スペアミント

スペアミント（英語: Spearmint）は、ハッカ属の多年草であり、古くからハーブとして利用されてきました。標準和名であるオランダハッカ（学名: Mentha spicata 'Crispa'）の別名としても知られています。ペパーミントよりも歴史が古く、聖書に登場するハッカはスペアミントの一種であるナガバハッカ（Mentha longifolia）であるとも言われています。ちなみに、ペパーミントはスペアミントとウォーターミント（M. aquatica）の交配種です。

特徴

原産は地中海沿岸で、ヨーロッパ各国やアメリカ合衆国などで栽培されています。日本でも、かつては北海道の北見地方で精油を目的とした栽培が行われていました。

スペアミントは多年生草本で、冬には地上部が枯れます。草丈は30 - 60 cm程度と、ペパーミントよりも低いです。全体的に無毛で、葉は短い葉柄を持ち、対生します。葉身は槍の穂先のような形をした長楕円形で、長さは約5 cm。葉の縁には鋸歯があります。葉脈はペパーミントほどはっきりしていません。花期は夏から秋にかけて（6 - 8月頃）で、茎の先端に長さ5 cm程度の花穂を伸ばし、白から淡紫色の小さな花を多数つけます。花穂はペパーミントよりも細長いのが特徴です。不稔性であることが多く、主に地下茎で繁殖します。

分類

スペアミントと呼ばれる植物には、いくつかの種類があります。

Mentha spicata (syn. M. viridis)：ミドリハッカ、オランダハッカ。濃緑色をしていることからミドリハッカ、江戸時代にオランダから伝来したことからオランダハッカと呼ばれます。ネイティブ種とも呼ばれます。
M. spicata var. crispa：チリメンハッカ、カーリーミント。葉が縮れているのが特徴です。
Mentha × gracilis (syn. M. × gentilis or M. cardiaca)：ジンジャーミント、スコッチ種。M. spicataとコーンミント（M. arvensis）の交配種とされ、葉と茎の間から短い花穂が多数出ます。
M. longifolia (syn. M. silvestris)：ナガバハッカ、ケハッカ、ホースミント。葉に毛があります。

ハッカ属は交雑しやすく、形質の遺伝が不安定なため、外見からの正確な分類は困難です。M. longifoliaをM. viridisの一変種とする説もあります。

オランダハッカ

オランダハッカ（学名: Mentha spicata 'Crispa'）は、シソ科ハッカ属の多年草で、ヨーロッパが原産です。チリメンハッカ、スペアミント、カーリーミントとも呼ばれます。中国名は皺葉留薄荷。無毛で葉先が鈍い無柄の葉と、隙間のない花穂が特徴です。

全草に独特の香りがあり、ほとんど無毛です。茎は四角形で、草丈は30 - 50 cmになります。葉は無柄で、葉身は先が鈍く、基部が円形から浅いハート形になり、葉縁に低い鋸歯があります。葉面はやや光沢があり、葉脈が細脈まで凹んで皺のようになります。

花期は夏で、花序は10個ほどの花が輪生状に密集してつく花輪となり、花輪と花輪の間は連続して境目は不明瞭です。包葉は小さくて目立ちません。花は短い柄を持ち、萼はほぼ無毛で先が5裂し、裂片は三角形です。花冠は淡紫色から淡紅紫色、または白色で、深く4裂します。雄蕊と雌蕊は共に花口よりも長く突き出します。果実（分果）は球形で光沢がない淡褐色です。

日本では江戸時代の『草木図説』に図の記載があり、白井光太郎の『植物渡来考』（1929年）によると、文政年間に宇田川玄真・大槻玄沢の建言によりオランダから盆栽を取り寄せて移植したとされています。現在は日本全国に帰化しており、特に九州に多いと言われています。

用途

ハーブとして、葉を料理や紅茶、菓子などに添えて用いたり、香料や入浴剤として使われます。精油は、甘く爽やかな香りがチューインガムや歯磨き粉のフレーバーに利用されます。

栽培

主な産地はアメリカ合衆国の五大湖沿岸西部および太平洋岸北部です。アメリカにスペアミントを運んだのはピルグリム・ファーザーズであるとされていますが、大規模な栽培はチューインガムなどの用途が開発されてから行われるようになりました。最も精油の品質が良いとされる開花直前に地上部を刈り取り、水蒸気蒸留で精油を生産します。実生は親株とは異なる形質を持つことが多いため、増殖は地下茎の株分けで行います。

栽培品種にはネイティブ種とスコッチ種がありますが、ネイティブ種は霜害などに強いものの、香味や精油の含有量ではスコッチ種に劣ります。そのため、現在アメリカで栽培されているのはほとんどがスコッチ種です。葉や茎の色、葉の形には変異があり、葉がちりめん状になるものはオランダハッカまたはチリメンハッカと呼ばれています。

精油

スペアミント精油は、アメリカで年間約2000トンの生産量があります。植物体に対する精油の収率は0.6 - 0.7%です。主な成分は（R）-l-カルボンで60 - 70%を占め、次いで（R）-l-リモネンが多く10 - 20%を占めます。リモネンは柑橘類から得られるものとはエナンチオマーの関係にあり、その供給源としても重要です。その他に、ピネン、フェランドレンが含まれています。

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