ウエズド

ウエズド：歴史的行政区画の変遷

ウエズド（уезд）は、キエフ・ルーシ時代から帝政ロシア、ソビエト連邦時代にかけて存在した行政区画です。日本語では「郡」と訳されることもあります。この区画は、時代の変遷とともにその役割や範囲を変化させてきました。本稿では、ウエズドの歴史的背景と変遷について詳細に解説します。

ルーシからピョートル1世まで

ウエズドという用語は、ルーシ時代（キエフ・ルーシなどの諸公国）から使われ始めました。最も古い記録としては、1150年のスモレンスク公ロスチスラフが発した勅令書に見られます。当時、ウエズドはナメストニク（クニャージ・ナメストニク）によって管理され、複数のヴォロスチをまとめる行政単位でした。また、軍事拠点としての役割も担い、オサードと呼ばれる施設が含まれることもありました。

ウエズドの中心都市（ウエズドヌィー・ゴロド）では、ヴォロスチからテャグロと呼ばれる税が徴収されました。ヴォロスチはスタン、さらにオコリツァと細分化されていました。15世紀後半には、ウエズドの概念が拡大し、より広い範囲を指すゼムリャーやオーブラスチとの混同が見られるようになりました。これにより、ウエズドの境界線はしばしば修正されました。

16〜17世紀には、より広範な行政単位であるラズリャドが登場し、ウエズドはその管轄下に置かれました。ラズリャドは中央政府とウエズドとの仲介役を果たしました。17世紀初頭からは、ヴォエヴォダがウエズドの行政・司法を管轄するようになりました。18世紀初頭には、ピョートル1世の行政改革により、ラズリャドはグベールニヤへと改組され、ウエズドを含む行政区画が整理されました。

帝政ロシア期

1775年、エカテリーナ2世の行政改革により、地方組織が大きく再編されました。ピョートル1世時代には、グベールニヤ、プロヴィンツィヤ、ウエズドの三層構造でしたが、この改革でナメストニチェストヴォとウエズドの二層構造になりました。エカテリーナ2世は、人口と面積に基づいてグベールニヤをナメストニチェストヴォに再編し、各ナメストニチェストヴォには10〜12のウエズドが含まれ、各ウエズドの男性人口は2万〜3万人でした。

この行政区画は、ロシア革命まで維持されました（ただし、ナメストニチェストヴォは1796年に廃止）。以降、ウエズドはグベールニヤの構成単位として、行政・司法・財政の最小単位となりました。1889年からは各ウエズドにゼムストヴォが設置され、地方自治が行われるようになりました。刑事事件は当初ヴォエヴォダが管轄していましたが、後にイスプラヴニク（郡警察署長）に移管されました。

ソビエト連邦期

1917年の十月革命後も、ウエズドはしばらくの間用いられましたが、1923年から1929年の行政改革で廃止されました。当初は広範なオクルグが用いられましたが、後にラヨンに代替されました。ただし、エストニア、ラトビア、モルダビアなどのソビエト社会主義共和国では、1940年代にもウエズドが用いられていました。ソビエト連邦における行政区画は、時代や地域によって変遷を繰り返しました。

まとめ

ウエズドは、ルーシ時代からソビエト連邦時代まで、ロシアの歴史において重要な役割を果たした行政区画です。その変遷は、各時代の政治体制や行政改革を反映しており、地域社会の統治構造を理解する上で重要な要素となります。本稿では、ウエズドの歴史的変遷を概観しました。この内容が読者の皆様の理解の一助となれば幸いです。

参考文献

История местного управления в России: Введение. Уезд Московского государства / А. Д. Градовский. Т. 1. — Санкт-Петербург: печатня В. Головина. 1868.

関連項目

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