中山美穂のトキメキハイスクール

中山美穂のトキメキハイスクール：アイドルと電話と、そして革新的なゲームシステム

1987年 12月1日、任天堂からファミリーコンピュータディスクシステム用ソフトとして発売された『中山美穂のトキメキハイスクール』。その正式名称は『アイドルホットライン中山美穂のトキメキハイスクール』です。本作は、人気アイドル中山美穂を起用した、コマンド選択式恋愛アドベンチャーゲームとして、当時大きな話題を呼びました。ディスクシステム用ネットワーク「ディスクファクス」対応作品第3弾という位置づけでも注目を集めました。

ゲーム内容：表情と台詞、そして運命の分岐

ゲームのシステムは、一般的なコマンド選択式アドベンチャーゲームをベースに、独自の要素が加えられています。「話す」「取る」といった基本的なコマンドに加え、重要な会話シーンでは、主人公の表情と台詞を同時に選択する必要があります。表情は「真面目」「笑い」「悲しみ」「怒り」の4種類から選択し、台詞は場面ごとに表示される候補の中から選びます。表情と台詞が一致しなければゲームオーバーという、緊張感あふれるシステムです。また、場面によっては、喜びの感情を込めた台詞を真顔で言わなければならないなど、意表をつく展開も用意されています。

エンディングは、ゲーム中の選択肢によって「グッドエンド」と「ベストエンド」の2種類に分岐。どちらのエンディングを迎えたかによって、ディスクファクスを通じて応募できる景品が異なりました。グッドエンドではテレホンカード、ベストエンドではビデオテープがプレゼントされました。

ディスクファクスとテレホンサービス：当時としては画期的な試み

本作はディスクファクスに対応しており、専用の青ディスクを使用しました。他のディスクファクス対応作品がスコアやタイムを登録するランキング形式だったのに対し、本作はゲームクリアを登録することで景品がもらえるという、当時としては画期的なシステムでした。

さらに、ゲーム中に表示される電話番号に電話をかけると、ゲーム攻略のヒントや中山美穂からのメッセージテープを聞けるテレホンサービスも実施されました。このサービスはゲーム発売直後に終了し、メッセージとヒントはゲームの続編でテキスト形式で表示されるようになりました。ディスクファクスイベントは1987年12月19日から1988年2月29日まで開催され、抽選で8000人にはサイン入りテレホンカード、さらに8000人にはサイン入りビデオテープが贈られました。

ストーリーとキャラクター：トキメキ学園で繰り広げられる恋物語

物語は、トキメキ学園に転入してきた主人公が、廊下で眼鏡をかけた女の子とぶつかることから始まります。主人公は、その女の子が、自身が熱狂的なファンであるスーパーアイドル中山美穂に似ていることに気づきます。やがて、その女の子が本物の中山美穂であることが判明し、物語は展開していきます。

主要キャラクターには、中山美穂に加え、ヒロインの高山みずほ、主人公の隣の席の男子生徒である山村貞吉、学園のマドンナである清水エリカ、プレイボーイの辻正臣、主人公の兄、校長先生、教頭先生など個性豊かなキャラクターが登場します。

開発秘話：人気アイドル起用とわずか2週間の開発期間

本作の開発は、任天堂とスクウェア（現スクウェア・エニックス）の共同作業で行われました。当初は「テレホンアドベンチャー」という企画からスタートし、坂本賀勇氏（ディレクター）の提案で、無名の声優ではなく、人気アイドルの中山美穂を起用することになりました。

開発期間はわずか2週間という短期間でしたが、当時スクウェアで『ファイナルファンタジー』の開発を終えたばかりだった坂口博信氏、植松伸夫氏、時田貴司氏らが参加するなど、豪華な布陣が実現しました。ゲーム内の表情を読み取るシステムは、コマンド選択にさらに深みを与える要素として追加されました。また、NTTの協力を得て、プレイヤーが電話番号を間違えても問題ない仕組みが用意されていましたが、発売後に予想を超える数の間違い電話が殺到しました。

本作の開発は難航したものの、その経験が後に『ファミコン探偵倶楽部』の開発に繋がったと、坂本氏は語っています。また、本作の開発に関わった糸井重里氏のアイデアが、『MOTHER』の開発につながったという逸話も残っています。

反響と評価：大ヒットの裏に隠された苦労

本作は発売後、大きな反響を呼びました。特に、中山美穂からのメッセージを聞ける電話サービスは話題を呼びましたが、同時に間違い電話の多さによる苦情も殺到しました。岡田智氏は、後にこのことを「売れすぎて失敗した」と表現しています。

ゲーム誌『ファミコン通信』のクロスレビューでは29点、『ファミリーコンピュータMagazine』のゲーム通信簿では17.40点と、高い評価を得ました。『ユーゲー』誌では、中山美穂の起用、電話を使った仕掛け、表情選択システムなどが評価されています。

まとめ：時代を先取りした、挑戦的な作品

『中山美穂のトキメキハイスクール』は、人気アイドルを起用し、当時としては斬新な電話サービスやゲームシステムを取り入れた、挑戦的な作品でした。開発期間の短さや、間違い電話の多さなど、苦労もあったようですが、80年代のゲームシーンにおいて、大きな足跡を残した作品と言えるでしょう。その革新的な試みは、後のゲーム開発にも影響を与えたことは間違いありません。

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