アシュレ

アシュレ (Ashure) - ノアの方舟プディング

アシュレは、多彩な穀物、果物、種実を組み合わせて作られる甘いプディングで、その豊かな味わいが特徴です。通常、祝祭や特別な行事で楽しむ料理であり、かつては冬の間だけに作られていましたが、今日では一年中楽しまれています。

伝統と歴史

アシュレには深い歴史があります。伝説によると、ノアの方舟がアララト山に着陸した際、ノアとその家族が残った食料を使って特別な料理を作りお祝いしたとされています。彼らが用意したのは、残りの穀物やドライフルーツを使ったもので、その料理がアシュレとして今も受け継がれています。オスマン帝国の旅行家エヴリヤ・チェレビは、彼の著書『旅行記（Seyahatnâme）』の中で、アシュレは特定の日に調理されるべきだと記しています。

トルコの家庭では、アシュレを作る際に近所や友人、親戚だけでなく、貧しい人々にも分配することが一般的です。特に、イスラム教の宗教行事であるアーシューラーの期間中によく食べられ、平和と友愛の象徴ともされています。

アルメニアでは、アシュレはクリスマスの伝統的な料理となっており、特に周囲の人々と共に楽しむことが重視されています。この時期、プディングにはドライフルーツや種実で装飾が施され、祝祭のテーブルには欠かせないアイテムとなっています。

材料の多様性

アシュレのレシピは、地域や家庭によって異なりますが、一般に少なくとも7つの種類の材料を使用するとされています。「10番目」の意味を含め、10種類以上の材料を使うことが求められることもあり、一部のアレヴィー派の人々は12つの材料を使うこともあります。基本的な材料には、小麦、大麦、米、白いんげん豆、雛豆、糖蜜、デーツハニー、ザクロ糖蜜などが含まれます。

さらには、乾燥フルーツやナッツも重要な要素です。使用される種類は、デーツ、干しぶどう、リンゴ、イチジク、アプリコット、ピスタチオ、アーモンドなど多岐にわたります。加えて、オレンジやレモンの皮が風味を深めるために使われることもあります。また、アニスやナツメグなどの香辛料が風味付けに使用されることもあり、オレンジ花水やバラ香水で香りを加えるレシピも存在します。

語源

アシュレという名称はアラビア語の「10番目」を指す「Ashura（アシュラ）」に由来しています。この言葉は、料理の特徴や歴史的背景と深く結びついています。アシュレは、食文化の豊かさを体現しており、世代を超えて愛されるお菓子でもあります。

アシュレは、単なるデザートを超えて、友人や家族との絆を深めるための大切な意味を持ち、各地域でのさまざまな作り方が楽しまれています。

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