人間模様

『人間模様』について

概要

『人間模様』は、丹羽文雄の小説で、1949年に市川崑監督によって映画化された作品です。この映画は新東宝の製作によるもので、当時の白黒映画として公開されました。しかし、上映される現存するプリントには一部欠損箇所があり、映画開始から約37分経過したところで約2分間の映像が失われています。

市川崑監督は、前作『三百六十五夜 東京篇・大阪篇』がヒットした流れを受け、次回作にはメロドラマ以外の原作を求めていました。そんな時、プロデューサーの児井英生がこの小説を持ち込み、周囲の勧めもあって制作を引き受けました。主役には、過去の作品に出演していた上原謙が選ばれ、これは彼に対する感謝の意も込められていました。

あらすじ

物語は、女学校の経営者の息子である大輪絹彦が、学友の小松原厚を通じて、その秘書である吉野吟子と出会うところから始まります。絹彦は吟子に絵を贈り、そのことで彼女の哀しい過去を知ります。小松原は吟子に恋をしていますが、吟子は心優しい絹彦に惹かれるようになります。

一方、幼馴染の新井沙丘子は、絹彦の穏やかな性格に物足りなさを感じ、小松原の実力に魅かれて秘書に立候補しますが断られます。沙丘子は悔しさから怪しい会社経営者である木下の秘書となりますが、その選択が彼女の運命を複雑にしていきます。

ある日、盲腸で倒れた吟子を訪ねた絹彦は、彼女が手術費を持っていないことを知り、電動蓄音機とレコードを売ることで手術費を用意します。その後、絹彦の母親が急死し、学長に就任することが決まります。彼は校舎の再建資金を集めるため、小松原に助けを求めますが、断られてしまいます。

小松原は、絹彦が吟子に手術を受けさせたことを知り、嫉妬心から吟子に結婚を申し込みます。それに対し、吟子は絹彦の人間愛を感じ、校舎の再建に協力する条件で小松原の申し出を受けます。

絹彦は、沙丘子を心配し、彼女を木下の事務所から連れ戻しに行きますが、沙丘子は拒否します。激怒した絹彦は木下を殴り、その後、吟子の結婚式に身を運びます。そこで彼女のために母の形見を贈りますが、吟子は一番大切なことを告げられなかったと感じます。

サブプロットとして、沙丘子は木下との不誠実な関係を続け、最後には彼が警察に追われて落下死する場面を目撃します。絹彦は彼女を心配する沙丘子の父に約束し、彼女を必ず連れ戻すと誓います。

スタッフ

この映画は、児井英生の製作の下、丹羽文雄の原作を基にして制作されました。脚本には和田夏十が参加し、市川崑が監督を務めています。撮影は小原譲治、音楽は仁木他喜雄が担当しています。また、主題歌は西條八十が作詞、古賀政男が作曲したもので、霧島昇や二葉あき子が歌唱しました。

キャスト

この映画では、大輪絹彦役に上原謙、吉野吟子役に山口淑子、小松原厚役に青山五郎（旧名：三原純）がキャスティングされました。その他、新井沙丘子役の月丘千秋や、絹彦の母役の東山千栄子が出演しています。このように多彩なキャストが集結し、物語を彩りました。

『人間模様』は、愛、友情、希望といったテーマを通じて、人間関係の深さと複雑さを描いています。この作品は、小説としても映画としても多くの人々に影響を与え、今も愛され続けています。

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