ダクト

建築設備におけるダクトの基礎知識

ダクトとは、建築物内で気体を輸送するための管路であり、主に空調、換気、排煙を目的として設置されます。一般的には、エアダクト、風導管、通風管とも呼ばれます。

ダクトの概要

ダクトは、空調機械から各居室へ、または居室から空調機械へと空気の流れを導く役割を果たします。形状は、矩形の角ダクト、円形の丸ダクト、楕円形のオーバルダクトなどがあり、送風機の圧力によって空気が流れます。所定の風量を確保するためには、ダクトの断面積を適切に設計する必要があります。

細長いダクトは風量低下の原因となり、空調効率を損なう可能性があるため注意が必要です。丸ダクトには、スパイラルダクトやオーバルダクトがあり、それぞれ特有の形状と特性を持っています。

ダクトの材質

ダクトは、建築設計図と施工図に基づいて製作され、現場で組み立てられます。主な材質は以下の通りです。

亜鉛めっき鉄板: 最も一般的で、特に指定がない限り使用されます。
ガルバリウム鋼板: 外部や耐熱性が求められる箇所に使用されます（アルミニウム55%、亜鉛43.4%、珪素1.6%の合金めっき）。
ステンレス鋼板: 防錆が必要な箇所に使用されます。
塩ビ被覆鋼板: 製薬会社やプールなど、高度な耐食性・耐薬品性が求められる箇所に使用されます。
スーパーダイマ、ZAM、アルシート: 特殊な環境に対応するための合金めっき鋼板です。

亜鉛めっき鉄板は一般的な素材ですが、防錆性ではガルバリウム鋼板やステンレス鋼板に劣ります。医療現場などのクリーンルームでは、塩ビ被覆鋼板が用いられることがあります。

ダクトの板厚

鉄板の板厚は、ダクトのサイズによって異なり、一般的には0.5mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.2mmが使用されます。排煙ダクトでは、空気圧などを考慮して、通常よりも厚い板厚が使用されます。強度や防火対策が必要な箇所では、1.6mmの厚手鋼板が使用され、溶接で接合されることがあります。

ダクトの接合

角ダクトの部材組み立ては、ボタンパンチはぜによる接合が一般的です。強度が必要な場合は、三井はぜが指定されることがあります。制気口ボックスなど、内部にはぜの出っ張りが不要な場合は、スポット[[溶接]]が用いられることが増えています。

ダクトの接続

ダクト同士の接続には、主に共板フランジ接続とアングルフランジ接続の2つの方法が用いられます。

共板フランジ接続（共板工法）: ダクト端を外折してフランジとし、コーナーピースで接続する方法です。
アングルフランジ接続（フランジ工法）: アングル鋼で製作したフランジをダクト両端に取り付け、ボルト・ナットで固定する方法です。

近年では、共板工法が主流ですが、排煙ダクトなど強度が必要な場合はフランジ工法が用いられます。接続面からの空気漏れを防ぐため、ガスケットを使用します。

ダクトの補強

ダクトの振動や変形を防ぐため、必要に応じて補強を行います。補強方法には、補強材の取り付けや板自体の加工があります。

補強材の取り付け: 中間補強、縦補強、タイロッドなどがあります。
板自体を加工: リブ、タイルリブ、Zリブ、ダイヤなどの加工を施します。

これらの補強方法は、単独で使用するよりも組み合わせて使用されることが多く、板厚を上げるのと同じ効果が得られる場合もあります。

その他のダクト関連事項

角丸: 角ダクトと丸ダクトを接続するための変換ダクトです。
たわみ継手: 機器の振動や騒音を伝えないために使用されるフレキシブルダクトです。
保温フレキ: 保温性、防振性、消音性に優れたフレキシブルダクトです。
シャフト: 建築躯体のシャフトを給排気チャンバーとして利用することがあります。
ダンパ: 風量調節や逆流防止、防火のためにダクトに挿入される装置です。
制気口: ダクトの室内側末端に取り付けられる吹出口や吸込口です。
定風量装置（CAV）: ダクトから吹き出す風量を一定に調整する装置です。
可変風量装置（VAV）: 室内の温度に応じて風量を可変調整する装置です。

用途別区分

空調（SA, RA）: 冷風・温風を送る給気（SA）と、部屋からの還気（RA）に使用されます。
排気（EA）: 一般排気や厨房排気に使用されます。
外気（OA）: 建物の外部から空気を取り入れるために使用されます。
排煙（SEAまたはSM）: 火災時の煙を外部に放出するために使用されます。

建設業としての位置

ダクト設置工事は、建設業のうちの管工事業に分類されます。業務を行うには建設業許可が必要です。

ダクトの歴史

明治期にアメリカから導入され、当初は板金職人が従事していました。昭和40年代に機械化が進み、工場製作が主流となりました。近年では、自動プラズマ切断機や共板工法の導入により、生産性が向上しています。

ダクトの種類

ダクトには、まっすぐな直管、曲がったエルボ、サイズが異なるホッパー、Sカーブ、分岐管など、様々な形状があります。厨房排気にはフードが使用され、気流の分岐や合流にはチャンバーが使用されます。

角ダクト

直管: 標準的な矩形ダクト。
エルボ: 角度を変えるためのダクト。
ホッパー: サイズの異なるダクトを接続するダクト。
Sカーブ: 平行な面間でずれを調整するダクト。
分岐管: 複数の方向に分岐するダクト。
フード: 厨房排気用ダクトの吸込口。
チャンバー: 複数のダクトを接続するボックス。
角丸: 角ダクトと丸ダクトを接続するダクト。
閉止板: ダクトの末端を閉鎖する板。

丸ダクト

直管: 標準的な円形ダクト（スパイラル管）。
エルボ: 角度を変えるためのダクト。
レジューサー: サイズの異なるダクトを接続するダクト。
カラー: 角ダクトから丸ダクトを取り出す際に使用する部材。
ニップル: 丸ダクト同士を接続する継手。
分岐管: 複数の方向に分岐するダクト（T管、Y管など）。
閉止カラー: ダクトの末端を閉鎖する部材。

まとめ

ダクトは、建築物における空気の流れを制御し、快適な室内環境を維持するために不可欠な設備です。適切な設計、施工、維持管理を行うことで、効率的な空調、換気、排煙を実現することができます。

参考文献

全国ダクト工業団体連合会　「ダクト教本」

関連項目

建設業
アメリカ暖房冷凍空調学会
* インサート (ねじ)

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