宮本卯之助商店

株式会社宮本卯之助商店は、江戸時代末期の文久元年（1861年）に創業した、祭礼具の製造販売・修理・レンタルを手がける老舗です。中でも、太鼓や神輿の分野で特に知られ、日本の祭礼や伝統芸能を支える重要な役割を担っています。本社は東京都台東区浅草に位置します。

創業は土浦で太鼓店「山城屋」を開いたことに始まります。明治26年（1893年）に四代目卯之助が浅草へ移転し、以降、日本の文化の中心地で事業を展開。大正15年（1926年）の大正天皇御大葬、昭和3年（1928年）の昭和天皇御大礼では儀式用楽器を謹製し、宮内庁御用達となりました。浅草三社祭の本社神輿（一之宮、二ノ宮、三ノ宮）も昭和25年・28年に製作。歌舞伎座、国立劇場、国立能楽堂などの主要文化施設や、日本武道館への納入実績も豊富です。1964年の東京オリンピック開会式や昭和新宮殿の大火焔太鼓も手がけました。近年では、七代目宮本卯之助の襲名（平成15年）や文化庁長官表彰受賞（平成22年）、黄綬褒章受章（平成25年）など、その功績が認められています。

製造する太鼓は、一般的な長胴太鼓から、能、歌舞伎、雅楽用の特殊なものまで多岐にわたります。それぞれの演奏に適した音色と品質を追求した製作技術が強みです。神輿は「宮本重義」名義で製作され、高い技術と芸術性で評価されています。これらの製品は、宮内庁楽部、全国の神社仏閣、劇場などで使用されています。

製造販売に加え、太鼓文化の振興にも尽力しています。1988年に開設した「太鼓館」は、和太鼓と世界の太鼓約600点を収蔵する世界初の専門博物館。展示品の多くを体験でき、太鼓の多様な世界を紹介。文献資料も豊富です。邦楽教育事業として、和太鼓スクール「HIBIKUS（ヒビカス）」を運営。「響く」と「us」を合わせた名称で、プロ奏者によるレッスンやスタジオレンタルを提供。旧宮本スタジオを発展的に解消し、本店地下の「HIBIKUS浅草Basement」を中心に、横浜（2014年）、天神（2019年）と拠点を広げています。2014年には米国に子会社を設立し、海外への太鼓文化発信も行っています。

販売店舗は、本社・工場・スタジオを併設する浅草の本店と、神輿・太鼓・祭衣装・神具などを幅広く扱う西浅草店の二店舗があります。

宮本卯之助商店は、江戸時代から続く伝統技術を守り、祭礼具製作、文化施設への納入、そして文化・教育事業を通じて、日本の伝統文化の継承と発展に多角的に貢献しています。その活動は国内にとどまらず、海外にも広がりを見せています。

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