チクシュルーブ・クレーター

チクシュルーブ・クレーター：恐竜絶滅の痕跡

チクシュルーブ・クレーターは、メキシコのユカタン半島北部に位置する、約6604万年前に形成された巨大なクレーターです。このクレーターは、小惑星が地球に衝突した痕跡であり、その規模は地球上で3番目に大きいとされています。特に、顕生代（約5億4200万年前以降）に形成されたものとしては最大級であり、地球の歴史において重要な出来事の証拠となっています。クレーターの名称は、中心付近の地名に由来し、マヤ語で「悪魔の尻尾」という意味を持っています。

クレーターの発見と特徴

チクシュルーブ・クレーターは、その中心が海洋にあるため、目視での確認が困難です。そのため、衛星画像、地磁気や重力異常、そして周辺に点在するセノーテ（陥没穴）の分布によって確認されました。これらの特徴は、いずれも円弧を描いており、その中心が衝突の中心とされています。クレーターの直径は約160kmとされており、地球上で3番目の規模を誇ります（フレデフォート・クレーター、サドベリー・クレーターに次ぐ）。

このクレーターの発見は、白亜紀末の大量[[絶滅]]（K-Pg境界）の原因を解明する上で重要な役割を果たしました。1977年、ウォルター・アルヴァレスがイタリアでK-Pg境界を発見したことから、世界中でK-Pg境界の調査が進められました。この地層を境に、恐竜を含む生物の化石の種類が激変しており、K-Pg境界には多量のイリジウムが含まれていることが判明しました。イリジウムは、地球の地殻には少ない元素であり、小惑星の衝突によってもたらされたと考えられています。この発見から、小惑星の衝突が大量[[絶滅]]の原因であるという仮説が有力になりました。

衝突の規模と影響

2010年に発表された研究によると、衝突した小惑星（チクシュルーブ衝突体）の大きさは直径10〜15km、衝突速度は約20km/秒と推定されています。この衝突時のエネルギーは、広島型原子爆弾の約10億倍に相当するとされています。また、衝突地点付近で発生した地震の規模はマグニチュード11以上、生じた津波は高さ約300mにも達したと推定されており、地球環境に甚大な影響を与えたと考えられています。

発見の経緯

1978年頃、メキシコの石油会社ペメックスで地磁気の調査を行っていたグレン・ペンフィールドは、ユカタン半島で円弧状の異常なパターンを発見しました。ペンフィールドは、重力分布データと合わせて地図に記したところ、チクシュルーブの村を中心とする円を描いていることに気づきました。また、付近の採掘井戸からイリジウムを含む安山岩が発見されたことも、このクレーターが小惑星衝突によって形成されたという考えを支持しました。

1990年、ヒューストン・クロニクルの記者カルロス・バイアーズが、ペンフィールドが以前にクレーターを発見していたことを知ったアラン・ラッセル・ヒルデブランドは、その岩石を調査し、強い衝撃によって変成した物質であると結論付けました。1996年には、周辺地域の衛星画像を調査した結果、チクシュルーブを中心としたセノーテ（陥没穴）の環状列が発見され、クレーターの存在が確固たるものとなりました。

より最近の研究では、クレーターの直径は約300kmである可能性も示唆されており、その内壁は約180kmのリング状であることが示されています。また、2021年には、クレーターのピークリング地点でイリジウム濃度の上昇が確認され、小惑星衝突仮説をさらに裏付けています。

衝突体の起源

チクシュルーブ・クレーターを形成した小惑星の起源については、様々な仮説が提唱されています。1998年には、白亜紀-古第三紀境界の堆積物から、チクシュルーブ衝突体の破片と考えられる隕石が発見されました。この隕石の分析から、チクシュルーブ衝突体が炭素質コンドライトである可能性が示唆されています。

2007年には、小惑星帯での衝突によって生成された天体が衝突体であるとする説が発表されました。この説では、チクシュルーブ衝突体は直径約170kmの親天体の破片であるとされています。しかし、2011年の観測データにより、衝突体の起源となった小惑星帯の衝突は、チクシュルーブ・クレーターが形成された時期よりもはるか昔に起こったものである可能性が示唆されています。

その後、新たな研究により、衝突体は小惑星ではなく、破壊された彗星の破片である可能性も浮上しました。しかし、この説に対しては、地球全体に堆積したイリジウムの量や、地球化学的証拠から反論がなされており、衝突体が炭素質コンドライトである可能性が有力視されています。

2021年の研究では、数値シミュレーションに基づいて、衝突体は小惑星帯の外側から発生した可能性があるとされています。

まとめ

チクシュルーブ・クレーターは、小惑星の衝突という地球史における重要な出来事の証拠であり、恐竜を含む大量[[絶滅]]の原因を解明する上で重要な役割を果たしました。このクレーターの研究は、地球の歴史と宇宙の相互作用を理解する上で、今もなお重要な意味を持っています。

参考文献

恐竜絶滅は小惑星の衝突が原因、国際チームが発表 AFPBBニュース
Chicxulub - Earth Impact Database
『チチュルブクレーター』 - コトバンク

関連項目

K-Pg境界
ウォルター・アルバレス
大量[[絶滅]]
クレーター
フレデフォート・ドーム
バティスティーナ小惑星群
シバ・クレーター

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