タイル

タイル：歴史、種類、そして未来

はじめに

タイルは、古くから建築資材として用いられてきた素材です。石や粘土を高温で焼き上げた後に釉薬を施すことで、耐久性と美しさを兼ね備えたタイルは、時代を超えて人々の生活に彩りを添えてきました。この記事では、タイルの歴史、種類、用途、製造方法、そして主要メーカーまで、多角的にタイルの世界を探ります。

タイルの歴史

タイルの語源は、ラテン語で「ものを覆う」という意味を持つ「テグラ」に由来すると言われています。紀元前2700年、エジプトのサッカラの階段ピラミッドで発見された青釉のタイルは、現存する最古のタイルと考えられています。日本には6世紀に伝来し、当初は仏教寺院の敷瓦などに用いられていましたが、鎌倉時代から桃山時代にかけては、茶道具などの装飾品としても使用されるようになりました。1922年、全国タイル業者大会で「タイル」という名称が統一され、以降、建築材料としてのタイルの普及が加速しました。特に、大正7年のスペイン風邪流行後や関東大震災後の復興需要を背景に、衛生的な素材として銭湯や公衆便所への採用が進みました。

タイルの種類と用途

タイルは、材質、形状、用途によって様々な種類があります。

材質: 陶磁器、コンクリート、プラスチック、大理石など

形状: 正方形、長方形、六角形、八角形、不規則形など。モザイクタイルのような小さなものから、大きなものまで、様々なサイズが存在します。

用途: 建築物の外装・内装、床・壁、モザイク画、陶板複製画、宇宙船の外装など。陶磁器製のタイルは浴室やキッチンなどの水回り、コンクリート製のタイルは歩道などの舗装、プラスチック製のPタイルはオフィスなどの床などに用いられます。近年では、漆喰を用いたタイルなども開発されています。

タイルの製造と技術

陶磁器製のタイルは、高温の窯で焼成されます。かつては長さ100メートルにも及ぶトンネル窯で2日以上かけて焼成されていましたが、現代ではコンパクトな窯と高度な温度管理技術により、数時間で均一な仕上がりのタイルを製造できるようになりました。しかし、その一方で、昔ながらのタイルのような微妙な色の違いは再現が難しくなっています。

タイルの施工は、一枚ずつ接着剤やモルタルで固定する必要があるため、熟練の技術を要します。そのため、あらかじめシート状にタイルが敷き詰められた製品も製造されています。

世界のタイル文化

中世ヨーロッパやイスラム世界では、精巧な装飾が施されたタイルが作られてきました。イスラム世界のタイルは、幾何学模様やアラベスク模様、コーランの文字などが特徴です。ヨーロッパでは、15～16世紀にスペインのトレドやセビーリャがタイル生産の中心地として栄え、クエルダ・セカ様式やクエンカ様式などが発展しました。また、オランダのデルフトウェアなど、各地域独自のタイル文化が形成されてきました。

建築とタイル

建築において、タイルは外装材、内装材として広く用いられています。

建築用陶磁器タイル: 陶磁器製のタイルは、吸水率によって陶器質、炻器質、磁器質タイルに分類されます。優れた防水性と耐久性を持ち、外壁や水回りなどに使用されます。

吹き付けタイル: 合成樹脂を混合したモルタルを吹き付けて仕上げる工法で、公共建築物や住宅などで幅広く用いられています。

内装用デザインタイル: 浴室、キッチン、トイレなどの内装材として、ガラスタイル、タイルカーペット、コルクタイルなど様々なデザインタイルが使用されています。

タイルの未来

近年、環境問題への配慮から、リサイクル可能なタイルや、省エネルギー性能の高いタイルの開発が進められています。また、デジタル技術を活用したデザイン性の高いタイルや、機能性を向上させたタイルなども登場しています。タイルは、これからも建築やデザインの分野で重要な役割を果たし続けるでしょう。

主なタイルメーカー

LIXIL、TOTO、名古屋モザイク工業、INAXなど

参考文献

ノエル・ライリー, 椋田直子『タイル・アート 世界の壁面を飾った小さな美術品』美術出版社
日本のタイル工業史 編集委員会 『日本のタイル工業史』 株式会社INAX
* 藤森照信（監修）、佐藤恵美、坂井基樹+田中真利[坂井編集企画事務所] (編)、『タイル 名称統一 100 周年記念 日本のタイル 100 年 美と用のあゆみ JAPANESE “TILE” A Century of Beauty and Utility』、INAX ライブミュージアム

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