天書

『天書』（てんしょ・あまつふみ・あめのふみ）は、奈良時代末期に編纂されたとされる歴史書です。藤原浜成の撰と伝えられていますが、これを裏付ける確たる証拠はなく、浜成が大納言に昇った事実もないことから、後世の偽作である可能性も指摘されています。全10巻から構成され、編年体で歴史が記述されています。

『天書』には大きく分けて三つの系統が存在します。

逸文の『天書』
現存しておらず、他の文献に引用された逸文のみが確認されています。『長寛勘文』、『釈日本紀』、『諸社根元記』、『日本書紀纂疏』などにその一部が引用されています。この逸文は、後述する詳本と内容が重なる部分があるため、同一の書物の一部であるとも考えられています。
『天書』（詳本）
全10巻で、神代から皇極天皇までの歴史を編年体で記しています。逸文の内容をほぼ網羅しているため、逸文と同一起源である可能性も考えられますが、近世に逸文を基に作成された偽書であるという説もあり、逸文と詳本の異同については結論が出ていません。
『天書紀』（略本）
全10巻ですが、神代のみを扱った物語です。逸文の内容とは異なり、『本朝書籍目録』には「天書十巻」「大納言藤原浜成撰」と記載されていることから、後世の偽書であると考えられています。

これらのうち、『天書紀』は特に偽書の疑いが強いとされています。

刊行本

『神道大系』古典編13　神道大系編纂会編　1992年

写本

『天書紀』
文和2年（1353年）の卜部兼夏の写本を、永享9年（1437年）に藤原雅世が写したとされる奥書がある同系本。神代のみを記述した略本で、偽書の疑いが特に強いとされています。
国会図書館本：1部
享保11年（1726年）の奥書があります。
内閣文庫本
享保6年（1721年）の奥書があります。
明和6年（1769年）の写本を明治18年（1885年）8月に写したものです。
『天書』
『天書紀』とは異なる系統の本で、神代から皇極天皇までの編年体史書です。
国会図書館本
元文5年（1740年）に写され、天保13年（1842年）に黒川春村が『釈日本紀』によって校閲を加えた本を、明治時代に写したものです。

『天書』の成立や内容については、未だに不明な点が多く、今後の研究が待たれます。

関連事項

歴史書一覧
* 斎部浜成
斎部浜成の息子とされる斎部広成が著した『古語拾遺』には、「浜成が作る所の天書は、古事記に非ず。別書なり」という記述があり、斎部浜成を『天書』の編纂者としています。

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