メグスリノキ

メグスリノキ（目薬の木）について

メグスリノキ（学名: Acer maximowiczianum）は、日本固有種のカエデ科の落葉高木です。別名としてチョウジャノキ、センリガンノキ、ミツバナなどとも呼ばれ、山地に自生しています。特に、その名の由来となった目の病気への効能と、特徴的な紅[[葉]]の美しさで知られています。

名称の由来と多様な呼び名

和名「メグスリノキ」は、目の病気に効果があるとされたことに由来します。樹皮を煎じて洗眼薬として使っていたことから、「目薬の木」と呼ばれるようになりました。地域によっては、センジュノキ、チョウジャノキ、センリガンノキ、ミツバカエデ、ミツバハナ、メアライノキなど、様々な別名で親しまれています。中国では「毛果槭」と呼ばれています。

分布と生育環境

メグスリノキは日本固有の樹木であり、本州（宮城県・山形県以南）、四国、九州に分布しています。宮城県南部が北限とされ、主に標高700m付近の山地に生育していますが、個体数は比較的少ないのが現状です。

形態と生態

落葉広葉樹の小高木から高木で、樹高は5mから25mに達します。樹皮は灰色から灰褐色で滑らかですが、成長とともに縦に細かい筋が入り、割れてきます。若い枝には毛が多いのが特徴です。葉は、3枚の小葉からなる3出複葉で、長さは5cmから13cm程度です。小葉は楕円形で、縁には低くて鈍い鋸歯があります。葉柄や葉の裏側には剛毛が密生しています。秋には赤く紅[[葉]]し、その美しい姿は多くの人々を魅了します。

花期は5月で、雌雄異株です。春の芽吹きと同時に、枝先に2～3個の花を咲かせます。果実は翼果で、長さ4～5cmと大きく、ブーメランのような形をしており、毛が密生しています。冬芽は長楕円形で褐色の鱗芽で、多数の芽鱗が重なり合っています。葉痕はV字形で、維管束痕は5～11個と、カエデ類としては珍しく多く見られます。

利用方法

メグスリノキは、その紅[[葉]]の美しさから庭木として利用されることがあります。また、樹皮、小枝、葉を乾燥させたものを煮出して、健康茶として利用されています。特に、目の疲れや肝臓の調子を整える効果があるとされ、古くから民間療法で用いられてきました。春から夏に採取した葉は、生のまま天ぷらとして食べることもできます。室町時代から江戸時代初期にかけては、点眼薬や洗眼薬としても利用され、全国的に知られていましたが、明治時代以降、西洋医学の普及とともに忘れられていました。近年、フジグリーン社が商品化を行い、再び注目を集めています。

メグスリノキの効用

メグスリノキの樹皮には、ロドデンドロール、エピロドデンドリン、トリテルペン、タンニン、ケルセチン、カテキンなど、多くの有効成分が含まれています。これらの成分が、眼病予防、視神経活性化、肝機能改善などの効果をもたらすことが研究で明らかになってきています。また、近年の研究では、肝障害防護効果、アルドース還元酵素活性阻害作用、メラニン産生抑制効果、抗炎症作用など、様々な効用が証明されていますが、そのメカニズムはまだ解明されていない部分も多いです。

民間療法における活用

民間療法では、メグスリノキの枝葉が薬用として用いられています。かすみ目、目の充血、緑内障、肝炎などの症状に効果があるとされ、春から夏にかけて採取した樹皮や小枝を乾燥させ、煎じて服用したり、洗眼に利用したりします。独特のにおいがあり、慣れないと飲みにくいと感じる人もいるようです。しかし、メグスリノキだけで眼圧が下がる場合も多く、肝炎にも効果があるといわれています。

著名なメグスリノキ

福島県喜多方市には、樹齢300年を超える「杓子が入メグスリノキ」と呼ばれる巨木があり、「森の巨人たち100選」にも選定されています。その幹周は4.1m、樹高は20mにも達します。

関連文献

メグスリノキに関する記述は、李家正文の『草根木皮の博物誌』や、司馬遼太郎の小説『播磨灘物語』などにも見られます。特に『播磨灘物語』では、戦国時代の武将・黒田如水の祖父がメグスリノキを原料とした目薬で財を成したという逸話が描かれています。

まとめ

メグスリノキは、古くから日本の人々の健康を支えてきた貴重な樹木です。その目の病気に対する効能は広く知られていましたが、近年では、肝機能改善など、様々な効果が科学的に証明されつつあります。美しい紅[[葉]]も魅力で、庭木としても楽しむことができます。今後もメグスリノキの研究が進み、その更なる可能性が明らかになることが期待されます。

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