フォリー

フォリー：庭園を彩る装飾建築物の魅力

西洋の庭園を彩る装飾建築物、フォリー。居住空間や雨風をしのぐといった実用的な用途を持たない、純粋に装飾を目的とした建築物です。一見すると神殿や廃墟、寺院など、様々な文明の象徴物を模したものが多く見られます。フォリーという名称は、本来「愚行」を意味する英単語ですが、ここでは悪意のない、陽気な遊び心から生まれた建築様式を表しています。

フォリーの特徴：実用性ゼロの装飾美

フォリーは、彫刻などの装飾物とは異なり、建築物、あるいは建築物の一部として存在します。その最大の特徴は、装飾以外の用途を持たない点です。雨や日差しをしのぐ東屋（ガゼボ）などは、建築としての機能を持つため、フォリーとは分類されません。また、既存の建築物を転用したものではなく、最初から装飾目的で意図的に建造される点が重要です。

フォリーのデザインは多様性に富み、風変わりな形状や細部を採用することで人目を惹きつけます。古代神殿や家屋を模した偽物の要素を含んでいることも多く、特に廃墟を模したフォリーは、時間の経過によって廃墟となったかのように見せる巧妙なデザインが特徴です。

ただし、フォリーの概念は必ずしも明確ではありません。空想的な奇抜な建築物、あるいは実用性のない建築物と混同される場合もあります。しかし、単なる奇抜さやばかばかしさだけがフォリーの定義ではありません。例えば、ドーナツやアヒルの形をしたドライブインは、奇抜なデザインではありますが、実際に機能する商業施設であるため、フォリーとは異なります。

また、幻想的な外観の建物や宣伝目的の建築物、奇抜な豪邸や宮殿なども、フォリーと混同されやすいものの、それらはフォリーとは明確に区別されます。幻視者による建築物も、フォリーとの区別が曖昧な場合がありますが、フォリーが遊び心から生まれた装飾建築であるのに対し、それらは建築家の真剣な意図に基づいて作られた点が異なります。遊園地や展覧会場の装飾建築も同様で、実際に機能しているものはフォリーとはみなされません。

フォリーの歴史：18世紀の庭園装飾から現代アートまで

フォリーの歴史は古く、16世紀末から17世紀にかけて、大邸宅の庭園装飾として登場しました。18世紀から19世紀には全盛期を迎え、フランスやイギリスの貴族の庭園には、ローマ時代のヴィラや中世の修道院を模したフォリーが数多く建てられました。これらのフォリーは、庭の眺望を効果的に演出するだけでなく、古代ローマや田園生活といった失われた時代の美徳を象徴する思索的な意味も持っていました。

18世紀のイギリス式[[庭園]]やフランス式庭園では、古代ローマやギリシャ風の神殿、ゴシック建築の廃墟、エジプト式のピラミッドなどがフォリーとして造られました。また、クロード・ロランやユベール・ロベールといった風景画家たちの作品を模したフォリーも存在しました。フォリーは単なる装飾にとどまらず、隠者などを雇い、庭園内に住まわせることで、思索や鑑賞の場として機能していました。

18世紀後半以降は、ロマン主義やピクチャレスクの概念の高まりとともに、廃墟風のフォリーが盛行しました。18世紀末から19世紀にかけては、中国の仏塔や日本の橋など、より異国的なフォリーも登場しました。アイルランド飢饉の際にも、貧困層の雇用対策としてフォリーが建設された例があります。

20世紀後半以降も、公共の公園などに現代建築家や現代美術家によってフォリーが制作されています。ベルナール・チュミの設計したラ・ヴィレット公園や、1990年の国際[[花と緑の博覧会]]に出展されたフォリーなどがその例です。

フォリー：装飾を超えた多様な表現

フォリーは、単なる装飾建築物という枠を超えて、時代や文化、そして個々の建築家の思想や創造性を反映した多様な表現方法として、今日まで受け継がれています。庭園の装飾としてだけでなく、社会状況や芸術思想を反映した存在として、フォリーはこれからも人々を魅了し続けるでしょう。

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