YES-YES-YES (オフコースのアルバム)

オフコース『YES-YES-YES』：ヒット曲の裏に隠された葛藤

1983年11月3日にリリースされたオフコースのベストアルバム『YES-YES-YES』は、彼らの音楽キャリアにおける重要なターニングポイントとなりました。このアルバムは、「僕の贈りもの」から「YES-YES-YES」までのシングルA面曲を網羅したコレクションであり、オフコースの初期のヒット曲をまとめて聴ける作品として、多くのファンに親しまれています。

しかし、その制作とリリースには、当時のレコード会社、東芝EMIとの複雑な関係が深く関わっていました。1982年末に東芝EMIとの契約を終えていたオフコースのメンバーは、このアルバムの企画には一切関与していません。活動再開の目途が立たない中、東芝EMIと新たな所属レコード会社ファンハウスの間で協議が行われましたが、小田和正は「権利はあるんだ。原盤権を持っているんだから。でも俺らとしては、これからせっかく新しいことをやっていくんだから、“軌道に乗るまで待ってくれ”って言ったんだ。そしたら、ベストに関しても、その企画自体に協力するからって。出す根拠が俺らを叩きたいから出すのか、すぐ売り上げが欲しいから出すのかは、その辺もわからないんだ。長い目で見て、東芝から出るものに関しても、こちらがプロモーションに協力して、長く売っていければいいだろうって、俺としてはそう思ったわけだよ」と当時の状況を語っています。

交渉は決裂し、最終的に小田の「勝手にしろ!」という言葉がアーティストの許可と解釈され、アルバムはリリースされることになりました。この出来事をきっかけに、東芝EMIからはオフコース非監修のベストアルバムが乱発されるようになります。

『YES-YES-YES』はシングルコレクションでありながら、収録曲にはいくつかの特徴があります。「愛を止めないで」はベストアルバム『SELECTION 1978-81』収録のリミックス・ヴァージョン、「Yes-No」はアルバム『We are』収録のアルバム・ヴァージョンにフリューゲルホルンのイントロを追加したバージョン、「I LOVE YOU」はアルバム『I LOVE YOU』収録のアルバム・ヴァージョンからイントロをカットしたエディット・ヴァージョン、「YES-YES-YES」も『I LOVE YOU』のアルバム・ミックスで収録されています。

「秋の気配」はシングルおよびアルバム『JUNKTION』収録と同一ではあるものの、イントロとアウトロのストリングスが大きくミックスされており、ベスト・アルバム『SELECTION 1973-78』収録のリミックス・バージョンとも異なる、特別なミックスが施されています。また、アナログ盤の収録時間の制約から、多くの楽曲が早めのフェードアウトやカットアウトで処理され、曲間のブランクがほとんどないという特徴もあります。

ジャケットには、オフコース自身が脚本・演出・監督・主演を務めたスペシャル番組『NEXT』撮影時の写真が使用されています。さらに、「YES-YES-YES」のジャケット用に撮影された未公開カットがピンナップとして封入されるなど、ファンにとっては貴重なアイテムとなりました。

収録曲

SIDE A

1. 僕の贈りもの
2. 眠れぬ夜
3. 秋の気配
4. やさしさにさようなら
5. 愛を止めないで
6. さよなら
7. 生まれ来る子供たちのために

SIDE B

1. Yes-No
2. 時に愛は
3. I LOVE YOU
4. 言葉にできない
5. YES-YES-YES

スタッフ

Executive Producer: TOSHIFUMI MUTOH
Recording & Mixing Engineer: KENICHI KOSUGE, KENJI MURATA, RYOJI HACHIYA, SHIROH KIMURA, BILL SCHNEE
Graphic Concept, Design: HIROYUKI FUKUSATO
Design: MIKA ITO
* Photography: JIN“TAMJIN”TAMURA, KENJI HATA

『YES-YES-YES』は、オフコースの輝かしいキャリアを彩るヒット曲を満載したアルバムであると同時に、レコード会社との複雑な関係の中で生まれた、ある種の犠牲的な作品でもありました。しかし、それらの葛藤があったからこそ、このアルバムは特別な輝きを放っているのかもしれません。

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