アームド

アームド：遅咲きの名馬、そして不屈の魂

1940年代、アメリカ競馬界を席巻した競走馬、アームド。その生涯は、決して順風満帆ではなかった。気性の荒さから2歳時に去勢手術を受け、3歳でのデビューは遅れ、初戦こそ圧勝するも、その後は期待に応えることができず、平凡な成績に終わる。クラシック競走への挑戦も叶わず、若駒時代は目立った活躍を見せることなく幕を閉じた。

しかし、転機は4歳時に訪れる。アームドはベン・ジョーンズ厩舎から息子のジミー・ジョーンズ厩舎へ転厩。すると、まるで別馬のように変貌を遂げる。転厩後、まず6連勝という快挙を達成。その後も幾多の強豪を相手に勝利を重ね、数々の重賞競走を制覇していった。シカゴハンデキャップで連勝はストップするものの、ワシントンパークハンデキャップで惜しくもブッシャーに敗れるも、その後も負けじと走り続け、10月のワシントンハンデキャップから再び連勝街道を驀進した。

特に、ピムリコスペシャルステークスでの活躍は特筆に値する。当時、既に名馬として名を馳せていたスタイミーや、新星ギャロレットを一蹴し、アームドは最強馬の座に君臨した。このレースでアームドの潜在能力の高さが証明され、新たな伝説の幕開けを告げたと言えるだろう。

5歳になると、アームドの快進撃はさらに加速する。前年から続く連対を22まで伸ばし、驚異的な安定感を見せつけた。130ポンド(約59kg)以上のハンデを背負いながらも、連戦連勝。サバーバンハンデキャップでは、スタイミー、ポリネシアンら当時の古馬最強クラスと激突するも、アームドは圧勝。スタイミーとの三度目の対戦でも、アームドは勝利を収め、その実力を改めて世に知らしめた。

6歳になると、アームドは円熟期を迎え、まさに全盛期を迎える。ワイドナーハンデキャップ、ガルフストリームハンデキャップ、スターズ&ストライプスハンデキャップ、ワーラウェイステークスで4度のレコード勝ちを達成。そして迎えた9月、ベルモントパーク競馬場で行われたアソールトとのマッチレース。2歳年下の三冠馬アソールトとの対決は、大きな注目を集めた。アソールトは既にスタイミーを幾度となく破っており、アームドにとっては大きな試練となった。しかし、アームドは8馬身差という圧倒的な強さでアソールトを下し、この勝利が決め手となり、アームドは年度代表馬に選出された。このレースはアームドにとって最高の瞬間であり、同時にピークでもあったと言えるだろう。

しかし、このマッチレースを境に、アームドの勢いは徐々に衰えていく。7歳初戦こそ勝利するも、2月の一般戦でサイテーションに敗れ、3年ぶりに掲示板を外すという衝撃的な結果に。その後もサイテーションとの再戦では再び敗北を喫し、故障による長期休養を余儀なくされた。復帰後も9歳まで走り続け、5勝を挙げたものの、ステークスレースでの勝利は掴むことは出来なかった。それでも、引退レースとなった一般戦ではレコード勝ちを収め、華々しい競走生活に幕を閉じた。

アームドの競走成績は、その才能と努力、そして並々ならぬ強靭な精神力を物語っている。気性の荒さというハンデを乗り越え、数々の名馬を相手に戦い抜き、アメリカ競馬界にその名を刻んだ偉大な競走馬、アームド。その生涯は、多くの競馬ファンに感動と勇気を与え続けるだろう。

主な勝鞍
1946年: サバーバンハンデキャップ、ワイドナーハンデキャップ、ワシントンパークハンデキャップ
1947年: スターアンドストライプスハンデキャップ、ガルフストリームパークハンデキャップ、アーリントンハンデキャップ、ワイドナーハンデキャップ（連覇）、ワシントンパークハンデキャップ（連覇）

年度表彰
1946年: 全米最優秀古牡馬
1947年: 全米最優秀古牡馬、年度代表馬

表彰
1963年: アメリカ競馬名誉の殿堂博物館殿堂馬選定
1999年: ブラッド・ホース誌「20世紀のアメリカ名馬100選」第39位選出

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