マラリア

マラリアについて

概要

マラリアは「悪い空気」を意味する古いイタリア語に由来し、熱帯から亜熱帯に広く分布する感染症です。主にハマダラカが媒介するマラリア原虫（Plasmodium spp.）によって引き起こされ、原虫の種により5種類（熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア、サルマラリア）が存在します。感染者は毎年、全世界で約2.16億人、死者は約44.5万人に達するともいわれています。

様々な症状

マラリアに感染すると、1週間から4週間の潜伏期間を経て、激しい発熱、高熱が続きます。特に熱帯熱マラリアにかかると、合併症として脳マラリアが発生することがあり、意識障害や腎不全を引き起こします。特に三日熱マラリアは48時間ごと、四日熱マラリアは72時間ごとに高熱を繰り返す特徴がありますが、熱帯熱マラリアは必ずしもこのような熱の周期性が見られません。

症状としては、悪寒、頭痛、筋肉痛、嘔吐、下痢などが現れ、重篤になると意識障害を伴うこともあります。マラリアが放置されると慢性化する可能性があり、治療開始が遅れることで感染が悪化してしまうため、すぐに医師の診断を受けることが重要です。

合併症とその影響

最も深刻な合併症である脳マラリアは、血流が阻害されることで意識の低下や神経症状を引き起こすことがあります。また、黒水熱と呼ばれる急性の溶血により、ヘモグロビン尿や黄疸が現れることもあります。特に妊娠中の女性が感染することで、胎児に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

原因と生活環

マラリア原虫は、蚊による媒介で伝播され、体内で肝細胞や赤血球に侵入し繁殖します。感染した蚊から吸血された際に毒素と共に体内に侵入し、これが感染の引き金となります。ハマダラカ（Anopheles spp.）がこの媒介者であり、アフリカや東南アジアなど特定の地域で多く発生します。

予防と対策

マラリアは、感染を防ぐために防蚊対策が不可欠です。特に蚊帳の使用や虫除けスプレーは有効です。 ワクチンも開発が進んでいますが、マラリアに対する有効なワクチンはまだ広く実用化されていない状況です。また、薬剤に対する耐性も報告されており、新しい治療法や対策の研究が進められています。

世界的な影響

マラリアは「世界三大感染症」の一つとされており、世界保健機関（WHO）は毎年4月25日を「世界マラリアデー」と定め、感染抑制の啓発活動しています。かつては日本を含む多くの地域でも流行していましたが、現在は輸入感染症として年に60例程度の報告がなされています。

日本における状況

古典文学にも登場し、過去には多くの患者を出した日本では、戦後急激に減少し、1959年に滋賀県彦根市において最後の土着患者が確認されて以降、根絶されています。今でも海外帰国者を通じた感染例が見られるため、適切な対策と情報の普及が重要です。

終わりに

マラリアは予防が可能な感染症ですが、適切な措置が取られない場合、致命的な結果を招く恐れがあります。継続的な研究と公衆衛生への取り組みが求められています。

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