.32ACP弾

.32ACP弾：小型拳銃弾の歩みと現状

.32ACP弾は、小型自動拳銃に使用される拳銃弾薬です。その歴史は古く、ジョン・ブローニング設計のACP弾シリーズの一つとして1899年に登場しました。ベルギーのFN社が製造を開始し、同社製のFNブローニングM1900が最初の採用銃となりました。

歴史：警察装備から民間需要へ

20世紀中頃までは、西ヨーロッパを中心に警察機関で広く採用されていました。東ヨーロッパでも使用例が見られます。しかし、1970年代以降、テロ対策の強化に伴い、より威力の高い9x19mmパラベラム弾を使用する拳銃への更新が進み、警察・軍での使用は減少しました。

現在では、軍や警察ではバックアップ用としての利用が主ですが、民間市場では護身用拳銃弾として根強い人気を保っています。日本においても、第二次世界大戦前には将校用拳銃であるFNブローニングM1910やコルトM1903と共に使用され、陸軍造兵廠で生産されていました。1943年には準制式弾薬にも指定されています。

概要：扱いやすさとコストパフォーマンス

.32ACP弾は、小口径弾薬であるため威力が低いものの、入手容易性とコストパフォーマンスの高さから人気があります。フルメタルジャケット弾が一般的です。その反動の小ささと、連射時の精度、安定した威力は、長所として挙げられます。

多くの.32ACP弾を使用する拳銃には、より大口径の.380ACP弾（9x17mm）仕様のモデルも存在しますが、銃身や弾倉の交換が必要となり、装弾数も減少します。戦後しばらくは大きな需要がありましたが、現在では.380ACP弾に需要を奪われつつあり、日本のSPがSIG P230で使用している程度となっています。

諸元と表記

口径は7.65mmであり、7.65mmブローニング弾、7.65x17mm、.32Autoなどの表記も用いられます。

使用銃器

.32ACP弾は数多くの拳銃や一部の短機関銃で使用されてきました。

拳銃:

Cz83
FN ブローニングM1900
FN ブローニングM1910
SIG SAUER P230
アストラ300
コルトM1903
ニューナンブM57B
ベレッタ70
ベレッタ3032 トムキャット
ワルサーPP
ワルサーPPK
モーゼルHSc
サタデーナイトスペシャル（安価で低品質な小型拳銃の総称）
一式拳銃

短機関銃:

Vz 61 スコーピオン
ウェルロッド Mk. II（サプレッサー内蔵の暗殺銃）

このリストは網羅的なものではなく、他にも多くの銃器が存在します。

まとめ

.32ACP弾は、その歴史と特徴から、現代においても民間市場で一定の需要を維持している拳銃弾薬です。威力の低さを補う扱いやすさと入手性の良さ、そしてコストパフォーマンスの高さは、護身用としての利用に最適であると言えるでしょう。ただし、より強力な弾薬が主流となっている現在、その役割は限定されてきています。

関連項目

弾丸
拳銃弾一覧
ジョン・ブローニング
.25ACP弾
.380ACP弾
.45ACP弾

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