函館ハリストス正教会

函館ハリストス正教会

函館ハリストス正教会は、北海道函館市元町に位置する、日本正教会に所属する教会です。正式名称は主の復活聖堂といい、ハリストス（キリストのギリシア語読み）の復活を記念する聖堂として知られています。その美しい姿は、国の重要文化財にも指定されています。

概要

函館ハリストス正教会は、北海道・東北地方を管轄する日本正教会の東日本主教区に所属しています。この教会は、日本における正教会の伝道が始まった当初から存在しており、日本正教会の中でも最も古い教会の一つとして数えられています。大正時代の建築物としては全国で二番目に重要文化財に指定されました。

2008年からは、ロシア人のニコライ・ドミトリエフ神父が管轄司祭を務めています。函館ハリストス正教会にロシア人司祭が着任したのは115年ぶりのことで、日本の正教会の聖職者のほとんどが日本人によって担われてきたことを示しています。

歴史

教会の歴史は古く、1860年にロシア領事館に隣接して建てられたことに始まります。当時、領事館の聖堂にはアラスカの聖インノケンティが訪れ、主教祈祷による聖体礼儀が行われました。これは日本で初めての主教祈祷による聖体礼儀でした。

1861年には、亜使徒聖ニコライ（ニコライ・カサートキン）によって3人が洗礼を受け、日本正教会の原型が築かれました。函館ハリストス正教会は、日本正教会の最初の聖堂を持つ教会であり、日本における正教会伝道の始まりの地でもあります。キリスト教禁制が解かれた明治時代以降、信者を増やし、1873年には正教小学校、1884年には女学校も設立されました。

その後、日本の正教会の拠点はニコライによって東京に移され、ニコライ堂を中心に宣教が拡大されましたが、函館ハリストス正教会も長い伝統を誇る教会として存続しています。

1907年の函館大火で聖堂は全焼しましたが、1916年に再建されました。

現聖堂の特徴

現在の聖堂は、1916年に再建されたもので、ビザンティン建築とロシア建築の影響を受けた建築様式が特徴です。煉瓦造一部3階建ての平屋で、基礎は石造り、外壁は白漆喰で塗られています。1988年には大規模な修復工事が行われ、現在の姿になりました。

聖堂の平面は、豊橋ハリストス正教会や京都ハリストス正教会と類似しており、西側に正面玄関と鐘楼、東側に至聖所、中央部分に聖所が配置されています。聖所は啓蒙所・至聖所よりも広く造られており、十字の平面型を構成しています。至聖所と聖所はイコノスタシス（聖障）によって区切られており、イコン画家であった山下りんによって「主の昇天」や「ハリストス（キリスト）の降誕」などが描かれています。

設計監督者

愛知県南知多町出身の建築家であり輔祭でもあったモイセイ河村伊蔵が、主の復活聖堂の設計監督を担当しました。河村は豊橋ハリストス正教会の設計監督も務めたほか、松山・大阪・釧路の正教会聖堂も設計しています。河村の息子と孫も建築家であり、特に孫の内井昭蔵は皇居・吹上御苑の新御所や世田谷美術館、浦添市美術館などの設計で知られています。

大規模改修

2021年2月から大規模改修が行われ、約2年間建物内は閉鎖されました。

ガンガン寺

函館ハリストス正教会は、「ガンガン寺」という愛称でも親しまれています。これは、最初に聖堂ができたときに5個の鐘を楽器のように鳴らしたことに由来します。1907年の大火で鐘は壊れてしまいましたが、再建時に大きな鐘が1個取り付けられました。その後、関東大震災の影響でニコライ堂の鐘が破損したため、この鐘とニコライ堂の鐘が交換されました。現在の鐘は1983年に贈られたもので、聖体礼儀などの祈りの際に鳴らされています。鐘の音は、1996年に環境省の「残したい日本の音風景100選」に選ばれました。

イコノスタス

聖堂のイコノスタスには、ハリストスの復活の場面が描かれたイコンが設置されています。

上磯ハリストス正教会

函館ハリストス正教会から分かれた施設として、北斗市には上磯ハリストス正教会が存在します。聖堂はハリストスの昇天を記念する主の昇天聖堂です。

その他

函館市のカントリーサインには、復活聖堂が使用されています。

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