ヴェルンドの歌

ヴェルンドの歌：職人の復讐譚

「ヴェルンドの歌」（古ノルド語: Vǫlundarkviða）は、古エッダに収められた重要な神話詩の一つです。この詩は、卓越した技術を持つ職人ヴェルンドの物語を中心に展開されます。ヴェルンドは単なる職人ではなく、「妖精の王子」や「妖精のリーダー」とも呼ばれる、神秘的な存在として描かれています。

あらすじ

物語は、ヴェルンドがフィンの王の息子の一人であるという背景から始まります。彼の妻はヴァルキュリャであるヘルヴォル・アルヴィトでしたが、9年後、彼女はヴェルンドのもとを去ります。その後、ヴェルンドは黄金に目がくらんだスウェーデンのニーズス王に捕らえられてしまいます。

ニーズス王はヴェルンドの才能を利用するため、彼の膝の腱を切り、島にある工房に閉じ込めます。ヴェルンドはそこで王のために様々な品物を作ることを強制されます。しかし、ヴェルンドは絶望することなく、復讐の機会を伺いながら脱出の計画を練ります。

ヴェルンドは最終的に脱出する方法を見つけ出します。その過程で、彼はニーズス王の息子たちを殺害し、王の娘を妊娠させます。そして、復讐を果たしたヴェルンドは、高らかに笑いながら空へと飛び去っていくのです。

詩の魅力

「ヴェルンドの歌」は、その生き生きとした描写に特徴があります。ヴェルンドの苦しみ、復讐への執念、そして最後に自由を掴む姿は、読者の心に強く訴えかけます。詩は、ヴェルンドの心理描写や、彼が置かれた状況を鮮やかに描き出し、読者を物語の世界へと引き込みます。

ヴェルンドの神話

ヴェルンドの神話は、ゲルマン民族の間で広く知られていたと考えられています。この物語は、『シズレクのサガ（ヴェーレントの話）』や、古英語詩「デオールの嘆き」にも言及されています。また、7世紀のアングロ・サクソン族のフランクスの小箱や、ゴトランド島にある8世紀のアードレの絵画石碑にも、ヴェルンドの物語が描かれています。これらのことから、ヴェルンドの神話が、当時の人々の生活や文化に深く根ざしていたことがわかります。

詩の保存

「ヴェルンドの歌」は、王の写本の神話詩の中に完全に保存されています。また、散文による序詞がAM 748 I 4to断片にも見られます。これらの資料から、「ヴェルンドの歌」が中世の写字生によって大切に保存され、伝えられてきたことがわかります。

「ヴェルンドの歌」は、単なる神話物語にとどまらず、人間の創造性、逆境に立ち向かう力、そして復讐のドラマを描いた傑作です。この詩は、現代の読者にとっても、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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