二条院讃岐

二条院讃岐：平安から鎌倉時代を駆け抜けた歌人

二条院讃岐は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて活躍した女性歌人です。生没年は不明ですが、永治元年（1141年）頃生まれ、建保5年（1217年）以降も生存していたと推測されています。女房三十六歌仙にも数えられ、その歌の才能と生涯は多くの文献に記録されています。

華麗なる出自と内裏での活躍

讃岐の父は、源頼政という武家で、母は源斉頼の娘でした。兄には源仲綱がおり、従姉妹には後[[鳥羽天皇]]の中宮、九条任子（宜秋門院丹後）がいました。この華麗なる出自は、彼女の人生に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

保元3年（1158年）頃、二条天皇の即位と前後して、讃岐は内裏女房として仕えるようになりました。これは、彼女の父頼政が鳥羽法皇や美福門院に近侍していたことが大きく関係していたと考えられます。二条院崩御後の永万元年（1165年）には、勧修寺流の実務官僚・藤原重頼と結婚、子供にも恵まれました。夫の重頼も、頼政や兄仲綱と同様に、二条天皇や高倉天皇、後白河院などに近侍しており、彼女を取り巻く環境は常に権力の中枢にありました。

平治元年（1159年）以降は、二条天皇主催の和歌会「内の御会」に頻繁に参加し、優れた才能を発揮して高い評価を得ます。また、父や兄と共に俊恵の私的な歌会グループ「歌林苑」にも参加していました。俊恵は讃岐の歌を高く評価し、自身の歌集『歌苑抄』にも収録しています。さらに、『歌仙落書』（承安2年頃成立）では、その洗練された歌風を絶賛する記述が見られます。

波乱の時代と歌への情熱

治承4年（1180年）、宇治平等院の戦いで父と兄が戦死するという悲劇に見舞われます。しかし、その翌年の寿永元年（1182年）には、自らの歌集『二条院讃岐集』を賀茂社に奉納。さらに、文治4年（1188年）には『千載集』に作品が収録され、勅撰集への登載を果たしました。

建久元年（1190年）頃からは、後[[鳥羽天皇]]の中宮九条任子の女房となり、中宮主催の和歌会にも参加しました。この頃の讃岐の活躍は、任子の父・兼実の日記『玉葉』にも記録されています。また、『尊卑分脈』には、讃岐の子息が宮廷で重要な役職に就いていたことが記されています。

後鳥羽院の譲位後も、讃岐の歌への情熱は衰えることはありませんでした。正治2年（1200年）の『正治初度百首』にも選ばれ、歌壇への本格復帰を果たしました。この頃には出家していたとされ、盛んな歌壇の中で、熟練した女性歌人として活躍し続けました。建保4年（1216年）の『内裏歌合』まで、歌人としての活動が確認されています。

領地問題と晩年

承元元年（1207年）には、伊勢国小幡村の領地をめぐる訴訟で鎌倉に出向いたことが『吾妻鏡』に記されています。これは、彼女が伊勢国に領地を持っていたことを示す貴重な記録です。晩年の文暦2年（1235年）には、「讃岐尼」として、若狭国宮川保の地頭職を領知していたとされます。

沖の石の讃岐と遊女伝説

『百人一首』に収録された「わか袖は塩干に見えぬ沖の石の 人こそ知らねかはくまもなし」という歌から、「沖の石の讃岐」と呼ばれています。この歌の「沖の石」の具体的な場所は諸説ありますが、後世では隠喩的な表現としても用いられました。また、父頼政の死後、遊女になったという俗説も存在します。

多くの作品と後世への影響

二条院讃岐は、『千載和歌集』をはじめとする多くの勅撰集や私撰集に作品を残しており、その歌風は後世の多くの歌人に影響を与えました。彼女が残した歌集『二条院讃岐集』は、現在も貴重な資料として残されています。彼女の生涯は、激動の時代を生き抜いた女性歌人の生き様を伝えるとともに、日本の歌の歴史において重要な足跡を残しています。

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