ヴォルヴァドス

ヴォルヴァドス：謎めいた古代の神性

クトゥルフ神話において、ヴォルヴァドスは特異な存在感を放つ神性です。クトゥルフ、イグ、イオドといった他の旧神々と共に、太古のムー大陸で崇拝されていたとされています。しかし、それら他の神々と異なり、ヴォルヴァドスは人類に対して友好的な態度を示すことで知られています。

その初出はヘンリー・カットナーの小説です。作品内では、「ヤルナクの灰白湾のヴォルヴァドス」や「ベル＝ヤルナクのヴォルヴァドス」といった呼び名で登場し、「炎を焚きつけるもの」という別名も持ちます。ベル＝ヤルナクとは、ベテルギウスの彼方にある架空の都市であり、その都市の首長は代々ヴォルヴァドスを崇拝する伝統を持っています。興味深いことに、首長以外の人々がヴォルヴァドスを信仰することはないとされています。

カットナーの小説『魂を喰らうもの』では、人々の魂を喰らう恐るべき魔神が出現した際に、ヴォルヴァドスは都市の首長に助言を与えています。しかし、自ら魔神と戦うことはありませんでした。その理由として、ヴォルヴァドスは「神に打ち勝つのは神ではなく、神を創った人である」という考えを示唆しています。このエピソードは、ヴォルヴァドスの力の行使方法や、人間との関わり方について重要な示唆を与えてくれます。

一方、リン・カーターの小説『深淵への降下』では、ヴォルヴァドスがヤルナクでかつて大きな力を振るっていた存在、ムノムクアを追い払ったという記述が見られます。この記述は、ヴォルヴァドスの力と影響力の広さを示す重要な証拠と言えるでしょう。ムノムクアはカーターが創造した神であり、ヴォルヴァドスとは対照的な存在として描かれています。

さらに、リン・カーターの『クトゥルー神話の神神』では、ヴォルヴァドスは地球本来の神々に分類されています。しかし同時に、「旧支配者の炎の精に属すかもしれない」という曖昧な記述も添えられています。この記述は、ヴォルヴァドスの本質に関する謎をさらに深めるものとなっています。クトゥルフ神話TRPGでは、旧神というカテゴリに分類されていますが、その性質は依然として多面的で、解釈の余地を残しています。

このように、ヴォルヴァドスは複数の作家によって異なる側面から描かれており、その存在像は多面的で複雑です。人類に友好的な一方で、旧支配者との繋がりも示唆されるその神秘的な性質は、クトゥルフ神話における重要な謎の一つとして、多くの読者や研究者を魅了し続けています。様々な解釈が可能なその存在像は、クトゥルフ神話の世界観を豊かに彩る重要な要素と言えるでしょう。ヴォルヴァドスを取り巻く謎は、今後も多くのクトゥルフ神話ファンを惹きつけ続けることでしょう。

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