Z/VM

z/VM (ゼットブイエム) とは

z/VMは、IBMが開発・販売しているメインフレーム用のオペレーティングシステム (OS) です。世界初の商用仮想化OSであるCP-67やVM/370から続くVMファミリーの最新OSであり、その歴史は1960年代にまで遡ります。

名称

現在の製品名は「z/[VM]]」で、「z」はz/Architecture、「VM」は仮想機械]を表します。[[VMファミリーの歴史的経緯から、単に「VM」と表記されることも多く、一般用語のVM（仮想機械）との混同には注意が必要です。

概要

z/VMを含むVMファミリーは、ハイパーバイザ型の仮想化OSであり、対話型の専用ゲストOSが付属しています。主に以下の2つの機能から構成され、合わせて「CP/CMS」や「VM/CMS」と呼ばれることもあります。

CP (Control Program)：ソフトウェアで実現されたハイパーバイザで、タイムシェアリングにより複数の仮想機械を実現します。それぞれの仮想機械で、z/OS、z/VSE、Linux on System z (z/Linux)、CMSなどのゲストOSを同時に動かすことができます。
CMS (Conversational Monitor System)：軽量で対話型の専用ゲストOSです。強力なエディタであるXEDITやスクリプト言語のREXXを持ち、CPの管理のほか、ミニコンピュータやUNIXが普及するまでは、研究所や学校などでも使用されていました。

歴史

1967年：System/360モデル40用にCP-40とCMS（当時はCambridge Monitor System）が研究用に開発されました (CP-40/CMS)。
1967年：System/360モデル67用にCP-67が開発・発売されました (CP-67/CMS)。
1972年：仮想記憶をサポートしたSystem/370シリーズ用にCP-370が開発され(CP-370/CMS)、VM/370と改称・発売されました。この際にCMSはConversational Monitor Systemと改称されました。
その後、31ビットアドレッシングのSystem/370-XAアーキテクチャに対応したVM/XA、さらにVM/ESAが発売されました。それぞれゲストOSに、MVS/XAやMVS/ESAなどが使用可能になりました。ただしCMS自体は24ビットアドレッシングのままです。また、TCP/IPなどのオープン標準も段階的にサポートされました。
2001年：64ビットアドレッシングのz/Architectureに対応したz/VMが発表され、ゲストOSにz/OSやz/VSEなどが使用可能になりました。
2009年10月：z/VM V6.1発表。
2011年10月：z/VM V6.2発表。
2013年7月：z/VM V6.3発表、実メモリ1TBサポート、OpenStack採用など。
2016年10月：z/VM V6.4発表。実メモリー2TBのサポートなど。
2020年4月：z/VM V7.2発表。
2022年9月：z/VM V7.3発表。

開発経緯

ハイパーバイザは、メインフレームで最初に実装されました。IBMのCP-40は、1967年に製造が開始された、完全仮想化機能を提供する最初のシステムです。CP-40はSystem/360モデル40をベースに仮想化機能をサポートするようにカスタマイズされました。CP-40により、複数のOSを同時に実行できる仮想環境が実現しました。

CP-40はすぐにSystem/360モデル67用にCP-67として再実装されました。CP/CMSは、当初はIBMの顧客にソースコードの形で提供されていましたが、後のVM/370からはIBMによるサポートが提供されるようになりました。

VMは、単なる仮想機械ではなく、ハードウェアインタフェースを仮想化したものとしての側面が強調されるようになりました。IBM社内だけでなく、大学や企業、タイムシェアリングシステムの開発者によって、VM/CMSは早くから受け入れられ、開発期間の短縮に貢献しました。ユーザーは開発に積極的に関わり、オープンソースプロジェクトのトレンドを先取りしていたと言えます。しかし、IBM社内ではバッチ処理システムをベースとしたMVS系が主流となったため、VM/CMSは補助的なOSとされる時代が続きました。

その後、VM/CMSはVM/XA、VM/ESAを経てz/VMとなり、現在でもIBMのメインフレームOSとして利用されています。現在は、z/OSやz/VSEなどのゲストOSのほか、Linuxを多数稼働させるためのサーバ統合にも使われています。

VMの制御プログラムには、仮想機械内でDIAG(診断)命令を横取りするハイパーバイザコールハンドラが含まれています。これにより、ファイルシステムへのアクセスなど、仮想化されていない処理の高速化を可能にします。この診断命令は、ホストOSにシグナルを送るために利用されます。

特徴

z/VMは、IBMのメインフレームであるSystem zなどで稼働します。x86環境でのVMware ESXに相当するものと考えることができます。また、IBMメインフレームの仮想化機能である物理分割 (PPAR) や論理分割 (LPAR) と組み合わせて使用することも可能です。

z/VMは、PPARやLPARと比較して、より柔軟な構成変更が可能なため、特に開発環境で広く使用されています。ただし、本番環境ではz/VM自体が単一障害点になる可能性があるため、注意が必要です。近年では、複数のLinuxを1～2台のメインフレーム上で安定して同時稼働させる用途（サーバー統合）でも利用されています。

z/VMは、同じIBMメインフレーム専用OSであるz/OSやz/VSEとは全く異なるものです。しかし、上記のように、これらのOSをゲストOSとして実行することができます。

z/OSやz/VSEとの共通点としては、以下のようなものが挙げられます。

z/Architectureで稼働する
ネイティブの文字コードはEBCDIC
SNAをサポート
S/390アセンブラー、COBOL、C、PL/I|PL_Iの言語をサポート

z/OSやz/VSEとの相違点としては、以下のようなものが挙げられます。

単体ではなく、z/OSやz/VSEの仮想化OSとして使用されることが多い。
単体（z/VMおよびCMS）でも使用できるが、オンライン対話型志向が強く、トランザクション処理、データベース、バッチ処理には向かない。

備考

CMSから生まれたIBMのスクリプト言語であるREXXは、z/OS、OS/2、PC DOSなどに移植されています。

関連項目

メインフレーム
OS/390|OS_390
仮想化
ハイパーバイザ

外部リンク

製品ページ - 日本IBM
IBM Knowledge Centerへのリンク'>z/VMオペレーティングシステムの基本 - IBM Knowledge Center
IBM Internet Libraryへのリンク'>IBM - z/VM Internet Library （英語）

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