宮地尚子

宮地尚子（みやじ なおこ）は、1961年生まれの日本の精神科医、人類学者、社会学者です。文化精神医学、医療人類学、ジェンダー論を専門とし、一橋大学大学院社会学研究科教授を務めています。その学術的な業績に加え、社会問題に対する積極的な発言でも知られています。

人物・経歴

兵庫県に生まれた宮地氏は、1986年に京都府立医科大学医学部を卒業後、国立大阪病院での臨床研修を経て、ペンシルバニア大学付属病院精神科研修、ハーバード大学医学大学院社会医学教室客員研究員、ハーバード大学ハーバード・ロー・スクール人権プログラム客員研究員などを歴任しました。1993年には京都府立医科大学大学院医学研究科社会医学専攻博士課程を修了し、医学博士号を取得しています。

同年には、アジア医師連絡協議会ジブチ・ソマリア難民キャンプ医療援助プロジェクトに派遣医師として参加し、国際的な医療活動にも携わりました。その後、近畿大学医学部衛生学教室助手、日本青年会議所TOYP大賞受賞、JAMIC懸賞論文最優秀賞などを経て、1997年に近畿大学医学部衛生学教室講師、2001年には助[[教授]]に就任しました。同年、一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻助[[教授]]となり、2006年より同教授（地球社会研究専攻平和社会論（文化精神医学））として、後進の育成にも力を注いでいます。

宮地氏の専門分野は、文化精神医学、医療人類学、ジェンダーとセクシュアリティに及び、トラウマ研究においては第一人者として国内外で広く知られています。

著書

宮地尚子氏は、数多くの著書を執筆しており、その著作活動は多岐にわたります。

単著

『異文化を生きる』 星和書店、2002年
『トラウマの医療人類学』 みすず書房、2005年 / 新装版、2019年
『環状島＝トラウマの地政学』 みすず書房、2007年 / 新装版、2018年
『傷を愛せるか』 大月書店、2010年 / 増補新版、筑摩書房、2022年
『震災トラウマと復興ストレス』 岩波書店、2011年
『トラウマ』岩波書店、2013年
『ははがうまれる』 福音館書店、2016年
『トラウマにふれる：心的外傷の身体論的転回』 金剛出版、2020年
『傷つきのこころ学』 NHK出版、2024年
『100分de名著：安克昌『心の傷を癒すということ』』 NHK出版、2024年

編著

『トラウマとジェンダー：臨床からの声』 金剛出版、2004年
『医療現場におけるDV被害者への対応ハンドブック：医師および医療関係者のために』 明石書店、2008年
『性的支配と歴史：植民地主義から民族浄化まで』 大月書店、2008年
『環状島へようこそ：トラウマのポリフォニー』 日本評論社、2021年

共著

（村上靖彦）『とまる、はずす、きえる：ケアとトラウマと時間について』 青土社、2023年

翻訳

（ウヴェ・フリック）『質的研究入門：〈人間の科学〉のための方法論』 春秋社、2002年 / 新版、2011年
（バリー・M・コーエンほか編著）『多重人格者の心の内側の世界：154人の当事者の手記』 作品社、2003年
（リチャード・B・ガートナー）『少年への性的虐待：男性被害者の心的外傷と精神分析治療』 作品社、2005年
* （キャロライン・M・バイヤリー）『子どもが性被害をうけたとき：お母さんと、支援者のための本』 明石書店、2010年

これらの著書は、トラウマ、ジェンダー、異文化理解といった現代社会における重要な課題を深く掘り下げ、読者に新たな視点を提供しています。


宮地尚子氏の活動は、学術研究にとどまらず、社会における様々な問題に対して積極的に関与し、その知見を社会に還元することに尽力しています。その貢献は、日本の精神医学、人類学、社会学の発展に大きく寄与していると言えるでしょう。

もう一度検索