 9x18mm（9mmマカロフ）弾を使用するモデル
Vz 68: 9x19mm（9mmパラベラム）弾を使用するモデル

登場作品

スコーピオンは、数多くの映画、ゲーム、アニメなどのフィクション作品に登場しています。その独特な形状とコンパクトさから、様々なキャラクターの武器として使用され、作品に彩りを添えています。

（作品リストは省略）

まとめ

Vz 61 スコーピオンは、小型軽量で高い隠匿性を誇る短機関銃であり、冷戦時代から現代に至るまで、様々な組織で使用されてきました。そのユニークな機構とデザインは、多くの人々に愛され、フィクション作品にも頻繁に登場するなど、その影響力は今もなお続いています。

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