乙訓寺

乙訓寺の概要と歴史

乙訓寺（おとくにでら）は、京都府長岡京市今里に位置する真言宗豊山派に属する寺院です。山号は大慈山であり、本尊として合体大師像が祀られています。この寺院は、特に牡丹寺として有名であり、空海（弘法大師）と最澄（伝教大師）が初めて対面した場所でもあります。

設立の由来

乙訓寺の創建は聖徳太子によるものと伝えられ、推古天皇の勅命により建立されたとされていますが、正確な設立時期や事情は不明です。境内から出土した瓦の年代から、奈良時代に創建されたと推定されています。一説には、継体天皇の弟である国宮（乙訓宮）の跡地とも言われています。789年には桓武天皇が長岡京を造営した際、乙訓寺も大規模に増築され、都の地鎮としての役割を果たしました。

歴史的出来事

794年、桓武天皇の弟である早良親王が暗殺事件の嫌疑をかけられ、当寺に幽閉されました。その後、811年には空海が嵯峨天皇からの命を受け、寺の修復を行いました。これは早良親王の怨霊を鎮めるためとも考えられています。この際、空海は境内の柑子に詩を添えて天皇に献上し、その子孫が今も残っています。812年には、最澄が初めて空海を訪ね、密教の教えを深く学ぶために法論を交わしました。

宇多法皇も当寺を行宮として使用し、堂塔の整備が行われました。また、室町時代には12の僧坊が存在したとされ、周辺に大規模な敷地を有していました。しかし、内紛が発生した結果、足利義満が介入し、その後南禅寺の傘下に入りました。

江戸時代以降の復興

永禄年間には織田信長による兵火で衰退しましたが、元禄時代に隆光が住持に就任して復興に努めました。元禄6年には徳川綱吉から寺領が寄進され、再建が進められました。隆光は真言宗に改宗し、乙訓寺法度を制定、1695年には堂宇が再建されました。

現在では、乙訓寺は牡丹の景観に恵まれ、真言宗豊山派総本山である長谷寺から移植された約2000株の牡丹が境内に植えられています。これらの牡丹の見頃は4月中旬から下旬にかけて訪れます。

境内の施設

境内には多くの文化財が存在します。特に、本堂は江戸時代に建立された有形文化財で、その中に本尊として祀られている合体大師像が特徴です。また、鐘楼、十三重石塔、弘法大師像、鎮守八幡社なども境内に点在しています。これらの建物は江戸時代のものが多く、由緒ある文化財として指定されています。

重要文化財には、平安時代後期の木造毘沙門天立像、鎌倉時代の木造十一面観音立像が含まれ、さらに「乙訓寺文書」などの資料も保存されています。また、樹齢400年から500年のモチノキが天然記念物として指定されています。

アクセス

乙訓寺へのアクセスは、阪急電鉄長岡天神駅から徒歩15分、もしくはバスを利用することができます。JR東海道本線の長岡京駅からも、徒歩またはバスでアクセスすることが可能です。

周辺には光明寺や長岡天満宮、京都西山短期大学などの名所も点在しています。観光の際は、ぜひ訪れてみてください。

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