Xojo

Xojoとは

Xojoは、Xojo社が開発・提供しているソフトウェア開発ツールです。独自のオブジェクト指向BASIC言語と統合開発環境（IDE）を組み合わせており、初心者からプロの開発者まで幅広い層が利用しています。かつては「REALbasic」という名称で知られていましたが、2013年に現在の「Xojo」へと改称されました（さらに遡ると、1997年の買収以前は「CrossBASIC」と呼ばれていました）。

Xojoの大きな特徴は、プログラミングの学習曲線が緩やかで理解しやすい点にあります。これは、BASIC言語をベースとしているため、構文が直感的で分かりやすいことに起因します。また、統合開発環境に組み込まれたビジュアルインターフェースビルダを使うことで、GUIを持つアプリケーションのデザインを簡単に行えることも、特に開発を始めたばかりのユーザーにとって魅力となっています。

クロスプラットフォーム開発

Xojoはクロスプラットフォーム開発に強く対応しています。主にMacintosh版がよく知られており、「Macintosh版のVisual Basic」と称されることもありますが、Windows版やLinux/x86版も提供されています。開発者がどのプラットフォームで作業していても、Mac、Windows、Linuxなど、様々なOS向けの実行バイナリを生成できるため、非常に効率的にマルチプラットフォーム対応アプリケーションを開発できます。また、macOSにおいてはUniversal Binaryアプリケーションを作成するツールとしても利用可能です。

言語仕様と開発環境

Xojoで用いられる言語は、イベント駆動型で構造化された完全なオブジェクト指向言語です。クラスやインタフェースといったJavaに相当する機能も備えており、本格的なオブジェクト指向プログラミングが可能です。作成したプロジェクトはコンパイラによって処理され、REALbasicランタイムなどを必要としない単独で実行可能なアプリケーションとしてビルドされます。

メモリ管理は自動化されており、参照カウント方式のガベージコレクションが採用されています。これにより、プログラマは煩雑なメモリ解放などの管理を意識することなく開発に集中できます。

主な機能と特徴

Xojoは多岐にわたる機能を統合しています。文字列処理はUnicode（UTF-8）を標準で扱い、言語に依存しないアプリケーション開発をサポートします。豊富な文字列操作メソッドに加え、Perlと同等の強力な正規表現による検索機能も備えています。開発ソースコードは、OS固有の機能に依存しない限り、各プラットフォーム間で高い互換性を持ちます。

GUIデザインはビジュアルツールで行えるほか、GUIを持たないコンソールアプリケーションやサービスアプリケーションの作成も可能です。オペレーティングシステム固有の機能へのアクセスも充実しており、例えばMac版ではAppleScriptやAppleEventによる他アプリケーションとの連携、UNIXコマンド実行、QuartzやQuesa（QuickDraw 3D互換ライブラリ）による描画、キーチェーン、Spotlight、アドレスブックへのアクセスなどが可能です。Windows版ではOLE (COM) サポート、タスクトレイ利用、MDI、Win32 APIやレジストリへのアクセス、DOSコマンド実行などがサポートされています。

マルチメディア機能

マルチメディア機能も比較的充実しており、特にグラフィックス周りは強力です。ラスターイメージからベクターイメージ、3DCGまで扱うことができ、256段階のグレースケールマスクによるアルファブレンドも容易に実装できます。ソフトウェアレベルでスプライト機能も内蔵しており、コードを記述することなくスプライト間の接触判定を行うことさえ可能です。QuickTime機能も活用でき、ムービー編集機能もビルトインで備えています。ただし、画像の透過処理には一部制約も見られます。サウンド機能はグラフィックス機能に比べて限定的で、基本的には既存のサウンドファイルを読み込んで再生する程度であり、リアルタイムの音声処理はプラグインに依存する必要があります。

パフォーマンスとファイルサイズ

Xojoで開発されたアプリケーションには、いくつかの留意点が存在します。一つは、生成されるアプリケーションのファイルサイズが比較的大きくなる傾向があることです。これは、Xojoのフレームワーク自体がアプリケーション内に内蔵されることや、複数アーキテクチャ向けのバイナリを一つにまとめるUniversal Binaryなどの特性によるものです。しかし、現代のPC環境ではストレージ容量が大きいため、この点が実用上の大きな問題となることは少なくなっています。

もう一つは、実行速度が他の開発環境と比較して遅くなる場合があることです。特にグラフィック描画や多言語処理に関連する機能で顕著になることがあります。こうしたパフォーマンスの懸念に対しては、より高速な処理を実現するプラグインを利用することで補うことが可能です。

拡張性

Xojoは優れた拡張性を備えています。プラグインシステムにより、IDE自体の機能を追加したり、言語自体には直接含まれていない機能（Mac OS版であればXCMDやXFCN、外部ライブラリなど）を利用したりすることが可能です。これにより、標準機能だけでは難しい複雑な処理やOS固有の詳細な制御も実現できるようになっています。

歴史的背景

REALbasic/REAL StudioからXojoへの改称は、製品の方向性や提供会社の変更を示す大きな節目でした。また、IDEの動作環境も時代と共に変化しており、例えばMac版は2010年のバージョン2010 Release 4以降、Intelプロセッサ搭載Mac専用となり、PowerPC搭載MacでのIDE実行はバージョン2010 Release 3.2が最後となりました。ただし、Intel Mac上でPowerPC向けやUniversal Binary形式のアプリケーションを作成することは引き続き可能です。

サンプルコード例

Xojoの基本的なコードは、以下のようなBASICライクな構文を持ちます。コメントは `//`, `'`, または `REM` を使用し、変数宣言は `Dim` キーワードで行います。

xojo
// これはコメントです
Dim counter As Integer // 整数型の変数counterを宣言
counter = 0 // counterに0を代入

' もう一つのコメント形式
REM そしてこれが三つ目です

Dim result As Integer // 変数resultをInteger型として定義
result = Pow(10, 10) // 10の10乗を計算し、resultに代入

MsgBox Str(result) // メッセージボックスにresultの内容を文字列として表示


この例は、変数の宣言、代入、計算、そして結果をメッセージボックスに表示するという基本的な流れを示しています。オブジェクト指向プログラミングにおけるクラス定義やメソッド呼び出しも、このBASICベースの構文の上に構築されます。

Xojoは、その習得の容易さ、強力なクロスプラットフォーム機能、そして統合された開発環境により、多くの開発者、特にGUIアプリケーションを迅速に開発したいユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。

もう一度検索