伊勢佐木長者町駅

横浜市営地下鉄ブルーラインの伊勢佐木長者町駅は、神奈川県横浜市中区長者町五丁目に位置し、駅番号はB16です。

この駅は、戦後まで横浜有数の商業地として賑わった伊勢佐木町と、横浜港開港当初から問屋街が形成されていた長者町に隣接する要衝にあります。かつてこの地を流れていた吉田川が地下鉄建設に伴い埋め立てられ、千秋橋があった場所に駅が設けられました。駅の地上部には、関内駅から阪東橋駅まで続く広大な大通り公園が整備されており、都市の緑地空間として親しまれています。

駅の歴史は、1972年12月16日の開業に始まります。しかし、開業直前の同年9月には、昭和47年台風第20号による集中豪雨が原因で下水マンホールが破損し、完成間近だった駅構内に大量の水や土砂が流入する水没事故が発生しました。この復旧作業のため、地下鉄の開業は当初予定より1ヶ月延期されることとなりました。

開業後、1976年9月4日には横浜駅までの延伸が実現し、伊勢佐木長者町駅は途中駅となります。その後も利便性向上に向けた改良が進められ、2001年3月31日にはエレベーター2基の増設や車椅子対応トイレの設置といったバリアフリー化工事が完了。2007年5月26日にはホームドアが使用を開始し、安全性が強化されました。また、2012年5月1日からはdocomo Wi-Fiによる公衆無線LANサービスが提供されています。

駅名に関しては、建設時の仮称は設置場所の町名にちなんだ「長者町駅」でした。しかし、当時ヒットしていた青江三奈の楽曲「伊勢佐木町ブルース」の影響もあり、横浜市議会で伊勢佐木町の名を取り入れる案が出されました。その結果、近隣の主要な商業地である伊勢佐木町の名と、駅が立地する長者町の名を組み合わせ、「伊勢佐木長者町駅」という正式名称に決定しました。

駅構造は、地下に島式ホーム1面2線を持つ形態です。かつて当駅が路線の起点であった名残として、阪東橋駅方面に渡り線が設けられています。この構造により、非常時や臨時列車の運行時には当駅での折り返し運転が可能となっています。実際、2009年1月の終夜運転時にこの機能が一度使用されました。なお、改札内には飲料の自動販売機は設置されていません。

開業初期（第1期開業時）は車両基地が存在しなかったため、3両編成の列車に対応するためホームの一部を区切り、「伊勢佐木長者町仮検車場」として利用していました。列車検査は上大岡駅の留置線を使用。第2期開業時に上永谷車両基地の完成が間に合わなかった時期には、仮検車場が関内駅の1・3番線に移され、全般検査は上永谷駅西側の高架部分や一部完成していた上永谷車両基地で行われるなど、車両運用を支える重要な役割も担っていました。

近年の利用状況を見ると、2022年度の1日平均乗降人員は約1万6千人台で推移しており、地域の交通拠点として多くの人々に利用されています。

駅周辺には、前述の伊勢佐木町や長者町のほか、山谷、釜ヶ崎と並んで日本三大ドヤ街の一つとされる寿町（簡易宿所の集積地）が駅南側に広がっています。主な周辺施設としては、神奈川県伊勢佐木警察署、横浜市中消防署、横浜BUNTAI、横浜武道館、横浜掖済会病院などがあり、またイセザキモールへも徒歩圏内です。周辺道路としては、横浜駅根岸道路（主要地方道80号線）が通っています。

バス路線も充実しており、駅直上の「伊勢佐木長者町駅」バス停や、国道16号線上の「長者町五丁目」バス停から、横浜駅、桜木町駅、根岸駅、杉田平和町方面など、市営バス、京浜急行バス、フジエクスプレス、神奈川中央交通、相鉄バスといった様々な事業者の路線が利用できます。

その他、この駅はかつて横浜市交通局発行の「みなとぶらりチケット」適用区間の終点でした（2024年3月末まで）。また、テレビドラマ「あぶない刑事」のロケ地としても知られており、作品のファンにとってはゆかりの深い場所となっています。

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