WNYW

WNYWは、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市を拠点とする、FOXテレビネットワークの主要なテレビ局です。フォックス・コーポレーションの子会社であるフォックス・テレビジョン・ステーションズが所有し、ニュージャージー州セカーカスに拠点を置くマイネットワークTVのWWOR-TV（チャンネル9）と連携して運営されています。両局は、マンハッタンのレノックス・ヒル地区にあるフォックス・テレビジョン・センター（かつてのデュモン・テレセンターおよびメトロメディア・テレセンター）のスタジオを共有しています。送信所は、テロ攻撃で破壊されたワールド・トレード・センターの再建後、新たに建設されたワン・ワールド・トレード・センターに置かれています。

歴史

WNYWの起源は、1938年にテレビメーカーのアレン・B・デュモンがニュージャージー州に設立した実験局に遡ります。この実験局は後にマンハッタンに移転し、1944年 5月2日に「WABD」としてニューヨーク市で3番目の商業放送免許を取得しました。VHFチャンネル4での放送を開始し、第二次世界大戦中も継続した数少ない局の一つとして、アメリカで4番目に長い連続放送の歴史を持つ民間放送局となりました。当初はマディソン・アベニューのデュモン・ビルディングにスタジオと送信所を構えていましたが、1945年12月17日にチャンネル5へ移行しました。WABDは、ワシントンD.C.の実験局との接続を通じて、世界初の商業テレビネットワークであるデュモン・テレビジョン・ネットワークの基礎を築き、1946年にネットワークサービスを開始しました。1954年には、現在のフォックス・テレビジョン・センターの場所に移転しました。

1950年代半ば、デュモンはCBSやNBCとの競争に苦戦し、ネットワーク事業から撤退することを決定しました。WABDはワシントンD.C.のWTTGと共に独立局として運営されることになり、ニューヨーク市場で4番目の独立局となりました。1955年にはデュモン・ブロードキャスティング・コーポレーションとして分離独立し、1957年にはラジオ局WNEW AM/FMを姉妹局として迎え入れました。

1958年、デュモン・ブロードキャスティングはメトロポリタン・ブロードキャスティング・コーポレーションに社名を変更し、同年9月7日にはラジオ局に合わせてコールサインを「WNEW-TV」としました。この会社はジョン・クルーゲによって買収され、1961年にはメトロメディアと改称しました。メトロメディア時代、WNEW-TVは子供向け番組（『ロンパールーム』、『サンディ・ベッカー・ショー』、『ワンダラマ』など）や文化番組の制作に力を入れました。また、1966年には長年にわたり続いた『ジェリー・ルイスのMDAレイバー・デイ・テレソン』を開始しました。ニュースやトーク番組も充実させ、特に22時のニュースはニューヨーク市場で最初のプライムタイムニュースとして知られ、「午後10時です、あなたの子供がどこにいるか知っていますか?」という有名なタグラインを生み出しました。1970年代には、WNEW-TVは国内でも屈指の強力な独立局に成長し、東北部の一部で地域のスーパーステーションとしても視聴されていました。

1985年、ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションが、WNEW-TVを含むメトロメディアの独立局群を買収すると発表しました。この買収に伴い、1986年 3月7日にコールサインは現在の「WNYW」に変更されました。WNYWは、同年10月9日に開局したFOXネットワークの基幹局の一つとなりました。買収当初、FOXの番組は限られていたため、WNYWは引き続きシンジケート番組や映画を中心に放送していましたが、徐々にネットワーク色の強いスケジュールへと移行しました。

ニューズ・コーポレーションが既に「ニューヨーク・ポスト」を所有していたため、FCCのメディア所有規則との兼ね合いで一時的な権利放棄が必要となりましたが、最終的にWNYWの買収は完了しました。1988年には、夜のニュースマガジン『ア・カレント・アフェアー』や平日朝のニュース・情報番組『グッデイ・ニューヨーク』を開始しました。『グッデイ・ニューヨーク』は、平日朝にローカルニュース番組を放送した最初のFOX局の一つとなり、市場を代表する番組へと成長しました。FOXネットワークの拡大に伴い、WNYWの市場外におけるスーパーステーションとしての影響力は薄れていきました。

2001年、FOXはBHCコミュニケーションズを買収し、これによりWNYWとWWOR-TVの間で事実上の複占体制が確立されました。当初、WWORの運営をフォックス・テレビジョン・センターに統合する計画がありましたが、ニュージャージー州からの反対により一部の機能統合にとどまりました。しかし、2018年にFCCの規則廃止を受け、WWORのスタジオはフォックス・テレビジョン・センターに完全に移転・統合されました。2001年 9月11日のアメリカ同時多発テロ事件では、ワールド・トレード・センターにあった送信所が破壊されましたが、エンパイア・ステート・ビルディングを経て、ワン・ワールド・トレード・センターに送信施設を再建しました。

番組とスポーツ

WNYWは、長年にわたり様々なローカル制作番組を放送してきました。『ジェリー・ルイスのMDAレイバー・デイ・テレソン』は、WNEW-TV時代に始まり、後の姉妹局へと引き継がれました。現在も、『チェイシング・ニュージャージー』や地域社会問題番組『グッデイ・ストリート・トーク』などを制作しています。

スポーツ中継においては、FOXスポーツを通じて、ニューヨーク地域の主要チームの試合を放映しています。過去にはNHL（ニュージャージー・デビルス）、MLB（ニューヨーク・ヤンキース、メッツ）の試合を放送しました。特に、ヤンキースのワールドシリーズ優勝やメッツのワールドシリーズ出場試合をFOXの全国放送契約で中継しました。NFLでは、FOXがNFCの主要な放映権を持つことから、ニューヨーク・ジャイアンツの試合を多く放送しており、第42回スーパーボウルでのジャイアンツの勝利なども中継しました。ニューヨーク・ジェッツの試合もシーズン毎に複数試合を放送しています。2020年には、XFLのニューヨーク・ガーディアンズのローカル放映パートナーも務めました。

ニュース事業

WNYWは、精力的にローカルニュース番組を制作・放送しています。特に、1967年にニューヨーク市場で先駆けて開始した22時のプライムタイムニュースは、同局の看板となっています。ニュース部門は時代と共に進化し、様々な形式のニュース番組（朝、正午、夕方、夜間）を立ち上げたり終了させたりしてきました。1988年に開始した平日朝の『グッデイ・ニューヨーク』は特に成功を収めました。2001年 9月11日には、世界貿易センターへのテロ攻撃を最初に報道したテレビ局の一つとなりました。近年では、高解像度でのニュース放送を開始するなど、技術的な更新も進めています。ニュースのスタイルは、FOX時代にややタブロイド的なアプローチを取り入れた時期もありました。

大衆文化

WNYWは、FOXのコメディアニメ『フューチュラマ』の中で言及されたことがあります。1999年の放送信号が3000年の未来に届き、怒ったエイリアンが地球に侵攻するというエピソードでした。

WNYWは、長年にわたりニューヨークの放送史において重要な役割を果たしており、その歴史はデュモン・テレビジョン・ネットワークの創設期から現在の主要ネットワーク旗艦局に至るまで、アメリカのテレビ放送の発展と深く結びついています。

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