吉川惟足

吉川惟足について

吉川惟足（よしかわ これたり）は、元和2年（1616年）に江戸日本橋に生まれた江戸時代前期の神道家です。彼は、吉川神道の創始者として知られ、その思想や教えは多くの人々に影響を与えました。彼の初名は元成であり、後に惟足と改名しました。門弟入りの際には一字をとり、従時（よりとき）とも称され、視吾堂や相山隠士といった号も用いました。

幼少期と商業の道

幼少期は大阪・堺で過ごしましたが、9歳の時に父を亡くし、江戸の商家に養子として迎え入れられました。彼の家業は薬種や魚屋などとされ、屋号には尼崎屋五郎左衛門や張物屋七右衛門といった説があります。吉川家は商人としての生活を送っていましたが、寛永11年（1634年）には養父を失い、その後の商界での成功は難航しました。商業の難しさから、慶安4年（1651年）には鎌倉への隠居を選びました。

神道との出会い

鎌倉での隠居中、歌道に親しむ一方で、日本古典や神道に興味を持つようになりました。特に『神代巻』や『中臣祓』などに触れる中で、神典の理解に苦しむ日々を送りました。そんな折、京都で萩原兼従の存在を知り、承応2年（1653年）には彼の門下に入ります。兼従は吉田神道の唯一神道奥義を伝授し、それを受けて新たな流派である「吉川神道」を開くこととなりました。

吉川神道の確立と影響

惟足は、江戸に戻るとその教えを広め、江戸幕府の4代将軍・徳川家綱や紀州徳川家、加賀前田家など、様々な大名たちから信任を得ます。天和2年（1667年）には、5代将軍・徳川綱吉から幕府神道方を命じられ、その地位は確立されることとなりました。

元禄7年11月16日（1695年1月1日）に惟足はこの世を去りましたが、彼の思想と教えはその後も吉川家の子孫によって受け継がれ、幕府神道方としての地位を保持しました。特に会津藩からも合力米が支給されるなど、地域における影響力は大きいものでした。

歴史的には、惟足の教えは江戸、会津、水戸など広範囲に渡って広まっていきました。また、彼の弟子である山崎闇斎が提唱した垂加神道の勢力と合流するなど、神道の発展にも寄与しました。

参考文献

• - 平重道『吉川神道の基礎的研究』
• - 土田誠一『吉川惟足の神道説』

吉川惟足は日本の宗教史において重要な人物であり、今なお彼の教えは学ばれ続けています。

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