三峡ダム

三峡ダム：長江にそびえる巨大プロジェクト

三峡ダムは、中国の長江中流域に位置する巨大なコンクリートダムです。1993年に建設が開始され、2009年に完成しました。このダムは、洪水調節、電力供給、そして水運の改善という三つの主要な目的を掲げて建設されました。また、世界最大の水力[[発電]]所を併設しており、中国のエネルギー需要を支える重要なインフラとなっています。

三峡ダムの概要

三峡ダムは、長江三峡の中でも最も下流に位置する西陵峡に建設されました。ダムによって作られた貯水池は、上流の重慶市から下流の宜昌市にかけて約660kmに及びます。このダムの建設によって、以前は小型船しか航行できなかった長江が、1万トン級の大型船も遡上できるようになりました。また、水力[[発電]]所は中国の年間消費エネルギーの約10%を供給する能力を持ち、電力不足の解消に大きく貢献しています。さらに、火力[[発電]]に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、環境負荷の低減にも繋がっています。

しかし、その一方で、ダム建設に伴う住民の強制移住、歴史的建造物の水没、水質汚染、生態系への悪影響など、多くの問題も指摘されています。建設の是非をめぐっては、当初から様々な意見があり、議論を呼びました。

ダムの詳細

• - 通常水位: 175.0 m
• - 右岸発電ブロックの長さ: 584.2 m
• - 放水ブロックの長さ: 483.0 m
• - 左岸発電ブロックの長さ: 643.6 m
• - コンクリートの使用量: 2700万 m3
• - ダム湖の長さ: 約570 km
• - 通常水位: 標高175 m
• - 年間発電量: 1000億 kWh
• - 発電機の数: 32基
• - 1基の発電能力: 70万 kW

歴史

三峡ダムの構想は、1919年に孫文が提唱したことに遡ります。しかし、戦争や内戦によって計画は頓挫しました。中華人民共和国成立後、1950年に長江水利委員会が設置され、調査が開始されました。その後、中ソ対立や文化大革命、建設反対論などが起こり、計画は一時中断されました。

文化大革命終結後、計画は再浮上し、1983年には事業化調査報告が提出されました。1989年には、反対派の意見を掲載した書籍が出版され、全人代での議論にも影響を与えましたが、天安門事件の影響で反対論は抑制され、建設賛成論が強まりました。

1992年、全人代で建設が採択され、翌年から住民移住が始まりました。1993年には建設事業主体が設立され、1994年に本格的な工事が開始されました。2003年には一部貯水と発電が始まり、2006年にダム本体が完成、2009年に全プロジェクトが完了しました。2012年には発電所が全面稼働を開始しました。

年表

• - 1919年: 孫文が三峡ダム建設プロジェクトを提唱
• - 1950年: 長江水利委員会が設置され、予備調査を開始
• - 1956年: 調査完了、1963年着工方針発表
• - 1983年: 三峡ダム事業化調査報告提出
• - 1989年: 建設反対派の意見を掲載した書籍が発禁となる
• - 1992年: 全人代で三峡ダム着工を採択
• - 1993年: 長江三峡工程開発総公司が設立
• - 1994年: 本工事開始
• - 1997年: 第一期工事完成
• - 2003年: 第二期工事完成、湛水、水力[[発電]]の一部稼働
• - 2006年: 三峡ダム本体竣工
• - 2009年: 完成
• - 2012年: 水力[[発電]]の本格稼働開始
• - 2020年: 長江大洪水で、ダムの水位が最高水位を記録

プロジェクトを推進した政治家

当時の中国指導部には、技術者出身のテクノクラートが多く、三峡プロジェクトを強力に推進しました。しかし、2006年の完工式には、最高指導部は誰も出席せず、その背景が注目されました。

利点

治水と干ばつ対策

三峡ダムの最大の目的は、長江の洪水を抑制することです。ダムは、洪水期には水位を下げて貯水量を増やし、洪水時には水を一時的に貯めて下流への影響を軽減します。また、貯水した水を渇水期に放出することで、干ばつ対策にも貢献しています。

水運

ダムによって水位が上昇し、大型船の航行が可能になったことで、長江の輸送能力が向上し、物流が円滑になりました。これにより、中国の西部大開発にも貢献することが期待されています。

発電

三峡ダム水力[[発電]]所は、世界最大級の発電能力を持ち、中国の電力供給に大きく貢献しています。また、火力[[発電]]に比べて二酸化炭素排出量が少ないため、環境負荷の低減にも繋がっています。

問題点

住民の強制移住

ダム湖に水没する地域には、多くの村や都市がありました。そのため、100万人以上の住民が強制移住を余儀なくされ、移住先での生活に苦しんでいる人々もいます。

文化財・名所旧跡の水没

三峡地域には、多くの文化財や名所旧跡が存在しましたが、ダム建設によって水没または移転を余儀なくされました。中には、水中博物館として公開されているものもあります。

地すべり・がけ崩れの発生

ダム湖周辺では、地すべりやがけ崩れが頻発しており、その危険性が指摘されています。

水質汚染

上流域からの汚水流入により、ダム湖の水質汚染が深刻化しており、環境への影響が懸念されています。

土砂堆積の懸念

ダムに土砂が堆積することで、ダムの機能が低下するのではないかという懸念もありますが、ダムには土砂排出機能が備えられています。

洪水の危機

2020年の長江大洪水では、三峡ダムの水位が記録的な高さとなり、下流域の住民が避難を余儀なくされました。しかし、ダムの適切な操作によって、洪水被害は抑制されたとの評価もあります。

汚職

建設費用の一部が汚職に流用されたという疑惑も存在します。

エピソード

ダム決壊騒動

2019年には、ダムの歪みを指摘する写真がインターネット上で拡散し、決壊の危機が騒がれましたが、中国当局は技術的な問題による誤りであると発表しました。

まとめ

三峡ダムは、中国の社会経済に多大な貢献をしている一方で、多くの問題も抱えている巨大プロジェクトです。その建設の歴史、利点、問題点などを理解し、より深い知識を得ることは重要です。

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