会津漆器

会津漆器：歴史と革新が息づく伝統工芸

会津漆器（あいづしっき）は、福島県会津地方に伝わる、経済産業大臣指定の伝統的工芸品です。「会津塗（あいづぬり）」とも呼ばれ、その歴史は津軽塗や輪島塗よりも古く、多様な技法を特徴としています。

会津漆器の歴史

その起源は16世紀後半、当時の領主・蒲生氏郷が近江国日野から木地師と塗師を招いたことに始まります。1630年頃には漆器製造が盛んになり、江戸への移出が開始。1666年頃には大規模な産業へと発展しました。会津藩政時代には、保科正之が漆の木の保護育成に尽力し、歴代藩主も技術革新に熱心に取り組み、中国やオランダへも輸出されました。明治維新で一時衰退しましたが、明治中期には日本有数の漆器産地として再興を果たします。

昭和初期には海外への重要な輸出品となり、戦後にはプラスチック漆器の製造に成功。しかし、生活様式の洋風化とともに売り上げは減少傾向にあります。

1975年（昭和50年）5月10日に国指定伝統工芸品に、1997年3月31日には福島県伝統的工芸品に指定されました。

技術継承の課題と新たな取り組み

現在、会津漆器は売り上げの減少に加え、後継者不足という深刻な問題を抱えています。そのため、新製品の開発や新たな漆の開発、職業能力開発校の運営など、後継者育成事業に力が注がれてきました。

会津漆器技術後継者訓練校は、1971年に会津漆器協同組合連合会が開設した後継者養成所が前身です。2003年には県知事の認定を受け、認定職業訓練による職業能力開発校となりましたが、2010年に新年度の入校生募集を中止。今後は修了生の支援に重点を置く方針へと転換しています。

特徴的な技法と装飾

会津漆器は、その多様な技法が特徴です。以下に代表的なものを紹介します。

花塗: 塗りの後、研磨を行わずに仕上げる技法。塗膜が堅牢で傷つきにくいのが特徴です。無油系の漆を使用した場合は真塗りとも呼ばれます。
変り塗: 卵白などのタンパク質を加えた漆を使用し、箆や籾殻などで凹凸をつけ、塗り重ねた後に平らに研いで模様を出す技法。研ぎ出し塗りとも呼ばれ、津軽塗や若狭塗が広く知られています。籾殻で金色の虫喰い模様を出す金虫喰塗もその一種です。
会津絵: 松竹梅に破魔矢・糸車を配した伝統的な図案。東北地方の秀衡塗との類似性が見られます。
錦絵: 明治時代に考案された図案で、雲形に牡丹・鳳凰・松竹梅・鶴亀を配しています。
朱磨: 黒塗りの器物に漆で図案を描き、朱色の色粉を蒔き付け、乾く直前に磨き上げて色彩を出す技法。大胆な図案が多く、菊桐模様がよく用いられます。
鉄錆塗(鉄錆蒔絵): 砥の粉と生漆を混ぜた錆を、絞り筒に入れて模様を描く技法。梅と鶯模様が代表的で、明治・大正時代に盛んに製造されました。

新たな技術への挑戦

近年では、再生ペット樹脂を使用した電子レンジや食器洗い機で使用できる漆器、環境を選ばずに乾燥し乾燥時間が短い漆、手びねりで造型できる漆粘土など、新たな技術開発も進められています。

会津漆器の現在

現在の会津漆器の企業数は336社、従業員数は1767人です（参考資料より）。

会津漆器は、その長い歴史の中で培われた技術と、時代の変化に対応する革新的な取り組みによって、今もなおその輝きを失っていません。伝統を守りながらも、新しい可能性を追求する会津漆器の未来に、今後も注目が集まります。

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