シュウ酸

シュウ酸 (Oxalic Acid)

シュウ酸（シュウさん、英: oxalic acid）とは、化学式 HOOC–COOH で表される、最も基本的なジカルボン酸です。この化合物は、二つのカルボキシ基が結合した分子であり、IUPAC名ではエタン二酸（ethanedioic acid）と呼ばれています。シュウ酸は1776年にカール・ヴィルヘルム・シェーレによってカタバミから初めて分離され、その名前が付けられました。

この化合物は、植物に多く存在し、日本語の名前の由来にもなっています。シュウ酸という名は、漢字の「蓚」がスイバというタデ科の植物を指し、中国語でも草酸（cǎo suān）として知られています。シュウ酸はカルシウムイオンと強く結びつく特性があり、体内に入ると酸性の血液と反応して結石を形成することがあります。これにより、シュウ酸は日本の毒物及び劇物取締法で劇物に分類されています。

シュウ酸の工業的製法では、木片をアルカリ処理し、そこからシュウ酸を抽出します。実験室での合成法としては、シュウ酸ナトリウムを分解した後、水酸化カルシウムを加えることでシュウ酸カルシウムを得て、さらに硫酸を加えてシュウ酸に戻します。また、エチレングリコールやグリオキサールを酸化することで生成する方法もあります。

化学的性質

シュウ酸は無色の固体で、常温では安定していますが、189.5℃で分解し、ギ酸や二[[酸化炭素]]を生成します。吸湿性があり、湿気の多い空気中では二水和物を形成します。また、水溶液から析出した二水和物は、加熱することで乾燥し、無水物として得られます。

シュウ酸は酸としての性質を有し、水中では電離して二価の酸として働きます。具体的には、0.1 mol/dm³ の水溶液で約60%の電離度を示します。そのため、分析化学において中和滴定や酸化還元滴定の標準物質としても利用されます。

シュウ酸イオンとその塩

シュウ酸は、第一段階でシュウ酸水素イオン（HC2O−4）、第二段階でシュウ酸イオン（C2O−4）に電離します。シュウ酸イオンは平面型の構造を持ち、炭素—酸素間の結合は共鳴による性質を持っています。また、シュウ酸を含む塩類として、シュウ酸塩（oxalate）やシュウ酸水素塩（hydrogenoxalate）が存在します。これらの塩は、特にアルカリ金属塩やアンモニウム塩などが多く、水に溶けやすい性質を持っています。

食品と健康

シュウ酸は多くの植物に存在し、特にタデ科やカタバミ科の植物に多く含まれます。食用の野菜には、ほうれん草やショウガ、パセリなどがあり、それぞれ100gあたりシュウ酸を含む量は異なります。また、過剰な摂取は結石の原因となることがありますので、注意が必要です。逆に、カルシウムと共に摂取することで、シュウ酸はカルシウムと結びつき体内への吸収を抑えることができます。

シュウ酸は、皮膚に針状結晶として触れると刺激を引き起こすことがあります。密閉された環境では、蒸気として吸入される可能性があり、注意が必要です。さらに、シュウ酸を含む飲食品が原因で中毒事件が発生したこともあり、適切な取り扱いや注意が求められます。

分解と利用

自然界にはシュウ酸を分解できる微生物が存在しており、特に枯草菌やエノキタケ、コウジカビなどがその代表です。

シュウ酸は、化学的な特性から分析化学や工業的な応用に広く使われています。全体として、シュウ酸は自然界に多く存在する重要な有機化合物であり、その性質や利用法は多岐にわたります。

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